涼ちゃんの優しい声がまだ耳に残ってた。
肩に触れてくれた温かさも、俺を包んでいた。
けど、ドアが開いた瞬間、空気が一気に変わった。
「……元貴」
低い声。
若井の赤髪が夕陽に照らされて光って見える。
鋭い視線が俺と涼ちゃんの距離を射抜いた。
息が詰まる。
涼ちゃんがすぐに手を離して立ち上がる。
「……僕、邪魔だね。元貴、また後で」
そう言って微笑んだけど、
その笑みの奥に揺れるものを俺は感じ取った。
扉が閉じて、屋上には俺と若井だけ。沈黙が重い。
「……涼ちゃんと、なんで一緒にいた?」
若井が近づく。声が震えてる。
怒りだけじゃない、不安が混じってる。
「ち、違う……俺は……」言葉が出ない。
説明なんてできない。
「違うなら言えよ。俺に――」
若井の目が真剣で、怖くて、でも離れられなくて。
胸がいっぱいになった。もう隠せない。
説明も言い訳もできない。ただ――。
「……俺、若井が好き……!」
声が勝手に出た。涙が一気に溢れて止まらない。
「ずっと、ずっと……!
他のやつと話してるの見ただけで胸が苦しくなって
……噂聞いて怖くて……!
俺、どうしたらいいかわかんなくて!
でも――好きなんだよ!!」
叫んだ瞬間、身体が震えて崩れそうになった。
顔を手で覆って泣きじゃくる俺を、
若井が一気に抱き寄せた。
「……バカ。なんでそんなこと、早く言わねぇんだよ」
耳元で低く囁かれて、涙が止まらない。
若井の腕は強くて、でも優しくて。
「俺も……お前しか見てねぇんだ。元貴」
頬に触れる熱。唇が重なる。
涙の味と、若井の温度が混ざり合って、
頭が真っ白になった。
「俺のもんだって、もう絶対誰にも渡さねぇ」
「……うん……俺も、若井が好き……大好き……」
泣き笑いで言ったら、若井がもう一度抱きしめて、
何度も何度も頭を撫でてくれた。
――俺はもう、隠さない。全部伝わったんだ。