テラーノベル
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カナダとアメリカ、そして、とある方の誕生日記念のつもりで書いたお話。どうしても今日投稿したくて急いで仕上げたので、読みにくいところがあるかも。
元々加日のお話として書こうと思ってた話なので、加日がメイン。+アメ日と、ちょっと英日っぽい感じになっちゃった。誕生日は話の内容に全く関係無いけど、許してつかあさぁい。
昼下がり。空はどんよりと曇って、光がぼやける
キッチンの小窓から見える景色が、なんだか今の気分に合いすぎて、笑えない
あーあ。今日も疲れた
シンクの中の皿はすっかり片づけ終わってて、あとは僕の気持ちだけが置いてけぼりって感じ
手を拭きながら深くため息をついて、フラフラと自室へ向かう。完全に気力ゼロ
ベッドにダイブした瞬間、思いっきり顔を枕に突っ込んで叫んだ
「あ゛ーもう!! 無理!!」
うん、無理。ほんと無理
限界オーバーなんてもんじゃない。今日こそは我慢の糸がブチッと切れた
もうヤダこの家。エセ紳士でキチガイな父さんに、自己中でいつも家にいない兄さん。弟たちはとっくに家出して、誰も帰ってこないし
……てか、ほんとに僕ってこの家の子なの? もしかして拾い子なんじゃないの?
だってさ、あんなイカれた血筋から、なんで僕だけまともなんだよ
「……ったく、兄さんどこ行ったんだよ! なんで僕だけが家に残されてんのさ!」
腹立って横向いたら、隣のベッドにぽつんと座ってるぬいぐるみが目に入った
日の丸模様の、まんまるなぬいぐるみ。ニッコリ笑顔の刺繍が可愛らしい
もそもそと抱き寄せて、ギュッと胸に押しつけた
「……はぁ、癒しが欲しい…優しい温もりが…」
こんなとき、頭に思い浮かぶのは決まってあの人
他人行儀だけど、いつも優しくて、笑うとめちゃくちゃ可愛くて……ああ、ダメだ。顔がニヤけてきた
やっぱ、会いたい。今すぐにでも
あの人に、荒んだ心を癒してほしい
「……日本の家、行こ」
思い立ったら即行動
大きめのボストンバッグを引っ張り出して、服や充電器、あとメープルの瓶も詰め込んだ。
膨らんだバッグは、完全に“泊まる気満々セット”
玄関を出た瞬間、紅茶みたいな香りがふっと鼻をくすぐった
……まぁ、帰る気ないし、いっか
「確か…ここだったよね」
やってきたのは、会社近くのとあるマンションの一室
場所は知っていたものの、訪れるのは初めてだ
大きなバッグを抱え直して、緊張気味にチャイムを押す
内心ドキドキしてるのはバレバレだろうな
チャイムの余韻が消える前に、やけに大きな足音を立ててこちらにやってくる
……本当に日本か?
背から取りだした斧を構えて、迎え討つ準備をする
迫り来る足音。ドアノブに手をかけた音を合図に振り下ろす斧
同時に、豪快に開いた玄関扉からは、ここにいないはずの兄さんが満面の笑みで腕を広げて飛び出した
「Japanおかえり……って、カナダかよ。何しに来たんだ?」
「に、兄さん!?」
急ブレーキをかけた刃先が首元の寸前でピタリと止まる
急いで背中にしまった後、肩を鷲掴んでこれでもかと揺さぶった
「兄さんこそ!!なんでいるの!?ここ日本の家のはずだけど?あ、わかった!どうせ不法侵入したんでしょ!!ていうか!いい加減家に帰ってきてよ!父さんを僕一人で相手するのどれだけだったか…!!」
「ちょっ、落ち着けって。俺は合鍵使って入っただけだぞ」
ヘッドバウンドかのよう揺れる頭で弁解する兄さん
その、聞き捨てならない単語に、捲したてる口がピタリと止まる
合鍵…合鍵だって?それ、日本から貰ったの?
