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主要道路である街道どうしは大陸の各地で交わっている。しかしながら、その交差点までは膨大な距離があることが多く、自然途中で街道どうしをつなぐためだけの小さな道路が必要とされ、実際に整備される。これが間道である。

間道を使うことで目的地までの距離は大幅に省略できることが多いが、その分宿場街となるようなところはほとんど整備されておらず、それどころか間道それ自体が、獣道よりはましな程度、という場合も多い。

加えて、各国の街道警備は間道にまで人手が回らない。

それでも、旅程を短縮できるという大きなメリットのために、一定量の通行人は必ずいる。

自然、それを狙う山賊が発生し、間道は危険な地帯と化していることが多い。

唐突にアリシアが狙いをつけたのも、つまりはそういう理由だった。常日頃は安全な街道を行き来し、しかし何らかの理由で間道を通ることを選択する人は減らない。

中途半端に旅慣れているという自信が、慢心にすり替わるために。

しばらく間道を道なりに進む。はじめ明るく、広かった道は次第に細く、鬱蒼とした木々が生い茂る山道へと入っていく。

そうして、昼にも関わらず薄暗くなってきたあたりで、騒ぎが聞こえてきた。

怒声と、それから金属同士が響く音が。


「会長、もう始まっています」


フリッツがいち早く気づき、アリシアに報告する。ちなみに彼女は実際にこの小さなキャラバンの会長であり、そう呼ばないと機嫌が悪くなるために、愛称は「会長」固定である。

報告を受けて、アリシアが端的に命令する。


「ビット」


呼ばれたビットは振り返りもせずに頷いて、馬車のスピードを上げた。

加速する馬車の上でフリッツは立ち上がった。風で髪が揺れ、わずかに視界を遮る。

それを手で払うと、前方の様子がはっきりと見えてきた。

山賊は十人程度。

それに対して、鎧兜に身を包んだ騎士らしき人物が、一人で応戦していた。

フリッツの目から見ると、騎士は善戦しているものの、押されていた。

多人数を相手するのに慣れていないのか、同時に二人程度しか相手をできず、その隙に横から浅い傷を負う。

戦闘が始まってからそれほどの時間が経っているわけではないようだったが、その結末はそう遠くない。


「フリッツ」

「はい」


アリシアも同じ判断をしたらしく、わずかの厳しさ――そしてわずかの下心――をわかりやすく乗せた声が、フリッツにかけられた。

反対する理由も疑問もなく、フリッツは短く頷くと、速度を抑えに入った馬車から、前方へと跳んだ。

山賊達が馬車の音に気づいて振り向く。そして、視界に飛び込んでくるフリッツの姿に眼を見開くのがわかった。

その動揺を見逃すつもりもなく、フリッツは空中で器用に進行方向を制御して、まず一人の肩を踏みつけた。

馬車の速度を乗せたその一撃に、山賊は白目をむいて崩れ落ちる。

その反動を利用して、フリッツは再び高く跳躍した。一気に囲みを抜け、騎士の前にいる山賊に再び踏みつけを見舞う。

今度はそのまま地面に着地し、隣にいた山賊が振り向くよりも速く、背中に拳を叩きこんだ。


「何だてめえ!」


ようやく山賊の怒号が響くが、遅い。

山賊が剣をフリッツに向けた時には、フリッツの身体は山賊の間合いの内側にあった。

拳で叩いたとは思えない音が響き、山賊はまたも一撃で昏倒する。

騎士は、呆然とした様子でフリッツを見つめた。


「あ、あなたは……?」


その声にフリッツは小さな疑問を覚えたが、確認する暇は流石にない。

怒声を上げながら、同時に襲いかかってくる山賊に対し、まず相手の攻撃を避ける。

そして、二撃目に入る前のわずかな間を埋めるように、フリッツの拳が入る。


「ば、化け物……」

「失礼な」


山賊の誰かが呟いた言葉に、フリッツが憮然として返すが、何の笑いも起こらない。


「ひ、引き上げだ!」

「それは構わないわ。案内しなさい」


山賊の退却の号令に答えたのは、若い女の声だった。


「?」


山賊達の背後に立っていたのは、アリシアだった。暗い中でも輝く金髪の下にある青い瞳は、いまや隠すことのない嬉しさで満ちていた。

そしてより、具体的に要求する。


「案内しなさい。お宝のところに」


山賊たちは、ふざけるな! と怒鳴りたそうにしていたが――


「よろしく」


フリッツにそう言われ、そろってがっくりと肩を落とした。

アリシアキャラバン漫遊記

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