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「あー!!つっかれたー!」
お疲れ様、そう呟いた私の夫。最近になって娘が受験勉強し始めた。正直、開始時期は遅れた。塾の冬期講習にも通い始めた私たちの娘。
「んふふ、何か暖かいお飲み物でもお渡ししませんか?」
「あー、反抗期入りたてだが大丈夫か?」
そう、中学三年生の娘はやっと反抗期に入ってくれた。待ち望んでいたこの成長の機会、夫も理解してくれている。
「この前、ラテを煎れてみましたの。そしたら喜んでお飲みになってたわ。あなたが運んで来てくれたぐらいで文句なんて垂れないわよ」
ここのところ足が悪くて動きにくいから出来る限り階段の上り下りは避けなければならない。
「あー、煎れてくるわ何味?」
「お紅茶だと喜んでお飲みになさると思うの」
「あー、分かったよ。久美子は早く眠ってくれ、明日仕事なんだからさ」
私の夫は心配性、大丈夫よ。遅くあなたより起きても間に合う職場なのよ。
「よし、今日もアイツは自分の部屋に籠るんかな?」
「籠っていようがそれは私たちには関係の無いことです。過干渉でないのが私たちの良きところでしょう?」
そう促すとこくりと頷く夫。夫は階段を懸命にあがり娘の部屋にノックする。下の階には届かない声や扉が開く音がほわっと聞こえてきて、また扉が閉まった音がした。
「いや、『ありがと!ちょーど、甘いの欲しかったんよね!お父さんもお疲れ様、おやすみ』って言ってたけど、やっぱり反抗期来てるか?」
夫は頭を掻きつつ首を傾げて聞いてきた。
「あなたが優しさでいっぱいだから娘も嫌な気はしないんですよ。」
そう伝えると頬を真っ赤にした夫が黙って書斎へ戻っていってしまった。これは照れ隠しだ。昔からこの癖だけは抜けずに残っているようだ。
「さぁ、お片付けしなくては」
立ち上がって見つけた灯りは娘が夜な夜なその部屋で頑張っている証拠だろう。その灯りが消えぬように私たちはサポートしていきたいと常々思っているのだった。
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