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第一章 お嬢と護衛たち
父が率いる組の屋敷は、昼でも薄暗い静けさに包まれていた。
襖の外からは、低く抑えられた声で交わされる若衆たちの会話が漏れ聞こえる。
敵対組織との争いが激化する今、私――“お嬢”の身も狙われているのだという。
「今日からは、彼らにお嬢の護衛を任せる」
父の言葉と共に、障子が開かれた。
そこに並んでいたのは、どこか場違いなほど華やかな六人の青年たち。
しかし、その瞳に浮かぶ光は鋭く、ただの若者ではないとすぐにわかる。
さとみ
前に出たのは、涼しげな眼差しを持つ青年。
「俺が指揮をとります。……安心してください、お嬢は俺が必ず守りますから」
淡々とした声音。けれど目の奥には強い意思が宿っていた。
ころん
隣で元気よく手を挙げたのは、明るい笑みを浮かべた少年。
「へへっ! 任せといてよ、お嬢!僕がずっとそばにいるから!」
その軽さに一瞬不安になるが、不思議と心が和らぐ。
るぅと
「お嬢のお世話も含めて、僕にお任せください」
柔らかな微笑みと共に差し出されたハンカチ。
……いつの間に、私が手を震わせていたことに気づいていたのだろう。
莉犬
「怖いときは、俺がぎゅってしてあげるからね!」
子犬のような笑顔。でも、その奥には烈しい情熱が隠れていると直感する。
ジェル
「まぁ心配せんでええ。お嬢が涙流すような真似は、絶対させへん」
軽口のようでいて、その言葉に妙な安心感がある。
ななもり
最後に口を開いたのは、彼らをまとめるような落ち着きを持つ男だった。
「俺たち全員で、お嬢を守る。だから――信じてほしい」
真摯な声に、思わず胸が熱くなる。
その日から、六人の護衛との奇妙で危険な同居生活が始まった。
賑やかで優しい時間の裏に潜むのは、いつ襲撃が起きてもおかしくない緊張感。
そして――次第に芽生えていく、甘くも切ない恋心だった。