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オレン「………うーん」
オレンが眠い目を擦りながら伸びをして、まだ寝足りないのか、あくびをした。
オレン「ふぁ〜……日光浴びよ…」
涙目の状態でカーテンを開けると、この上ないほどの晴天が広がっていた。
いい朝だな、と思った直後
遠くの大樹のさらに向こうに、赤黒い空と黒い雲が見えた。
オレン「………なんだ、あれ」
第二話『非日常』
タナー「ん……?」
朝、目を覚ますと、見慣れない天井が見えた。
タナー「うーん…?」
寝ぼけているのか、昨日何があったのか覚えてないようだ。だが、目が冴えてきたと同時に思考力も上がってくると…
タナー「…あ」
昨日、ジェヴィンとした行為が鮮明に蘇ってきた。
ふと、腕に暖かい感覚がした
タナー「ジェヴィン……」
ジェヴィンはもうすでに起きていたようで、ニコッとタナーに微笑みかけると
ジェヴィン「おはようございます。タナーさん」
昨晩の淫らな顔とは打って変わって、まさに誠実な男性…のような笑みを浮かべていた。
タナー「…おはよう」
ジェヴィン「……………」
タナー「……………」
沈黙の時間が流れた。
ジェヴィン「昨日は…本当に申し訳ございませんでした。」
手を合わせ、目を細めてタナーを見つめるジェヴィンを見て、
タナー「いや…気にしなくていいんだ」
タナー「俺も……まあ、同意したし……」
ジェヴィンがまた微笑んだ…と思いきや、急に険しい表情に変わった。
ジェヴィン「…………な?!」
ジェヴィン「…空が………赤黒くなっていく」
瞳孔を縮ませ窓の外を凝視するジェヴィンを見て、タナーはただならぬ悪寒を感じた。
タナー「………?!」
タナー「本当に…、あいつが現れ…」
二人とも固唾を飲み、顎や首元に冷や汗が流れた。
ジェヴィン「話している暇はありません。早く、準備を」
タナー「あぁ…」
二人はすぐ、畳んであった自分の服に着替えて、武器を持ち、赤黒い空の元へ向かった。
空が完全に赤黒く染まって、さっきまであった綺麗な澄んだ水色はどこにもなかった。
何十分か走った後、二人は突然立ち止まった
ジェヴィン「…………」
ジェヴィン「これは……どういうことでしょうか」
タナー「……?!?!」
タナー「ゔぅっ……あ、がっ…おぇぇ………」
周囲にあったのは、スカイ、ヴィネリア、オレンの………死体と、腐敗臭だけであった。
スカイは身体中に鉄骨が刺さり、絶望に満ちた表情で地面に倒れていた。
ヴィネリアは、体の内部から植物が成長した様子で、身体中の穴という穴から植物が飛び出て、立ち尽くしていた。特に,両目から出た太い植物と、飛び出た眼球が痛々しい。
オレンは瞼を引きちぎられ、腹を裂かれ、肋骨と内臓が剥き出しになった状態で、木に寄りかかっていた。
ジェヴィン「…手遅れでしたか」
タナー「っはぁー……は……あぁ…」
タナー「ご、めんなさ……スカイ…ヴィネリア……オレン…」
タナー「もっと早く此処へ来ていれば…」
胸が痛い。タナーは自分の胸を、張り裂けそうな気持ちを抑えるため、指先に力を込めて押さえ続けた。
吐き気を催す腐敗臭と、無惨な死体を見てえずくタナーの口元を、ジェヴィンが抑えた。
ジェヴィン「私も同じ気持ちです」
ジェヴィン「……生存者を探しましょう」
ジェヴィンは、今まで感じたことのない、嫌悪感と絶望感と、罪悪感に苛まれた。
オレン「っぐ…、が、がはっ………、」
タナー「…?!」
ジェヴィン「オレンさん、生きて……」
すぐに二人は立ち上がり、オレンの元へ駆けつけた。
タナー「オレン!無茶なのはわかってるけど、生きて欲しい」
タナー「そんな状態で、生きているのが辛いのは分かっているけど…」
ジェヴィン「……すぐに処置を」
ジェヴィンが包帯を取り出すと、オレンが首を横に振った。
オレン「いいんだ…無駄なことはしなくて」
タナー「無駄って………オレンはまだ生きてる!できることなら、生き残っていて欲しいんだよ!」
オレン「…無駄なんだって。もう死ぬし、俺」
オレン「わかるんだよ。自分のことは自分が1番わかってるんだよ」
目と腹から血を流しながら、掠れた声で、だが聞き取りやすいように、ゆっくりと話す。
オレン「…せめて、役に立ちたいな」
オレン「…ちょっと、長話になるかもだけど」
オレン「これをやったのは、ウェンダなんだ」
ジェヴィン「…ウェンダさんが?」
納得がいかないという様子で、ジェヴィンとタナーが顔を見合わせた。
オレン「…うん。そこに倒れてるスカイとか、ヴィネリアも。ウェンダがやった」
