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帰りの車の中で、ハンドルを握りながら、時折ちらちらと彼を横目に見ていた──。
今日は、色味を抑えたピンクコーラルのスーツに、光沢のあるパールグレーのネクタイを合わせていて、薄い色合いの地に煌めきのあるポイントカラーが映えていて、相変わらず見惚れてしまうほどだった。
「……そう言えば、ヒゲを剃られた時の会社での反応って、どうだったんですか?」
ずっと見ていたら、ふとそんなことが思い出されて、助手席の彼に尋ねた。
「ああ、ヒゲを剃った時か……」
握った拳を唇にあて、彼がフッと笑いをこぼす。
「思いのほか、驚かれてな。何かと理由をつけては、入れ替わり立ち替わり社員が覗きに来て困ったよ」
「社員さんたちが……。でもそれって、よくわかる気がします」
苦笑を浮かべる彼に、クスクスと笑って言うと、
「どうしてだ?」と、首が傾げられた。
「ヒゲを剃っただけだろう?」
「確かにそれだけですが、印象がだいぶ変わりましたもの」
「印象が……?」と、彼が不思議そうに言い、髭を生やしていた口元を手の平でさらりと撫でる。
「……より素敵になったっていうことです」
「……えっ?」
「素敵に、かっこよく……って、あ……っ」
交差点の手前で黄色のシグナルが灯り、ブレーキを踏んで止まると、
「……ありがとう。嬉しいよ」
優しげな声音とともに、彼から頬にちゅっとキスをされた。