リクは落下しながら必死に足場を探すも、滑る石に掴まれず水面へと急速に近づいていく。冷たい水が肺に迫り、息が苦しくなる寸前だった。
その時、アイビーが下に降りてきて、
川の崖を必死に降りながらリクに手を伸ばす。
リクの腕を掴むと、信じられない力で片手だけでリクを引き上げ始めた。
「こんなとこで死なせるわけにはいかない!」
リクは震える声で必死に応える。
「アイビー、そんな無理しなくていい!」
しかし、アイビーは無表情に言う。
「無理なんてしない、ただ全力で助けるだけ」
水の流れに逆らい、アイビーは100メートル地点までリクを片手で引き上げる。
汗と水でぬれた髪が顔に張り付き、呼吸も荒い。
リクは息を整えながら、アイビーの腕にしっかりと掴まったまま呟く。
「ありがとう…お前がいてくれて良かった」
二人は無事に川岸へ辿り着き、短い休憩を取る。
その瞬間、リクの胸に新たな覚悟が芽生えていくのだった。
リクは息を整えながら、ふとアイビーの顔を見つめた。
「そういえば……お前、いくつなんだ?」
アイビーは少し意外そうな顔をしてから、にっこりと笑う。
「12歳だよ。まだまだ子供だけど、これでも結構強いんだから」
リクは驚きの声を漏らす。
「12歳!?全然そんな風に見えないし、強すぎるよ……」
アイビーは得意げに胸を張って、
「そう言ってもらえると嬉しいな。まだまだ頑張るよ」
リクは照れくさそうに目をそらしながらも、心の中で確かな安心感を感じていた。
しばらく間があってから、アイビーが小首をかしげて言う。
「ねえ、リクは何歳なの?」
リクは少し照れて視線を逸らしつつも、答える。
「15歳だよ。小さいけど、まあ…天才って言われてる」
アイビーは笑いながら、
「へぇ、そうなんだ。天才同士、これからよろしくね!」
リクはその言葉に微笑み返し、二人の距離は少しだけ縮まったように感じた。
「よし、少し休んだらまた登ろう」リクは自分に言い聞かせるように呟いた。
アイビーはリクの様子を見てにっこりと笑い、
「無理しないでね。でも、私がついてるから安心して!」
二人は再び無限上流へと挑むため、ゆっくりと登り始めた。
ツタや岩を掴み、息を整えながら慎重に足を進める。
リクの目には、これまで見たことのない奇妙な景色が広がっている。
「まだまだ終わらせないぞ……」
リクは決意を新たにし、アイビーと共に上流を目指した。
リクは必死に125メートル地点の岩肌にしがみついていた。
身体中が疲労で震え、腕の力も限界に近い。
ふと上を見上げると、150メートル地点のはずの休憩スポットが目に入らなかった。
「あれ……?150メートルの休憩場が見つからない……?」
アイビーも辺りを見回し、不安げに呟く。
「本当にここからさらに上に休憩できる場所があるはずだけど……どこにあるの?」
リクはしがみついたまま息を整え、視線を彷徨わせた。
「まさか、ここから先は休憩なしで登らなきゃいけないのか……?」
その瞬間、背後から微かな音が聞こえ、二人は警戒を強めた。
リクとアイビーが休憩場所を探していると、ふと背後から「バサバサ…バサバサ…」と妙な音が何度も響いてきた。
その音はまるで、大きな羽が空気を切るような、不気味な音だった。
リクは反射的に振り返り、警戒の構えをとる。
「今の音…何だ?まるで羽音みたいだけど……こんな場所に飛ぶ生き物なんているのか?」
アイビーも緊張しながら周囲を見渡す。
「ここは普通の森じゃないからな……何が潜んでいるかわからない。」
二人の背筋に冷たいものが走り、さらに音は近づいてくる。
「……来るぞ、気をつけろ!」
背後の闇から、突然バサバサと音を立てて巨大な鳥が姿を現した。
両翼を大きく広げると、その翼幅は約6メートルにも及び、まるで巨大なワシのようだった。
それが数え切れないほど、20体ほどもリクとアイビーを取り囲むように降り立つ。
リクは息を呑み、目を見開いた。
「なんだ…こいつら……めちゃくちゃデカい……!」
アイビーも警戒しながら鉄パイプを握り直す。
「一気に20体……どうやって突破するんだよ、これ……」
鳥たちは低く唸るような声を上げ、獲物を狙う猛禽の鋭い目で二人をじっと見つめていた。
「動くな……奴らが攻撃のタイミングを計っている……」
リクは心の中で冷静さを保ち、状況を分析し始めた。
鳥たちは一斉に羽を広げ、鋭い爪を振りかざして襲いかかってきた。
リクはとっさにアイビーを庇い、鉄パイプを握りしめた。
「来るぞ!」
アイビーもすぐに身構え、二人は背中合わせになって応戦する。
リクは鳥の動きを冷静に観察し、隙を狙って一本一本鉄パイプを振るう。
アイビーは素早い動きで鳥の爪やくちばしをかわしつつ、リクのサポートに回った。
だが数が多く、敵の猛攻は容赦なかった。
羽ばたきが渦巻き、砂塵が舞い上がる中、リクは叫んだ。
「アイビー、離れすぎるな!」
アイビーも応える。
「わかってる!でも、この数は……!」
二人は必死の防戦を続けながら、どう突破するか思案を巡らせていた。
リクは必死に岩肌にしがみつきながらも、ふと上空を見上げた。巨大な鳥たちがまだ旋回している。
「アイビー、あの鳥たちにしがみついて、200メートルまで一気に行こう。」
アイビーは驚きながらも「わかった!」と頷く。
リクとアイビーは手足で力強く鳥の羽根に掴まり、風を切って空中を駆け抜ける。
鳥たちは荒々しく羽ばたきながらも、二人を遠くの安全地帯まで運んでくれた。
鳥の背にしっかりと体を固定しながら、リクは心の中で呟いた。
「これで一気に先へ進める…でも気を抜けないな。」
やがて200メートル地点の崖が見え、鳥たちはゆっくりと降下を始める。
無事に着地すると、二人はほっと息をついた。