テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
それでは、
どうぞっ!
ーーー
柚葉side
🩷「な、なあ。柚葉。今日一緒に寝らん?」
不意に扉の向こうから声がして、
私は思わず振り返った。
わずかに開いたドアの隙間から、
私たちの末っ子未渚美が顔を覗かせていた。
スケジュールが早く終わり、各々自分たちの部屋へと戻っていった。
それでも、充分夜は深まっていた。
🩵「…今、何時だと思っているの?」
私がそう返すと、未渚美はふふっと
笑いながらズカズカと部屋の中に入ってくる。
まるで当然かのようにベットの脇に腰を下ろし、
布団の端をつかんで器用に中へ滑り込んだ。
🩷「まだ、23時やろ。全然アリやん。」
🩷「それに、柚葉だってゲームしとるし。」
🩵「明日、何もないからオールでもって思ってたのに。、」
明日は私だけお休みでゲームでもしながら夜を越そうと思っていた。
それなのにこれじゃあ計画が崩れる。
🩵「てか、ここ私の部屋ね?」
🩷「分かっとるって、笑。だけん、来たんやで。」
そう言って未渚美は、自前の枕に頭を乗せた。
彼女のこの馴れ馴れしさは今に始まったことじゃない。
🩵「なんですか、私も寝ろと?笑」
私は軽く溜息をつきながら、ゲーミングPCの電源を落とし
まるで自分のベットであるかのようにくつろぐ未渚美を見下ろしていた。
🩵「、ほんと…何。今夜はアピールしに来たの?」
冗談めかして言ったつもりだったがその言葉に悪びれる様子もなく。
むしろ得意げに笑った。
🩷「そう。ばれた?」
私は言葉に詰まった。
未渚美の目は半分冗談に見えて、どこか本気のような気配を帯びていた。
軽い調子の中に、その笑顔の奥に、何かがある。
そんな気がした。
(まさか、本当だった?)
最近、明らかに距離感の近さが変わってきていた。
髪を触れたり、手を繋いできたり、
視線が合えばにっこりと笑う。
🩷「柚葉と寝たら、なんかいい夢見れる気がするんよ。」
🩷「、なんか落ち着くし。」
未渚美の声はふわりと優しくて、どこか甘えるようでもあった。
ふざけているように見えても、
その表情はどこか本気にも見えて。
私はそのギャップに戸惑いながらも、未渚美の反対側に腰を下ろす。
分からない。
だけど、私は必死に何かを感じ取ろうとした。
ーーー
🩷「なんか、修学旅行やな」
未渚美は嬉しそうに足をバタバタとさせる。
そんな様子に対し、私は手にしていたスマホを枕元に置き、小さく息をついた。
🩵「もう、寝るんだから、バタバタしないで。」
🩷「えー、もうちょい起きてとこ?みい、眠くない。」
そう言って未渚美はベットの上でゴロゴロと左右に転がりわざとらしく私の肩にぶつける。
🩵「ねえ、未渚美。」
🩷「どうしたん〜?」
🩵「…大人しく寝て。」
未渚美が私にぶつかり、体を反対側に切り返した
その瞬間。
リズムをそっと読んでいた私は未渚美の腰に手を回した。
🩷「は、え…ちょ…え?」
🩵「静かにしてたら、眠くなるから。」
私はさらりと未渚美の体を引き寄せたまま瞼を閉じる。
ぴたりと動きを止められた未渚美は思わず息を呑んだ。
腰に回された腕は、驚くほど優しくて。
力なんてとっくに入ってなんかないのに、不思議ともう動けなかった。
背中に感じるのは、彼女の気配と少しだけあいた隙間。
肌が触れるほど近いのに、体温は届かない。
その中途半端な距離に、妙に心がざわついた。
未渚美はそっと息を吸い込み、ゆっくりと体をひねる。
彼女の腕の中で、無理のない速さで。
ようやく、柚葉と対面する形になると
未渚美は柚葉の顔を見つめる。
普段のどこか飄々とした雰囲気とは違い
やけに無防備に見えた。
それからしばらくして規則正しい寝息が聞こえた。
🩷(え、この状況で寝られるん…?)
未渚美は唖然とした。
こっちは完全に心拍数が限界を超えているのに。
🩷「嘘やん、…え。」
小さな声で呟く。
けど、起こす気にはなれなかった。
無意識に自分を抱き寄せているその姿が、
あまりにも美しかったから。
🩷(こんなんずるいやん、こんなん…。)
あんなに振り回しておいて、
結局自分は何も知らずに眠ってしまう。
___。
でも、同時にほっとしていた。
もし、この距離で視線が重なっていたら。
私はきっと、普通ではいられなかった。
今、自分の気持ちを言ったとて伝わらない。
そうして未渚美は、静かに時間の流れに身を任せた。
彼女の愛おしさを、手の中に閉じ込めるように。
end…
・追記
1500字を予定していましたが、とても長くなってしまいました。それでも、この作品を愛してくださると嬉しいです。
それでは、また次の作品でお会いしましょう。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!