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チッチッと時計の音が響く静かな部屋。
適当にスクロールする動画アプリに流れてきた1本の動画。
某人気関西アイドルのリーダーのセリフが本人の声とともに文字に起こされている。
『なぁ、知ってる?7秒見つめあったら、恋するらしいで。……試す?』
かすかすな声で紡がれる言葉。
隣に座ってスナック菓子を頬張りながらテレビに映されたゲーム画面とにらめっこしている坂田を盗み見る。
相棒でありライバルでもある、俺の好きな人。
俺の視線に気づいた坂田はこっちを見て小首を傾げた。
「なに?」
「ん、なんも」
ふーんと興味なさげに返事をして視線が元に戻される。
『7ビジュ見つめあったら、恋するらしいで』
さっき流れてきた動画のセリフが脳内再生される。
あれ、ほんとなのかな……。
もし、本当なら……。
もう一度坂田を見る。
すると坂田はすぐに視線に気づいたのか、ゆっくりとこっちを見る。
ゆっくりと、焦れったく視線が絡む。
チッ 、 チッ 、 チッ 、……
壁にかけられた時計の秒針が、俺の鼓動に合わせて音を立てながら数を数える。
どれくらい見つめあっていたのだろう。
ふはっと2人の同時に笑い出す。
「なんでこんな見つめあってんだよ俺らw」
「いや、うらさんがなんかすんごい熱い視線送って来たから!w」
「えー?いやいやいやw送ってねぇよw」
「いや、めっちゃ送られてきたね。うらさんがこっち見た瞬間から熱っ!ってなったもん」
「なんだよそれ!w」
坂田が顔を逸らしてコーラを煽る。
「うらさんさぁ、俺のこと好きなやろ?」
からになったコップを持ったまま俺を指さしてニヤリと笑う。
その意地悪めいた笑顔に、顔が熱くなる。
「そ、そんなわけねぇよ……」
今度は俺が顔を逸らした。
そのまま立ち上がろうとすると、腕を引かれてソファーに……いや、坂田の胸に倒れ込む。
「さかた……」
「うらさん……」
ゆっくり坂田の顔が近づいてちゅっと唇が奪われる。
「うらさん、好き」
顔を離した坂田は、俺の頬を撫でてそう言った。
「うらさんは?」
俺の返事を促すそうな優しい問いかけに、胸がキュンと鳴る。
もう、無理だ……
そう思ったら、ずっと閉じ込めていた想いがポロッと口から零れた。
「坂田のこと、好き……」
ふふっと嬉しそうに笑った坂田に優しく押し倒される。
「もっかいキス、していい?」
「……うん」
小さく頷くと、もう一度唇が重なる。
好き好き同士の、優しいキス。
重なった俺らの影は、永遠とも一瞬ともとれる時間の中、離れようとはしない。
陽射しの差し込む静かな部屋で、俺らは静かに恋に落ちた。