テラーノベル
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五人で帰る道は、不思議なくらい自然だった。
まるで、昨日までずっと一緒にいたみたいに。
「ねえ仁ちゃん」
舜太が振り返る。
「ん?」
「前世でも、こんな感じやった?」
「……うん」
「じゃあ俺、今世でも変わってへんな」
そう言って笑う舜太に、仁人も小さく笑った。
「うん。全然変わってない」
「なんやそれ」
舜太が笑う。 その隣で太智も笑っている。 柔太朗は二人を見ながら呆れたようにため息をつき、勇斗は少し後ろから五人の姿を眺めていた。
――五人。
その光景が、どうしようもなく嬉しかった。 けれど、 仁人だけは、時々足を止めていた。 四人には見えないように。
胸の奥にある不安を、押し込めるように。
*
その日の夜、 勇斗は眠れなかった。 ベッドの上で何度も寝返りを打つ。 頭から離れない。 仁人の言葉。
――「俺だけが、みんなを失うんだ」
そして、 最後の日の記憶。 何かが足りない。 何か、大切なことを忘れている。
「……なんなんだよ」
勇斗は目を閉じた。 すると、 また、あの雨の景色が浮かんだ。
五人で立っている。 仁人が泣いている。 そして、自分が仁人の肩を掴んでいる。
『絶対に忘れないから』
自分がそう言っている。
『来世でも、絶対に見つける』
――そこで、映像が途切れた。
「……っ」
勇斗は目を開けた。 心臓が速くなっている。
「今の……」
初めて見る記憶だった。 いや、 正確には。
忘れていた記憶。
*
翌朝、 四人は学校で集まった。
「昨日、変な夢見た」
柔太朗が言った。
「俺も」
勇斗が答える。 舜太が顔を上げた。
「……もしかして、最後の日のこと?」
「うん」
四人は顔を見合わせた。 それぞれが、少しずつ思い出していた。 でも、 全員が同じところで記憶を失っている。 仁人が「もう会わない」と言った、その直前。
「……誰か、思い出した?」
太智が聞く。
「まだ」
柔太朗が首を振る。
「でも、何かあったのは確か」
そのとき。
「何してるの?」
背後から声がした。 四人が振り返る。 仁人だった。
「……仁人」
「そんな顔して、どうしたの?」
勇斗は少し迷ってから聞いた。
「最後の日のこと、覚えてる?」
仁人の表情が、一瞬で変わった。
「……」
ほんの一瞬、 怯えたような顔。 でも、すぐに笑った。
「覚えてないよ」
「嘘」
勇斗が言った。
「……」
「昨日、俺たちが思い出したことを話したら、顔が変わった」
仁人は目を逸らした。
「気のせいだよ」
「仁人」
「本当に覚えてない」
その声は、今まで聞いたことがないくらい冷たかった。 四人が黙る。 仁人はそのまま教室を出ていった。
「……やっぱり、何か隠してる」
柔太朗が呟いた。
「うん」
勇斗は頷く。
「でも、無理やり聞くのは違うと思う」
舜太が窓の外を見る。
「せやな」
そして、小さく呟いた。
「俺らが思い出すしかないんやろな」
*
その日の放課後、 仁人は一人で、昔の公園に来ていた。 誰もいない。 ベンチに座る。 目を閉じる。 すると。 あの日の声が聞こえた 。
『仁人、もういいよ』
『……え?』
『俺たちのこと、忘れて』
仁人の目が開く。
「……違う」
あれは――
自分が言った言葉じゃない。誰 かが、自分に言った言葉だった。
「……誰?」
記憶の中で、四人が泣いている。 でも、 その四人のうち、一人だけ。 顔が見えない。 仁人は頭を抱えた。
「思い出したくない……」
それでも、記憶は止まらない。 最後に聞こえた声。
『次の人生では――』
そこで、 仁人は目を開けた。
「……っ」
息が苦しい。 思い出してしまった。 あの日。 四人は、仁人に別れを告げた。 でも、 その理由は――
まだ思い出せない。 仁人は空を見上げた。
「……お願いだから」
誰に向けるでもなく呟く。
「もう、思い出さないで」
その頃。 四人は知らなかった。 仁人が恐れているのは、「自分が四人を失うこと」だけではない。
――四人が、自分を失った理由。
それこそが。 この輪廻を始めた、最初の約束だった。
コメント
1件
はる。です!第11話読了したわ〜。 今回、勇斗が雨の日の記憶の断片を思い出して「絶対に忘れないから」「来世でも絶対に見つける」って言ってたシーン、めちゃくちゃグッときた…。あの台詞が輪廻の鍵なんだろうな。 仁人が「覚えてないよ」って笑った直後の冷たい声、あれは完全にガード上げてるやつだ。それでいて公園で「思い出したくない」って震えてるギャップが切ない。四人が仁人に別れを告げた理由がまだ見えないまま、ラストの「輪廻を始めた最初の約束」って一文で終わるの、構成上手すぎるわ。 次が気になって仕方ない🔥 続きめっちゃ楽しみにしてる!
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