オレン「でも、俺にはあれ、ウェンダに見えなかったな。間違いなくウェンダなんだけど、なんか………誰かに操られているみたいで」
二人はハッとした。……ブラックだ。
皆をおぞましい姿にするというのは、死体と、別のものを虐殺し始めるその姿のことだろう。
オレン「…それでさ、予想なんだけど」
オレン「グレイはさっきまでここにいたんだけど、ウェンダには気づかれていないようだったな。すぐ逃げたから、多分まだ傷一つ負わず生きてるよ」
オレン「……っがっ?!がは…っ、げほ、」
タナー「無理をするな…それ以上喋らなくていい」
タナー「もう、助からないんだな………」
オレン「…この大樹は、ツリーさんだ」
ジェヴィン「………!」
オレン「…で、俺らがいるところの反対側では、きっとラディが首を吊ってるよ。」
ジェヴィン「………そうですか」
オレン「あー………」
オレン「…………」
オレン「もうダメかも」
オレンは口元だけで微かに笑うと、最後に少し咳き込んで、こう言った
オレン「ピンキー、無事だといいな」
バタン、と、地面に何かが倒れた音がした
タナー「…オレン…!」
ジェヴィン「ふぅー…はぁ……」
ジェヴィンもまた、吐き気が襲ってきたようで、口を必死に抑えていた
タナー「………どうしようかな」
ジェヴィン「……オレンさんが言っていたこと、本当みたいですね」
オレンが寄りかかっていた大樹は、葉はすべて朽ち、触れるたびにギシギシと音を立てているが、うっすらと顔があった。本当にツリーなのだ。
ジェヴィン「この張り紙は何でしょう?」
そこにあった張り紙は、行方不明者捜索用ポスターのようだった。
暗くて長い髪の、女性の写真だ。
美しい顔立ちだが、その両目は見開いて、こちらを凝視しているようだ。妖艶だが異様な雰囲気のその写真から、すぐに目を逸らした。
タナー「それで、あれだよ。ラディがいるんだろ。その裏に」
ジェヴィン「…生きてはいないのでしょうね」
そこにいたのは、首を吊っている、顔半分が剥ぎ取られ頭蓋骨が剥き出しになり、下半身を千切られた、ラディとはギリギリ認識できるほど、無惨な肉塊があった。
タナー「…っはぁ……」
ジェヴィン「どうして…こんなことが」
ジェヴィン「神よ、私たちが、何か悪いことをしたでしょうか?」
ジェヴィン「そこまで、私たちは罪深い者なのでしょうか?」
タナー「…わからないけどさ、」
タナー「ブラック…とやらの目的も」
タナー「でも」
タナー「俺たちは、この異常な世界で、できる限り犠牲者を減らして、生き残る。ただそれだけだ」
ジェヴィン「流石、みんなの保安官さんですね」
恐怖心は隠しきれていなく、震える唇で無理に微笑んでいるが、ジェヴィンは少し安堵したようで、タナーも呼吸を整えた。
タナー「じゃあ、行こうか」
ジェヴィン「はい。生存者を探しましょう」
今朝
オレン「…なんだあれ」
遠くにあったはずの赤黒い空は、あっという間に視界のほとんどを奪っていった。
オレン「…昨日、サイモンの家行けなかったからな」
オレン「今日予定ないし…空確認しに行くついでにツリーさんのところに集合しよう」
オレンは着替えと荷物を持つと、足早にツリーの元へと走って行った。
オレン「……は?」
ウェンダ「あっはははははははははは!」
目の前にあったのは、ウェンダが甲高く笑いながらスカイに鉄骨を突き刺している光景だけだった。
オレンは咄嗟に、木の影に身を潜め、息を殺した。
オレン(バレたら、殺される)
涙目になりながら必死に口を押さえる。
ウェンダ「あら?スカイもう疲れちゃった?」
ウェンダの腕の中で首を絞められているスカイはぐったりとうなだれていながらも、お気に入りのデディベアを大事に抱えていた。
まだ、生きている。
ウェンダ「…前から思ってたんだけどね」
ウェンダ「スカイあんた、いくら未成年って言っても14歳でしょ?」
ウェンダ「いくらなんでも子供っぽ過ぎじゃないかしら。ほら、この人形とかね」
スカイからデディベアを奪い取り、地面に叩きつけ、踏みつけた。
スカイ「……?!?!?!」
スカイが声にならない叫び声をあげる。
スカイ「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
油断していたウェンダの腕を振り払い、体当たりをしようと目を瞑って走ったが、ひょいとよけられてしまった。
ウェンダ「危ないわね〜スカイ。急に突っ込んでくるなんて。らしくないわよ?」
ウェンダ「………あ、聞こえてないみたいね」
既にスカイは生き絶えていた。
オレン(…スカイ!)
