「へっ、マグマアスレなら慣れたもんだぜ」
そう言ってアスレ得意なレッドが前に出ようとする。しかしブラックが止める。
「待ってください、Mr.レッド。ここまで殺意の高いトラップばかりだったのに急にこのようにありふれたトラップになると思います?」
「いや、マグマでも落ちれば即死のかなり危険なトラップだぜ?」
まるでマグマアスレが危険でないかのようなブラックの物言いにブルーがツッコミを入れる。銀さんが居ないと次いで常識人なブルーがツッコミに回るらしい。
「ですが、きっと向こうもこちらが普段からマグマアスレの特訓をしていることなど周知済みでしょう。ですからやはり普通のマグマアスレでない気が……」
そこまで行った時
カチッ
その言葉を承認したかのように何かのスイッチが入ったような音がした。何が起きるのかと全員が身構える。
ゴゴゴ……
何か大きなものが作動するような重い音と共に地響きが起き地面が強く揺れる。全員壁などに捕まって揺れをやり過ごす。揺れが治まった時には目の前のマグマアスレチックが更に鬼畜になっていた。普段の勢いでやればクリアするまでに一人十回は死にそうだ。
「……(呆)」
(悪趣味にも程があります……)
ブラックは頭を抱えるしかなかった。チラリとレドブル兄弟の方を見れば二人とも顔を引き攣らせていた。いくらアスレが得意な二人と言えどこれは流石に予想外らしい。
「工業用MODじゃねえか……」
「一ミリでもミスったら即死だな……」
しばらくそんな事を呟いて二人同時に
「「前言撤回。絶対無理」」
と言ったので思わず吹き出してしまった。しかしいつまでもウジウジしてても仕方ない。ブラックは腹を括って
「仕方ありません。やるしか無いでしょう」
と言って少し考えた後、天井に向かって杭のようなものを投げた。杭は天井に深く突き刺さり引っ張ったくらいじゃびくともしないくらい固く固定された。そしてその一端からはロープが繋がれていた。
「これを体に括り付けていればロープ自体が切られない限り落ちても死ぬ事は無いでしょう」
「いや、切れるだろ……アレで」
指した先には高速回転する電動鋸が。もしかしたらロープの中に硬い素材を使っているのかもしれないが、あの鋸で切れないのは岩盤か黒曜石くらいなものだろう。全員が顔を見合わせた。そして個性豊かな全員の心が珍しく一つになった。
《無理ゲーじゃん……》
その頃。
「……ゔっ……痛ッ……痛いッ……」
トアールは頭を抑えて苦しんでいた。リデルは先程出て行ってしまい誰も居ないのが救いだろうか。いや、誰も居ないからまずいのだろうか。しかしトアールにはそんな事を考える余裕も無かった。そんなことを考える事が出来ないくらいに頭が痛かったのだ。
「……なんで……なんでッ……」
トアールの“濃緑になった瞳”から涙がこぼれ落ちた。
ゴトッ
トアールが見ていた映像版が床に落ちて電源が切れる。電源が切れる直前まで写っていたのは……
____すまないスクールメンバーの
トラップに絶望した顔だった____
コメント
1件
えぇ…流石に鬼畜すぎて笑った アスレチックが得意な2人も諦めかけてて、ブラックまで諦めかけてるんだよ?無理ゲーじゃん…でも頑張ってもらいたい!