「合鍵って……まさか同棲…」
「あーっ!アメリカさん!また不法侵入しましたね!?」
背後から聞こえた非難の声
この、男性にしては少し高い可愛らしい声は家主である日本
ちょうど職場から帰ってきたようで、疲れが顔に出ている
そんなことも気にせず、待ちわびた声を聞いた兄さんは飼い犬のように日本へ一直線に飛びついた
「Japan〜!待ちくたびれたぜ♡」
「やっぱり不法侵入なんじゃん」
全く、自称世界のヒーローが何やってるんだか。これじゃヒーローじゃなくてペット…いや、変態だよ
「あ、カナダさん!こんにちは。あなたがいらっしゃるなんて珍しいですね」
日本が僕に向かって微笑みかける
陽だまりみたいな、優しい笑顔。やっぱり落ち着くな
「Hello!君に会いたくて来ちゃった」
「そうですか。なら、ご期待に添えるよう頑張らなきゃですね」
「ここじゃなんですし、とりあえず上がってください」
「じゃあお言葉に甘えて…お邪魔します」
足を踏み入れたのは、自分の家に似た香りのする部屋
一人暮らしの家にはまず無いような大きなリビングテーブルに3人で座る
僕のために用意されてるみたいで、居心地がいい
湯のみを差し出され、お返しにと手土産を渡す
すると、カナダさんちのメープルシロップ、好きなんですよ!と喜んでくれた
僕の特産品で元気になる彼を見て、誇らしく思う
暖かい緑茶を一口飲んで、コトリと湯呑みを置く
一息ついた僕は、意を決して、本題を切り出した
「君にお願いがあってきたんだ」
「僕をしばらく此処に泊めてほしい!」
「いいですよ。私の家で良ければゆっくりしていってくださいね」
え、いいの??
あっさりと承諾されたワガママに、逆に自分が驚いてしまう。
「理由は聞かないの?」
「あなたの様子を見てれば何となく分かります。それに、ちゃんと許可取りに来てくれたので、いくらでもどうぞって感じです」
隣の人とは違ってねと遠回しな文句が射られたが兄さんは何処吹く風
兄さん…今からでも謝った方がいいんじゃないかな
まあ、兄さんの好感度が下がろうが僕には関係ないしいっか!
「ありがとう!しばらくお世話になります」
「あ、宿泊中の生活費は君の分含め兄さんが全部出すからね」
「え?お、おう!任せろ!」
「本当ですか!助かります〜」
生活費が浮くと分かり途端に喜ぶ日本。結構現金だよなあ、そんな所も可愛いけど
こうして、僕は日本の家の、第2の居候となった
その日の夕方、テーブルには大きな鍋が置かれている
今日の夕飯はみぞれ鍋らしい
よく家族が遊びに来るのだろうか、一人暮らしには無いものがたくさんだ
それはそうとして…目の前のソレに右手が疼く
「ね、日本…それって…」
「どうですかこれ!可愛いでしょう!」
鍋の上に鎮座する大根おろしのアザラシ
ご丁寧にゴマで模様までつけられている
「初めて作りましたけど結構上手くできたんですよ!」
「っ!…そ、そう、なんだ…」
「カナダ、抑えろ」
荒い息に気づいた兄さんが、斧を取りに行かないよう肩を押さえつけてくれる
落ち着け…あれは作り物…あれは大根おろし…
「作っといてなんですけど…崩すの可哀想になってきました…」
しゅんとしょげる日本
ああ…ダメだ、作り物といえど殺意が抑えられない…
良心と殺意がせめぎ合う。けれど、勝負は一瞬
「日本の方が可愛いから大丈夫だよ!!!」
我慢も虚しく、謎のフォローを入れて秒で崩した
今回は殺意が勝ってしまったようだ
夕食が終わり、ソファで一息つく
ダラダラと過ごしていると、遠くで鳴る、お風呂が沸いた合図
瞬間、着替えを引っ掴んだ兄さんが、日本を捕らえるように抱きしめた
