『こんにちは。春高バレーの予選っていつですか?返信待ってます。』
我ながら簡素な文を、彼と共通の知り合い・岩泉一君に送った。
携帯を閉じて、早く返信が来ないかなと壁にかけられた時計を眺めながらベッドに寝っ転がる。
カチ…カチ…と規則的に鳴る秒針の音に耳を傾けながら目を閉じた。
ピロンという軽快な音で目が覚めた。
そうか、私いつの間にか寝てたのか…。
携帯を手繰り寄せながら上半身を起こす。
携帯を開くと、岩泉君からお返事が来ていた。
『〇月✕日〜△日まで』
と、これもまた簡素な文で返ってきた。
お礼の文を送ると、またそのまま後ろに倒れ、また目を閉じた。
それから4週間後。
今日は、春高バレー予選日だ。
丁度学校も連休の為、観に行くことができる。
徹と付き合ってた頃なら、最前席で頑張れ〜!と全力で応援していたのだろうが、生憎もう私は元カノなので大声で応援しようとかは思わない。
彼等にバレないように最後列の端っこの席で頬ずえをつきながら試合が始まるのを待つ。
待つこと十数分。やっと公式練習が終わったらしく、選手達がお互いにお辞儀し合っていた。
サーブ権は最初、相手チームからだった。
主審のピーッという笛の音と共にサーブを打つ相手。
それを国見君がカットし、ボールはセッター…徹の元へと返る。
徹は上がったボールを丁寧にレフトへセットすると、そのボールを岩泉君が打った。
岩泉君の打ったボールはラインギリギリの所に落ち、あっという間に一点先取してしまった。
やっぱり凄いなと関心しながら観る。
恐らく、今1番目立っているのは岩泉君だろうけれど、私は徹に関心していた。
私も、今は引退したけれど、一応女子バレー部の正セッターをしていた。
これは、もしかしたら個人によって違うのかもしれないけど、あんな高いボールはトスしにくい。
あげられたとしても、少しはズレてしまう。
でも徹のボールは1mmの狂いもなく岩泉君にとって最高の位置へと飛んで行った。
春高…私も行きたかったな、と熾烈なラリーを続けている試合を見つめながらふと思う。
もしも、あんなのが発覚しなければ、今頃春高バレーの予選の地に立っていたかもしれないのに…何より、まだ徹と付き合っていたかもしれないのに。
うだうだと考えていると、いつの間にか試合が終わっていて、選手達が観客にお辞儀をしているところだった。
無意識に徹を見つめながら拍手をしていると、顔をあげた徹と目が合った。
これでもかという程に目を見開きながら棒立ちになっている。
その後、監督に一言なにか言ってから会場を飛び出して行った。多分、今からこっちに来るんだろう。
会うのだけは絶対に避けたい。ので、私も観客席から出た。
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コメント
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続き楽しみにしてます!頑張ってください!