本当は今すぐにでも助けに行きたかったが、ウェンダの動き、表情、言動、全てが恐ろしく、足がすくんで動かない。
ただ、その惨たらしい一部始終を見ているしかなかった。
ウェンダ「……さて、次は誰を探そうかしら」
ヴィネリア「ウェンダ?」
騒ぎを聞きつけたのか、遠くからヴィネリアとラディが小走りで走ってきた。
ウェンダ「あら〜!三人とも!そっちの方から来てくれるなんて、気がきくじゃない?」
ウェンダ「ま、探してからの方が楽しいけど」
ウェンダ「そうねまずは」
ウェンダ「あなたからね。ヴィネリア」
二人は、何を言っているのかわからないという様子でウェンダを見つめていた。
ヴィネリア「三人とか、探すとか、よくわからないけど」
ヴィネリア「そこに倒れているスカイは何?」
ウェンダはスカイを踏みつけていたのだ。
ヴィネリア「それ、ウェンダがやったのよね…?」
ヴィネリア「どうして?」
ウェンダ「どうしてって言われてもねぇ…」
ウェンダ「理由ないしね」
ウェンダ「いや、理由はあるんだけどわからないのよ」
ウェンダ「まあそんなのどうでもいいわね!遊びましょう」
ヴィネリア「………」
ヴィネリア「………?!」
突然ヴィネリアが、血を吐いて膝をついた。
耳や口、目の隙間から緑色のものが見える。
オレン(…植物だ)
ウェンダ「よかったわね〜〜〜!ヴィネリア」
ヴィネリア「どういうっ、こと?」
苦悶の表情を浮かべながら、ウェンダを睨む。
ウェンダ「あなた、植物大好きじゃない?」
ウェンダ「死ぬなら好きなものに囲まれて死にたいね〜って!」
ウェンダ「私はそう思うわよ」
ヴィネリア「あ………あぁ」
ヴィネリア「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
ぐちょ、っと耳当たりの悪い音を立てながら、ヴィネリアの目から太い植物が現れた。
その植物の先端では、霞んだ緑色の瞳が光っていた。
ウェンダ「…くだらない話だったけど」
ウェンダ「また話せてよかったわ!楽しかったよ。ヴィネリア」
首をカクッと動かし、腕を無気力そうに揺らしながら
ラディの方を振り向いた。
ウェンダ「次はあなたよラディ」
ウェンダ「あまり話したことないけど、楽しみましょう」
ラディ「……は?お前、何言ってんだ」
ラディ「普通さ…こんなことしねえだろ」
ラディ「お前、本当にウェンダなのか?」
冷や汗をかきながら、吊った目でウェンダをギリッと睨む。
ウェンダ「ええ、私はウェンダ本人で間違い無いわよ?」
ウェンダ「どう遊ぼうかしら!!!」
その瞬間、ウェンダがラディに飛びかかった。
ラディ「…っ!」
逃げようとしたが、ウェンダの瞬発力は凄まじく、すぐ腕を掴んで取り押さえられた。
そして、ロープを使って大樹に縛り付けられた。
ウェンダ「うーん、思いつきで縛ってみたけど、これじゃダーツね」
ウェンダ「いいわね、ダーツしましょ!ダーツ!」
ケタケタと笑いながらどこからかナイフを取り出し、ギラギラしたそのラディの左目一直線に投げた。
ラディ「あ゛っ」
嗚咽の混じった声を出しながら、ラディが悶えた。
ウェンダ「まだまだ〜!」
またウェンダがナイフを数本取り出すと、それを同時にラディの顔に投げた。
ラディ「あが………っ!!!!!」
声にならない叫び声をあげ、ラディの顔の左半分が完全に崩壊した。
だが、瞳には生きようとする意思がまだ感じられた。
それを察したのか、ウェンダは興味が失せたように、キョロキョロしながらラディに近づいた。
ウェンダ「ラディあんた、仮に私がロープ外した瞬間逃げようとか考えてたでしょ」
ウェンダ「そんなしょうもないミスしないわよ!」
ウェンダ「流石の私でも、足の速さじゃあんたに勝てないもの。逃げられたら追いつけないわ」
ウェンダ「でも、万が一逃げられたら危ないからさ」