「Japan!一緒に風呂入ろうぜ!」
「何馬鹿なこと言ってるんですか、あの浴槽は一人用です」
「そうだよ兄さん。お風呂くらいゆっくり入らせてあげてよ」
「なんだよ俺が騒がしいみたいに」
「自覚してるなら自重しなって」
「……日本、僕が相手してる間に入ってきな。大丈夫、絶対覗きなんてさせないからね」
「は、はいっ!」
風呂場に行こうと必死な兄さんを止めて、日本があがってくる
これで僕のミッションは完遂…そう思っていた
でも、問題はもう一つあった
「寝る場所どうしましょうか…」
「来客用の布団は二組あるんですけどお二人の身長だとはみ出しちゃいますし体痛めそうですね」
たしかに、布団文化のない僕たちには、厚みのない敷布団はきついかもしれない
試しに日本のダブルベッドに寝っ転がった兄さんの脚は、宙に放り出されていた
兄さんであれなら、僕はまず無理だな
「ベッドでもギリギリだ」
「僕たちが押しかけたんだから気にしなくていいよ!兄さんなんて父さんに似てしぶといから雨ざらしでも死なないし」
「おい!俺に失礼だろ!」
「イギリスさんには失礼じゃないんですね」
だって親父だし
兄さんのその意見には全くもって同意
でも、日本は「家族なんですから、もう少し大切に扱ってあげてください」と言う
なんて優しいんだ…父さんには勿体ない
全部、僕に向けて欲しい
そんなことを思っていると、平然とした顔で、兄さんが尋ねる
「3人でベッドに寝ればいいんじゃないのか?」
「…いくらダブルベッドだからって、日本がぺしゃんこにされちゃうよ」
「だったらキングサイズのベッド買おうぜ。そしたら3人でも寝れるだろ」
我ながらGood ideaだぜ!と笑う兄さん
対し、呆れたように溜息を吐く日本
その様子は会社での会議中みたいだ
「僕のこの狭い部屋にキングサイズが入るとでも?」
「じゃあ広い部屋と風呂のある家も買ってやるから…」
「プレゼントの規模がおかしいんですよ」
止まらない議論。時間だけがどんどんすぎていく
もう、僕の眠気は限界だった
「あー!わかったわかった!!今日はお客さんとしてベッドで寝るから!明日からは同居人として交代で寝よ!」
一言で、静まりかえる部屋
自分の意見が通り、嬉しそうな日本
「では、おやすみなさい」と、布団を抱えて別の部屋へと向かう
なんだ、ここに布団を敷いて寝るんじゃないのか
兄さんと2人きりの暗い寝室
巨体が2つも並んでいればダブルベッドでもギチギチで…凄く、暑苦しかった
「何が楽しくて兄さんと同じベッドで寝てるんだろ僕…」
日本を抱きしめながら寝たかったな
呟いた本音に、兄さんが反応する
「俺だってJapanと一緒に寝たかったさ」
「兄さんと一緒だと寝れないでしょ色んな意味で」
「ちょいちょい思ったけどお前は俺をなんだと思ってんだ?」
「……言っとくが、”あいつ”のことなんにも知らないお前に譲るつもりは無いからな」
「これから知っていけばいい話でしょ」
そんな会話をしつつ、眠りにつく
しかし、兄さんは寝相が悪いため僕は隅の方に追いやられる
こんな状態では安心して寝ることも出来なかった
「……暑い」
水でも飲もう
深夜、寝苦しさに耐えかねて、リビングへ行く
そこには、一人でソファに座る日本がいた
「お布団で寝ないんだ…」
まあ、布団敷くのも疲れるよな。でも、丸まって寝ているのは、ちょっと寒そうだ
寝室から持ってきた毛布。起こさないよう、そっとかける
少し触れた白肌の温もりに、胸の奥がツンと痛くなった
「君に触れると、心がざわつくんだ。…この気持ち、いつか届くかな」
