照明が熱い。カメラが何台も向いてくる。
黒と金のユニフォームを着た宮侑は、試合後の囲み取材のど真ん中に立っていた。
汗こそ拭き終えたが、ハイブリッドサーブで試合を決めた直後の男は、まだ呼吸の奥に火が残っている。
――いつもの自信満々で挑戦的な、あの宮侑。
記者たちが次々と質問を投げる。
戦術の意図、今日のトスワーク、相手ブロックの分析。
すべて余裕で返しながら、侑はふと口角を上げた。
「…ほな、次で最後にしよか?」
と、軽い声で締めにかかったその時――
「宮選手、奥さまについてですが――」
その瞬間だった。
侑の動きが、ぴたりと止まった。
眉がわずかに跳ね、目元に熱が宿る。
完全に“スイッチ”が入った顔。
記者が続ける。
「以前『家に帰るのが一番の癒し』とおっしゃっていましたが、具体的にはどんな存在なんですか?」
侑は横を向き、喉の奥で小さく笑った。
普段なら歯切れよく即答する男が、珍しく言葉を探している。
「……なんやそれ。恥ずかしいこと聞いてくるやん」
耳まで赤い。
だが、次の瞬間、ふっと表情が柔らぐ。
「侑の奥さんはなぁ……俺のペース乱す
唯一の人なんよ」
少し伏し目になり、指で首筋をかいた。
「俺、マイペースやし自己中ってよく言われるけど……あの人は、どんなときでも“俺を1番理解してくれる”。
試合でうまくいかなった日も、練習で潰れそうな日でも、帰ったら笑って抱きしめてくれるし。……ほら、そういうとこがずるいんよ」
記者たちがざわめく。
宮侑が“照れている”姿は、レア中のレアだ。
侑はまだ顔が熱いまま、続けた。
「バレーは俺の全部で、命みたいなもんやけど……
あの人は、それに並ぶくらい大事」
ゆっくりと息を吐き、カメラを正面から見る。
「俺、独占欲強いからさ。
……ほんまは家から出したないくらい。
でも、俺のために色んなもん我慢して、支えてくれる。
だから、俺も全力で守りたいと思えるんよ」
少し笑い、目尻が完全に緩む。
「まあ、簡単に言うたら……俺、奥さんめっちゃ好きってことや」
ニッ、と照れ隠しの笑顔。
「……溺愛、ですね?」
「溺愛以上やなぁ。俺、あの人なしとか無理やし」
会場が笑いと歓声に包まれる。
「……って、もうええやろ?恥ずかしいわ」
そう言いながら、侑は取材を切り上げ、早歩きで控室に向かう。
コメント
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wow侑イケメソすぎるわ