ウェンダがラディの右足を掴んで言った。
ウェンダ「脚貰っておくわね」
ラディの脚に馬乗りになり、近くにあった小動物ほどの大きさの石を取って脚に打ちつけた。
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
何度も鈍い音を出しながら。
ウェンダ「次は左脚ね!」
涙を流して血を吐き出すラディを横目に、左脚に石を打ちつけた。
さっきよりも強く。
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
ウェンダ「こんな脚じゃもう逃げられないでしょ?」
ラディの脚を引っ張ると、すぐ千切れた。
ウェンダ「んーじゃあロープ解いてあげるわね」
木の幹と共にロープをナイフで切り裂くと、ラディは無言でウェンダのことを見つめた。
濁った瞳には何も映っていなかった。
人に好かれなかったが、運動が好きだった彼の、人に認められた「いいところ」は足が速いこと。
だが顔の左は完全に骨が剥き出しになり、千切れた下半身では走ることなんてできなかった。
白猫の少女は、いつもその人の大切なものを貶して奪っていく。
ウェンダ「じゃ、もう用ないから、バイバイ!」
ウェンダ「生きてるといいんだけどね」
口だけに微笑みを浮かべながら、鼻歌を歌って岩陰へ去っていった。
ラディ「………」
ラディ「……!」
ラディがふと上を見ると、ある程度低い位置に、丁寧にロープの輪が枝に引っ掛けられていた。
その大樹によじ登り、輪に手を伸ばして…
首に引っ掛けた。
ウェンダ「最後♡」
ヘッドホンに手を開けながら小刻みに震えていたオレンは、後ろから聞こえる声と、肩にある白い手に気づいた。
オレン「……ぁ」
瞳孔を縮ませ目を背ける
ウェンダ「そっけないわね」
ウェンダ「さっきからずっと岩陰で見てたくせに」
ウェンダ「最初から気づいてたわよ。オレンが見てたの」
オレン「…三人って、まさか」
ウェンダ「オレンも含めて三人ね」
オレン「……なんだ、バレてたんじゃん」
オレンは、これから自分がこの少女にされることが一切予想できず、逃げようにも肩を掴まれ、足が硬直していて動けなかった。
ウェンダ「さっきから話してれば、メソメソ泣いてさ。女々しすぎるでしょ」
ウェンダ「せっかく顔いいのにね?」
オレンの顎をクイッと持ち上げ、涙の浮かんだ瞳を見つめ、まぶたに手をかけると…
そのまま引きちぎった
オレン「…?!…う゛ぅっ」
ウェンダ「いつも目ジトってしてるし、このくらい大きい方がいいんじゃないかしら?」
地面で震え続けるオレンのヘッドホンを奪い取って適当に放り投げたあと、ウェンダは「どう遊ぶか」を考えていた
ウェンダ「そうねぇ」
ウェンダ「私、体の中って見たことないのよね」
ウェンダ「ちょっと見せてよ」
オレン「何言って…!」
オレンが言い切る前に、ウェンダはナイフをオレンの腹に押し当て、ザクッという音と共に縦に切り込んだ
オレン「あ゛ぁっ、ぐッ、はぁ………」
オレン「ゔあぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
切った腹を広げ、無理やり肋骨を曲げ、内臓が露出した。
ウェンダ「わ、すごい綺麗」
ウェンダ「でもずっと見てて面白いものでもないわね」
ウェンダ「飽きた。バイバイ」
ウェンダ「そうだ、そうだわ。ピンキーちゃん、生きてるといいわね〜♡」
あまりにも自分勝手な行動に、嫌気が刺す。
だが、それをウェンダに直接言えるほどの体力がない。
大樹の元へ這いずりながらも、考えていることは恋人のことだった。
オレン(…多分、ウェンダは次ピンキーのところへ行く)
オレン(守りたい…守れない)
オレン「誰か………」
そう呟いた。その瞬間
遠くから二人分の足音がした。