次の日の朝、リビングに集う僕たち
眠い目を擦る日本が僕たちを見て、へにゃりと微笑んだ
「おはようございます。よく眠れ…て無さそうですね」
気の抜けた日本の笑顔。それだけで、胸の奥がじんわり熱くなる
やっぱりこの人は、僕にとって、唯一の救いなんだと……改めて思った
「俺は快眠だぜ!!」
「ああ…うん、大丈夫だよ。子供の頃もこんな感じだったから」
兄弟たちと同じベッドで寝てた時も、こんな感じだった気がする
寝相の悪さのせいで兄さん以外が床に落ちていたなんてことも多々あった
それに比べればまだマシ…なのかも
日本はそんな僕らを見て、ちょっとだけ眉を下げて、
「それはそれは……ご苦労さまです」
って言ってたけど、なんだかその声も優しくて心地よかった
僕の心は知らず知らずのうちに、日本に惹かれていたんだろうな
家の中の空気も、日本の笑顔も、何もかもがどんどん大切に思えていく
“好き”の気持ちが、胸の奥で膨らんでる
これってやっぱり……恋、なのかな
朝食を終えて、皿洗いをする日本をソファから眺める
同じベッドで寝て(交代制だけど)、朝ごはんを共にし、一緒に職場に行って、夜は同じ家でのんびり過ごす
兄さんを大きい子供だと思えばほぼ結婚生活みたいなものだし、とても充実している
同棲みたいでいいな、なんて考えて、ニヤけが止まらなかった
「そういえばカナダ、お前ドラッグはもうやめたのか?」
現実を叩き込むように、隣に座った兄さんが問う。
「…うん。ここではなんのストレスもないしね。それに、あんなのよりも日本の方がよっぽど効果あるよ」
「だよなぁ!あいつの癒し効果半端ねえもん、さすがは俺の日本だぜ!」
「は?日本は僕のなんだけど」
「You’re just talking trash.(寝言は寝て言えよ)」
「Look who’s talking.(どの口が言ってんだか)」
英語で応酬する辺り、兄さん、本気だ。いや、僕もだけど
静かに、だけど激しく火花が散る
やっぱり、兄さんは手強いライバルだ
そう思うのも、この日々の常である
そして、同居開始から2週間近く経ったある日
お昼過ぎの会社、いつものように仕事をこなす
……今日の夕飯、何にしよう
ふと湧いた考えを相談をしに、日本の元へ向かう
しかし、日本のもとには、父さん…イギリスがいた
2人は楽しげに何かを話して、誰もいない部屋に入っていく
日本の腰へ自然に回された青い手に、ギリ…と拳が軋んだ
僕の胸に渦巻く、仄暗い感情と、不安
きっと、日本が父さんに連れていかれるのが嫌なんじゃない
…日本が、父さんを選ぶかもしれないのが怖い
根拠の無い、暗い思考
気づけば僕は、こっそりと2人の後をつけていた
「ここなら誰もいませんね」
人がいたら困ること…?父さん、何をしようとしてるんだ…?
ドア越しに聞き耳を立てる。薄いドアだったお陰で会話がよく聞こえた
「それで、ご用件とは?」
「大したことじゃありません。ちょっとした相談ですよ」
「……私の息子たち、アメリカとカナダが何処かへ行ったまま帰ってこないのです」
自分の名前が出てきてドキリと身を縮める
「私なにかしてしまったかと不安になりまして…大きな家に一人とはなんとも寂しいものなのですね」
悲しげなトーンで語尾を窄ませる父さん
しかし、息子である僕には通用しない
「あれ絶対演技だよ…父さんがその程度で悲しむわけないもん…」
だが、それは家族だから見破れるもの
ただでさえお人好しなのに、父さんに幻想を抱かされている日本は、まんまと演技に騙されていた
「あの…お二人ですが、今私の家にいるんです」
なんで言っちゃうの!!!?
