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「シーニャはこう見えて十七だゾ。ワータイガーの中でも若い、若いゾ! アック、アックは?」

「おれは十九……」


ワータイガーがどれくらい長命なのか――というか、獣と比べられてもな。


「人間の数字に優位性なんて無いのだゾ。シーニャ、弱いアックを守る。それだけだゾ!」


迷い森にいた時までは魔石を持つおれを魔物と呼んで恐れていた。それなのに今では立場が逆転して、何故か弱い人間としてシーニャに守られている。確かに基本的な力は獣人より劣るかもしれない。そうだとしても彼女の強さは一体どれほどのものなのか。おれのことはともかく、問題はフィーサとの相性だ。


「わらわのイスティさまが獣ごときに負けるはずがないもん!!」

「何を言っているのだ?」

「洞窟で足を引っ張ったら、わらわがお前を斬るの! イスティさまの邪魔をしないで欲しいの!!」

「たかが剣ごときにシーニャが負けるはずがないのだ!」


強力なワータイガーと宝剣のはずなのに、小さな女の子たちが騒いでいるようにしか見えない。


「アック、ここ入り口! ここから――ウゥ?」

「ほらほらやっぱり! イスティさま、獣の言うことは信じたら駄目なの! 洞窟なんて無いの」

「ミスリルもどきが何を言うのだ!! 確かにここが入り口なのだ!」


シーニャの案内どおり山の麓《ふもと》付近まで来た。


そして彼女が案内してくれた所を見たが――。


「ここに洞穴が……? しかしこれは……」

「本当なのだ!! 穴があったのだ! 岩で塞がれていても本当なのだ!!」


洞窟《ダンジョン》の入り口と思しき場所には、中から塞がれたような大きな岩があった。しかし見事にすっぽりと挟まっていてどうにもなりそうにない。


しかも外側からではなく、洞窟側からということは何者かが意図的にやったと思われる。


「ただの岩に付き合う暇なんてイスティさまには無いの! イスティさま、他を探しに――」

「な、何をするのだ?」


シーニャに対し、おれに力があることを見せるには丁度いい。ここは拳で粉砕してしまおう。


「――手っ取り早い解決方法がある。二人とも、今すぐそこから離れるんだ!」

「ウゥッ!?」

「イ、イスティさま!?」


ここへはシーニャの鼻のおかげで来られた場所だ。さすがに岩一つだけですごすごと帰るわけにもいかない。


力を込め、岩に向けて思いきり拳を振り下ろす。


「フニャッ? 何も起こらない……ッ!? ウ、ウウウッ!?」

「こ、これは、あの小娘の力と同じ~!?」


ズガッ、と鈍い音をさせた直後のこと。岩の中心部から線状の亀裂が生じ始め、周りをも巻き込むような震動が起こった。そこから破片が飛び散る心配もなく、あっという間に岩は粉々に砕けた。


ルティの特製ドリンクが効いているにしても想像以上の威力だ。岩を粉砕しただけだが、相当強くなったと勘違いしそうになる。もっとも、ルティとの実力差は不明のままだけど。


「ウ、ウニャ……」

「はわぁぁ~」


岩を粉砕したおれの力に驚いているのか、シーニャとフィーサは驚いて近寄って来ない。それなら今のうちに魔石の状態を確かめておくか。


腰袋に入れていた複数の魔石に触れる。すると一つだけ微かに熱を帯びている魔石があるような、そんな感触があった。


「おりゃっ!」


熱を帯びた魔石は覚醒時に感じた時と似ている。これをとっさに握りしめ、地面に投げつけた。


「……?」


投げたのはいいとして何だか様子がおかしいな。


「変だな。確かに熱を帯びているのにガチャが出来ていないなんて」


首をかしげながらフィーサたちの方に目をやると、何やら違う方を見て騒いでいる。


「マスタァ!! 魔物魔物、大きな魔物~!!」

「ウーウウウー!! アック、でかいでかい魔物!! シーニャでもムリ、ムリなのだ~!」


魔物がどうしたんだ?


ギャアギャアと騒ぎながら必死になって魔石の方を指しているようだが。


もしや粉砕した魔石から何か出たかな。


そう思って見てみるとそこにいたのは――


「グルルルルゥゥ……!!!」


「へっ?」


おおよそ人間では無さそうな歯軋《はぎし》りが聞こえる。さらには地面にポタポタと垂れるよだれのような音が。


これは――嫌な予感しかしない。


ワータイガーであるはずのシーニャの怯えようが異様さを物語っている。魔石があるはずの場所にいたのは、見上げるほど大きなトカゲだった。


本来ガチャをした直後に見える魔法文字《ルーン》からは別の名前が示されている。


「タ……ルボ……サウルス?」


何でこんなもんがいるんだ?


魔石そのものなのか、おれをめがけて向かって来ている。


魔石相手で攻撃が通じるか分からないが拳で何とかするしか?

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