遊園地の目玉アトラクション、お化け屋敷。入口の前で、宮侑はいつもの調子で笑っていた。
「🌸、ちゃんとついて来いや。
お前がビビって泣いても俺は助けたんで?」
挑発的で余裕たっぷり。
彼らしい笑顔だったが——
彼女は気づいていた。
侑がわずかに足を止めたのを。
(……ほんとはちょっと怖いんやろうな)
そう思った瞬間、暗い通路に足を踏み入れた。
──ギィ……ッ。
扉が勝手に閉まる音。
中は静かすぎるほど静か。
侑の肩がピクッと跳ねた。
「……っ、大丈夫やし。ビビってへん。ほんまやし」
小声で言い訳しながらも、
手は自然と🌸の袖をつまむように触れる。
次の瞬間、壁の影から人影がフラッと揺れた。
「うわっ……!? ちょ、待てって!!」
侑が反射的に🌸の腕を掴む。
掴むというより、しがみつく勢い。
「侑、大丈夫だよ」
🌸が笑えば、
「笑うな。……俺を置いてくなよ」
強気なはずなのに、声だけは少し弱くなる。
普段なら絶対見せない表情だった。
さらに奥へ進むと、突然足元から風が吹き上がる。
「ひ……っ! なんで下から来んねん……!」
侑は完全に彼女の後ろへ回り、
背中に隠れながら歩き出した。
「侑、後ろにいるの珍しいね」
「うるさい。お前は前歩け。
俺の……見えるとこにおれへんとイヤやねん」
独占欲と怖さが混ざった、妙に素直な本音。
彼女はくすっと笑った。
出口の光が見え始めると、侑はようやく顔を上げる。
「……はぁ。クリア。
さっきのこと全部忘れろよ。
俺が怖がってたんちゃう。油断してただけ」
照れくさくて、強がるように鼻を鳴らす。
けれど外に出ると、彼はいつもの調子で
🌸の頭をポンと撫でた。
「外は安全や。ほら、こっち来い。
帰りは俺が前歩いたる」
「さっきは後ろだったけど?」
「……二度と言うな。
ほんまに置いて行ったら怒るからな」
真っ赤になりながら、
でもしっかり彼女の手を引く侑だった。
コメント
1件
侑可愛すぎんだろぉッ😘