「本当ですか!日本さんの所に…理由をお聞きしても?」
「それは僕らの秘密なので教えられません。僕は約束は守る男ですからね!」
うん、だったら僕達がいる場所も秘密にしといてほしかったな
「なら仕方ありませんね」
あ、引き下がるんだ。父さん、やっぱり日本には甘いよな
「でしたら…そろそろ家に帰るよう、説得していただけませんか?」
「できるか分かりませんが…やってみます」
「ありがとうございます」
会話が終わって、こちらに向かってくる日本
やばい、逃げなきゃ
全力ダッシュでその場を後にする
「わっ、なんかすごい足音しましたね」
「………そうですね」
誰もいない廊下の先をじっと眺めるイギリス
その場には僅かに甘い香りが漂っていた
急いで駆け込んだ日本の家
先に家へ帰り、リビングでのんびり寛いでいる兄さんの元へ行って、全力で肩を掴んだ
「やばいよ兄さん!日本の家に入り浸ってるの父さんにバレた!」
声を荒らげて言った、たった一言
だけど、兄さんは事態の深刻さを一瞬で理解する
「Holy shit!絶対帰らせようとするじゃねえか!嫌だぞ俺は!」
「僕だって嫌だよ…面倒臭い父さんの世話なんてしたくないし」
「どうする?Brother……オーストラリアかニュージーランドを世話役として贄にするか」
「絶対嫌がるって。あいつらが家出した理由、忘れたの?」
「そういや、仕事以外の連絡つかねえんだった…」
シンと流れる重たすぎる静寂
八方塞がりな状況に、胸の奥がぎゅっと締め付けられる
僕は、日本が好きで、こんなにも一緒にいたいって思ってるのに…どうして邪魔ばっかり入るんだろう
そのもどかしさが、僕の心を重く押しつぶす。
「他の兄弟たちも頼れないし…」
「こうなったらJapan連れて逃亡するしか…」
それしかない
そう答えようとして、ガチャリと開く扉
「あ、いた」
「アメリカさん、カナダさん。少しよろしいですか」
暗い雰囲気とは反対に、明るい光を背に現れた日本
瞬間、兄さんはしがみつくように日本へと抱きつく
「Japan!俺は帰らないからな!」
「はぁ…聞かれてたんですね」
諦めの表情が、暗い感情を加速させる
君も、僕を邪魔するっていうの?
「なら話は早いです。イギリスさんが悲しんでましたよ、可哀想なので帰ってあげたらどうですか?」
「ヤダ!まだお前と一緒に暮らしてたい!」
「そうだよ!サイコパスとキチガイに囲まれて不味いご飯食べる生活なんてもう二度としたくないよ僕は!」
だから、大好きな君と、ここでずっと暮らしていたい
その気持ちが、力に表れすぎてたみたいだ
喚く大男2人に抱きしめられて苦しげな日本
ぐへっと埋めいた声は潰されたカエルのよう
「ちょっ、わ…わかりましたから…はなして…」
その時、ピンポンとインターホンが鳴る
絶対、父さんだ
パッと日本から離れリビングへと逃げる
解放された日本がドアを開ける
そこにはやはり、父さんがいた
「説得は失敗したようですね」
やっぱりかと言いたげな、諦めな表情
最初から説得できないと分かっていたような態度だ
「カナダさんが駄々こねるなんてよっぽどですよ」
家で何してるんですか貴方は…と呆れる日本を他所に、父さんはリビングへ行き窓から逃げようとする僕たちの名を呼んだ
「アメリカ、カナダ、いい加減帰ってきなさい。いつまで日本さんに迷惑かけるつもりですか」
早く帰ってこい
怒りと嫉妬が滲む、言葉の圧
ただならぬ雰囲気に、日本が場を取り持とうと焦る
「いえ別に私は迷惑では…」
「そーだそーだ!Japanだってそう言ってるだろ!」
「…日本さん、少しお静かに」
「あ、はい……」
日本を一言で黙らせた父さんが、コホンと咳払いをした
「あなたたちが家族を捨てたなら、私が日本さんを家族として迎えます。…どうです?悪くない話でしょう?」
だってここは、貴方たちの居場所ですからね
