※nmmnとなっております。ご本人様とは一切関係ありません。
※CPは桃青です。無理だと感じたら直ぐに閉じてください。読後の苦情は受け付けませんのでご了承ください。
※学パロです。二人は幼なじみです。久しぶりに文を書くのでおかしなところがあると思いますが優しく暖かい目で見守ってください。
ミーンミンミンミンミーン。
茹だるような暑さ、耳を刺激する蝉の声、子どもたちの遊ぶ声。正に夏本番。そんな日に、小テストで赤点を取り補習になった僕と、僕の教え役として巻き込まれたさとみくんは熱気を放つコンクリートの上を歩いていた。
「まじお前…ふざけんなよ…お前の補習がなきゃ今頃クーラー効いた部屋でゲームしてたってのに…」
「…本当にすみませんでした」
これに関しては復習不足だった僕が百パーセント悪いので反撃の言葉も出ない。ただ素直に謝るしかできない僕を見て、さとみくんはぷっ、と吹き出した。人が本気でしょげてるのにそれは酷くないか。
「んーじゃ、あそこの駄菓子屋でアイスキャンディー奢ってくれたら許してやるわ」
「うわ、ここの酒屋駄菓子屋なったんだ。」
「んね、俺もびっくりしたわ。ぼろい酒屋が潰れて何になるかと思ったら駄菓子屋だからな」
「普通コンビニとかやろ…」
「流石田舎ってとこやな」
酒屋の跡を継いだからか、その駄菓子屋は少しでも力を入れれば崩れてしまうんじゃないかと言うほど小さく、脆くそこに佇んでいた。早く入ろう、というさとみくんの催促の声とともに駄菓子屋に足を踏み入れる。この町に駄菓子屋が出来るなんて何年ぶりだろうか。僕らが小学校の頃に駄菓子屋は塾へと変わってしまったから、十年程だろうか。何だか小学校の頃に戻ったように無性にわくわくして、店内をぐるりを見回った。ガム、ドーナツ、グミ、ゼリー…ちらりと横目で見ればさとみくんも少なからずテンションが上がっているようで、竜胆の色をした瞳がいつもより少し輝いている気がした。
「うわ、見てさとみくん!」
「うわ懐かし、売ってるとこ見たの小学校以来だわ」
「みてころん」
「あーーっ!!それ僕が大好きだったやつ!」
懐かしい懐かしいと二人して言いながら、いつの間にか小さなカゴの中にあれやこれやと積み上げられていく駄菓子の山。だって、お財布に優しんだもん。ついつい買いたくなっちゃうよね。
ある程度カゴに詰め終わったあと、さて本題だと駄菓子屋の奥にある冷凍庫を開ける。その瞬間僕たちを包んだ冷気に、涼しいねと二人で笑いながら、半分に割れるアイスキャンディーを一つ手に取りカゴに入れる。すぐ近くのレジにカゴを乗せ、店の奥にいたおばあちゃんに声をかける。会計を済ませて外に出た。これだけ買っても千円行かないのだから、駄菓子とは本当にありがたい存在だ。もう暑さの不快感なんてすっかり抜け落ちていた僕らは、近くの公園のベンチに座り込み、がさがさと袋の中を漁った。
「ん、これさとみくんの分ね」
「せんきゅ、アイス食おアイス」
「わかったって……よいしょ、はい」
「おい半分に折れてないし小さい方俺に渡すなや」
「しょうがないもーん。これ買ったの僕だし」
「お前、これ俺への償いのこと忘れてるな…?」
そう文句を言いながら、なんだかんだ言ってさとみくんはしょうがないなと苦笑して受け取った。彼は基本僕には甘いのだ。今回の補習も、他に友人に放課後帰らないかと誘われていたのに僕を優先して、最後まで面倒を見てくれた。昔からそんな彼だからつい僕も甘えてしまうのだ。これは僕をこんなにしたさとみくんが悪い。
イチゴ味のアイスキャンディーをぺろりと舐めれば、人工的な香料の味が広がる。飴と同じような、イチゴと言い難いそんな味。だけれど何故かとても優しい味がして、僕はなんだか無性に泣きたい気分だった。ふと、アイスキャンディーの色合いが今の空のそれにぴったりで、空にそっと重ねてみる。優しい薄桃をしたアイスキャンディーは、薄桃に染まる空と同化するように融けていく。またそれが寂しくなって、しゃり、とアイスキャンディーを齧った。
「なあころん」
「なに?」
「アイスキャンディーってさ、賞味期限がないらしいね」
「…そうなんだ」
「だからさころん」
──例え俺が離れても、今までの思い出だけは、その気持ちだけは、切れる事無く抱えてて。
ふわりと熱風が頬を撫でる。風に揺れるさとみくんの髪は、空に消えるように融けていて。
「そしたらきっと、またこの空みたいに俺ところんは繋がれるよ」
__高校三年生の夏、じわじわと大好きな人とお別れの時は近づいていて。夏なんか終わるなって、そう思ってたのに。大好きな人からそんなこと言われたら、一生さとみくんの事が大好きなまんまじゃん。
「…ずるいなあ、ほんと」
「俺がずるいのなんて何年も前から知ってるだろ」
「知ってるから困ってるんだよ」
もう一度齧り付いたアイスキャンディーの味は、しょっぱくて甘くて、不思議な味がした。
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