テラーノベル
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⚠
漫画ではなくアニメの設定でお話が進んでいきます。
柱稽古編のアニオリを含みます。
人生初の初恋、そして失恋を体験したあの告白事件から早数週間が経った。
あの日、「諦めない」と自信満々に告げた私を、時透さんは怪訝そうに見下ろして、「あぁ、そう…」とだけ呟いた。そして、何も言い残すことなく静かにその場を去っていった。
「諦めないと強気に言い放っておきながら何いじくれているんですか」
小鉄くんの、呆れとも軽蔑とも取れる言葉が耳に刺さる。
『いじけてない失恋の痛みと戦ってるだけ』
精一杯の反論を返すものの正直自分でも情けないとは思っている。
でも、だって、仕方がない。好きな人から振られる心の痛みと年下からのなんとも言えない視線ほど辛いものはないのだから。
じとりとこちらを見つめてくる視線に気まずさを感じ、何気なく顔を逸らすように動かす。すると、ようやく慣れてきた新しい里の緑に満ちた景色が視界を埋めた。その瞬間、無意識に時透さんの顔が脳裏に蘇ってくる。ここ最近、ずっとこれの繰り返しだ。気持ちが緩むとすぐに彼のことを思い出してしまう。そのたびに胸が痛み、息が苦しくなる。
─…後悔なんてすぐに消えると思っていた。時間が経てば全てどうにかなると思っていた。だけど、現実はそう甘くなかった。後悔は消えないし、彼のことは忘れられない。
鬼に傷つけられた体の痛みは消えても時透さんに振られた心の痛みは消えてくれなかった。
『もうやだ消えたい…』
ごろんと倒れるように寝転がり、縁側の硬い感触を頬で感じながら私は小さく唸った。その隣で小鉄くんが呆れたように重い溜息をつく。年下からの軽薄な態度に涙が出そうになる。
そうしていると、突然何者かに背中を軽く蹴られた。
驚いて寝転んだ体制のまま蹴ってきた相手の方へ振り向くと、里のシンボルとも言えるひょっとこの面で顔を隠し、頭に豆絞りの手ぬぐいを巻いている見慣れた姿が見えた。しゃらんと風鈴の綺麗で澄んだ音が鼓膜を震わし、刀鍛冶らしい鉄の匂いが鼻を掠める。
「何してんだ」
『鋼鐵塚さん?』
思わず声を漏らす。そういえば炭治郎さんに刀を届けると言って蝶屋敷の方に向かっていたことをぼんやりと思い出した。短気、そして気難しいで有名な鋼鐵塚さん(37)のことだ、今日も何かと炭治郎さん(15)に因縁をつけ「死ぬまで俺にみたらし団子を持ってくるんだ」とか何とか言って脅してきたのだろう。そう思うと、彼のことが気の毒でしょうがなかった。
『蹴らないでくださいよ。歴史上最年少の女性刀鍛冶、男だらけの刀鍛冶に咲く一輪の花』
自身の顔を指差し「それが私なんですよ」とドヤ顔を決めると、鋼鐵塚さんと小鉄くんは眉間を歪めながら顔を見合わせ、ハッと馬鹿にするように短い声で笑った。
「ラフレシアの間違いじゃないんですか」
「花っつーかどちらかというと食虫植物」
『大嫌い』
私はゲラゲラと笑い転げる二人に呆れの視線を注ぎ、溜息をつきながら部屋を出る。後ろでまた二人が笑う声が聞こえたが今度は無視してやった。鉄珍様に言いつけてやる。
アホ二人が居ない廊下は、酷く落ち着いた空気が漂っていた。
そんな静かになった空間で思い出してしまうのはやっぱり時透さんのことで、脳裏に浮かび上がってくるあの黒い髪と青い瞳に、胸がギュッと締め付けられるように痛みだした。
会いたい。だが、そう簡単に会える立場でも状況でもなくなってきた。
鉄珍様から鬼の出没がピタリと止まったと聞いた。理由は分からないが恐らく鬼の禰豆子ちゃんが太陽を克服したからじゃないかと言われている。
まさに嵐の前に静かさともいえる状況だが、そのおかげで時透さん含む柱の方々は夜の警備と日中の鍛錬にのみ焦点を当てることができ、“柱稽古”というほかの一般隊士たちに稽古をつける余裕が生まれたそうだ。今頃、一般隊士たちはその指導を受けているのだろう。
…鬼が出ない。それは本当に喜ばしいことだ。
だがしかし、鬼が出ないということは戦わない。戦わないということは刀が破損する恐れがなくなり、鬼殺隊士の方が刀鍛冶の里へ足を運ぶことが完全になくなるということ。
つまり、時透さんに会えない。
『……仕方ないよね。忙しいだろうし』
目を閉じ、ぼんやりと頭の中でそのことを繰り返す。
そうだ、仕方ない。
鬼狩りは遊びじゃない。命を懸けている立派な仕事。
時透さんは剣技の才を誰よりも持っているといわれているお方だ。そんな簡単に会える方がおかしい。
そう言い聞かせるように何度も唱えていくうちに泥沼の中に落ちていくようなだるさが身に染みていくのが分かった。鼻の奥がツンとして目が熱くなる。
好きな人と会えない、それは仕方がないこと。そんな考えに気分が憂鬱になり、誰も居ない廊下を歩きながら小さくため息を吐いたその瞬間、視界の端で何かが動く気配を感じた。
思わず足を止め、視線を向ける。そして恐る恐る覗き込むと、またもや見慣れたひょっとこの面をかぶっている男性──鉄穴森さんの姿が見えた。何やら慌ただしく大きめの風呂敷に荷物を詰めている。
『…あれ、鉄穴森さん?どこか行くんですか?』
鉄穴森さんの視線が私へと向く。そして、「あぁ〇〇少女!」と普段よりも何倍も嬉しそうな音を声に乗せると、額に滲んでいる汗を拭いながら言葉を綴っていく。
「喜ばしいことに時透殿に刀の管理をお願いされて…今日からしばらく時透殿の屋敷に滞在させて頂くのでその準備を」
『………は?』
【速報】鉄穴森さん、時透さんと同居
このあとと結構シリアス&鬱展開だから今のうちにギャグシーン多めにしとこうって思っ
てるけど全然面白くないね。笑ってるふりしててください。
有一郎くん、無一郎くんへ
お誕生日おめでとう🎂💖
生まれてきてくれて本当にありがとう
ずっとだいすきです
コメント
13件
失恋とか後悔の痛みってしばらく消えないよね🙊夢主ちゃんの恋実りますように🥹 今回も表現の仕方めっちゃ好き‼️
『 鬼に傷つけられた体の痛みは消えても時透さんに振られた痛みは消えてくれなかった 』 って表現めちゃ好き🥹🥹💗
恋は絶対に諦めないで欲しい︎︎😢😢 いつかは実ると信じよう‼️ 今回もサイコーでした💖💖