いやここ私の家なんですけど…と困惑する日本を抱き寄せる父さん
そして、そのまま家を出ようとする
待ってよ。そんなの、父さんでも許さない
“日本を取り戻す”
想う心がシンクロした僕たち
急いで日本の元へ行き、父さんから日本を掻っ攫った
「「親父と2人きりになんてさせるか!!」」
「カナダさん口悪くなってますよ」
その後は色々あって、結局渋々家に帰ることになってしまった
玄関前には、父さんの車
日本と、幸せな生活との別れが辛くて、乗る前にギュッと日本を抱きしめる
「お世話になりました。……ありがとね、日本。君と過ごした毎日、すごく幸せだった。また……会いに来ても、いいかな?」
「勿論です。息抜きしたくなったらいつでもいらしてください」
いつものように優しく笑う彼
夕焼けに染まる頬に軽く落とした、お別れのキス
今、この瞬間だけは、君を僕のものにできた気がして、名残惜しい
すると、日本が背伸びをして、僕の頬にキスを返した
「っ日本!?」
「……ふふ、私もあなたに染まってしまいましたね。ほら、待たせてますから早く乗ってください」
背中を押され、車に押し込められる
触れた手は、火傷しそうなくらい熱い
彼の表情を見ることができないまま発進した車
背に残る温もりを噛み締めて、ふっ、と笑う
…また会いに来よう。今度は“逃げ場”じゃなく、“本気で向き合う場所”として
そして、今度は兄さん抜きで。そう決意した
「無理に決まってんだろ」
見透かした兄さんの呟きに聞こえないフリをして。
おまけ
その後本当に広い部屋と風呂のある部屋(賃貸)をプレゼントしたアメリカ
その契約書を確認した瞬間、日本の手がピクリと震えた
…“二人暮らし”。そんなの聞いてない
「ずるいよ兄さん!」
後ろから飛び出したカナダの声に、さらに事態は悪化した
「僕もここで暮らす!」
とのことで、時々カナダも居候として3人で生活することになった
勿論お風呂もベッドも3人で入った
その翌日、イギリスに呼び出された日本
笑顔の裏に感じる圧に怯えている
「また息子たちがどこか行ったんですけど貴方の所にいませんか」
「…いません」
「…………本当は?」
「私は知りませんってば」
これ以上、面倒事は増やしたくない。強い気持ちで、シラを切る
口を割らない日本をじっと見つめる緑の目
それがすっと細まったかと思うと、日本の首元に顔を埋め、呟いた
「貴方からジャンクフードとメープルの匂いしますよ」
「えっ!?うそっ!?」
「はい、嘘です」
騙された
いとも簡単にカマに引っかかった自分を悔やむ日本
しばらくして、何かを決意したイギリスが、日本の手を引く
「………はぁ。こうなったら、私もお世話になりますかね」
「さすがにベッドに4人は無理です!!」
そう叫んだはずなのに
今夜、真ん中日本は何度圧に苦しみ、呻くことになるのだろう
追伸:前回言っていた、英日バージョンの物語を語り部屋に投稿しました。
また、日本受けアンソロジーを企画しましたので、参加していただけると嬉しいです。参加方法など、詳細は語り部屋第17話に記載しています。
コメント
4件
コメントしたと思ってた ~ !! 😭😭 ごめんよ .. 😢 自分の誕生日に 🇨🇦🇺🇸🇯🇵出してもらえるなんて 本当に幸せでした .. 😳❤️🔥 🇨🇦の 🇯🇵への 独占欲が すごく 好きです .. 🥹🫶🏻️💓 本当に ありがとう ‼️ 😭😭🫶️💗
あぁ、なんで非アプリ勢はハートに制限があるんだ!! すみません「0」があと5つほどつく予定でした。 旧英家族最高です…… ありがとうございます、加日のお別れのシーンで無事昇天しました。 カナダくんの器用そうで不器用なところ、アメリカさんの横暴なのにどこか憎めないところ、イギリスさんの強引紳士なところ、日本さんのちょr…優しいところ、 キャラの全てが詰まっていてとても好きです 長々と感想失礼しました。執筆お疲れ様です。