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翌日の昇降口に入った瞬間、俺は凍りついた。
下駄箱の上に……
「若井×大森 確定カップル説」
って落書きが、でかでかと書かれていたからだ。
「な、なんだこれっ……!」
慌てて消そうとした手を、横からすっと押さえる。
「消す必要ないだろ」
「ばっ、若井……! これ、みんな見てるんだぞ!」
「だから? 俺と元貴のこと、本当だし」
涼しい顔で言い切る若井。
周りの生徒たちはヒソヒソと噂しながらも、
好奇心に満ちた視線を俺たちに向ける。
俺は耐えきれず顔を真っ赤にして下を向いた。
……でも、若井はそんな俺の肩を堂々と抱き寄せる。
「隠す気ないから」
「や、やめろってばっ!」
「無理」
ざわつきが一気に広がり、
誰かがスマホを取り出して写真を撮る音まで聞こえる。
俺は逃げ出したいのに、若井の腕から離れられない。
教室に入ると
机を囲むようにクラスメイトが寄ってきた。
「ねぇ、やっぱり若井と付き合ってんの?」
「いつから? どっちから告ったの?」
「昨日手つないでたよね~」
矢継ぎ早に飛んでくる質問。
俺は顔を覆ってうつむく。答えられない。
そこへ、若井が堂々と教室に入ってきて、俺の肩に手を置いた。
「おい、元貴にばっか聞くなよ。答えるのは俺だ」
静まり返る教室。
若井はにやりと笑って言った。
「俺から告ったし、俺の方が好きが強い。……な、元貴?」
「っっっ……!」
一斉に上がる悲鳴と歓声。
俺は完全に真っ赤になって、机に突っ伏した。
風にあたりたくて一人で屋上に逃げたら、背後から声がした。
「元貴…?」
振り返ると、そこに立っていたのは涼ちゃんだった。
「……やっぱり元貴、無理してるね」
「……っ」
涼ちゃんの瞳は優しくて、
でもどこか切ない色をしていた。
「本当は、学校中に知られるの……怖いでしょ?」
「……わかんない。若井のこと、嫌じゃない。
でも……こんなふうにされるの、
恥ずかしくて……苦しいんだ」
声が震える。
涼ちゃんはふっと微笑んで、俺の頭を優しく撫でた。
「……元貴。もし辛いなら、僕が守るから」
胸の奥がぎゅっと掴まれる。
若井と一緒にいることは嬉しい。
だけど、涼ちゃんの優しさも心を揺らして……。