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「大変なのだ大変なのだー!! 弱いアックが大変なのだー!」
「イスティさまなら大丈夫だもん! 獣は大人しく隠れていればいいの!!」
「ウー!!」
弱いと思っているおれのことを心配してか、シーニャが慌てふためいている。これは誤解を解いて見直しさせるいい機会だ。
「ギリュゥゥーー!!」
大きいトカゲは空を見上げるくらいでかく、そのうえ奇声を発している。見た目はワイバーンよりやや大きいものの、オークとなったグルートよりは劣っている感じだ。
シーニャは森から出たことが無いワータイガー。おれも彼女のように外を見たことが無ければ、同じように恐れおののいていたかもしれない。とはいえ、大型クラスの魔物と戦ったことがある以上大きいだけで恐れることは消えた。
魔物の正体が魔石と分かっているし、すぐに倒せそうな予感がする。それに言葉も通じそうにないしさっさと倒すか。
「フィーサ! シーニャを守り、その場を動くんじゃないぞ!!」
「かしこまりましたの! イスティさま」
「ウニャッ!?」
岩を粉砕したら恐竜に変化した――ということは、こいつに対してやることはこれしかない。
「うおらぁっ!!」
ルティが攻撃する時のを真似ようとしたが、それはやめて何となく気合いの声を上げる。トカゲの横っ面めがけ、力を込めた拳を喰らわせてやった。
「ガアァッ――グゴォゥッッ!?」
効いたかは不明だが見事にクリーンヒット。
「ガォッグガアァァッァ」
トカゲのでかい口から鋭利な歯が見える。鋭利な歯を見ただけだが、襲い掛かる前の不審さが奴から感じ取れた。おれには危険察知スキルは無いが、スキルを身に着けた心当たりがある。
それはグルートオーク――あのSランクな奴と戦ったおかげかもしれない。
しばらくして、一撃必殺の拳が効いたのかトカゲは倒れた。
「ウニャ~?」
その隙にシーニャの方を見てみると、彼女は猫族のように首を何度も傾けていた。シーニャたちを見て気が緩んだ瞬間だった。
「な、何!?」
さっきまで格闘していたトカゲの姿が跡形も無くなっていることに気付く。形跡がまるで無い――というより、魔石そのものが残っているだけだった。
「もしかしてドロップ扱いなのか?」
魔物変化する魔石だとしても理解が追い付かない。
「イスティさま~!」
「ウニャー!! アック、魔物どこなのだ? どこに行ったのだ?」
脅威が消え、フィーサとシーニャが駆け寄って来た。
とりあえず魔石を回収……と。魔石を拾うと熱さは感じられずすっかりと冷え切っていたが、魔法文字が浮かび上がる。
【特化スキル ”力” Lv.∞】
【アック・イスティ タルボクラッシャー スキルLv.2】
【Uレア 広域スキャン、嗅ぎつけ 習得】
「おぉ? 初めてだな……!」
魔石がおれのことをようやく認めたということなのだろうか?
力だけに特化したようだが見えたところでって感じだな。しかしシーニャのスキルが使えるようになったのはでかい。
「イスティさまっ! 魔物はどこ行ったの?」
「ああ、倒したよ。もう大丈夫……って、シーニャは?」
フィーサはあまり驚いていないが、シーニャの姿が見えない。
「わらわは信じていたの。だけれど、獣はガタガタ震えていたの。魔物がいなくなった途端、そこで腰を砕けて立ち上がれなくなっているの~」
おれも初めてだったがシーニャには衝撃的だったか。
「初めて見たんだ。無理もないよな」
「わらわは見慣れた魔物だったけど、獣には恐怖だったと思うの~」
見慣れていたなら何か出来たような気もするが……黙っておく。
シーニャの居場所を見回して探すと、岩を粉砕した辺りの山肌の所にいた。どうやら腰を抜かして動けなくなっているらしい。弱いと思っていたおれに助けられたのもあるとはいえ、随分と弱々しい姿をしている。
「フニャ……アック、弱くない。シーニャ、弱い……ウニャ」
すっかり落ち込んでいるな。虎耳も垂れているし、ここは元気づけておくか。
「シーニャ。おれが怖くなったか?」
「こ、怖くないのだ。ウニャ……ついて行ってもいい? 行きたいのだ」
「一緒について来てくれるかい?」
「行くのだ!! シーニャ、アックの眷属獣となるのだ! ウニャ!!」
眷属とは大げさだな。でもこの子のスキルを習得したということはそういうことになるのか。それにしても随分と可愛くなったような気が。
「よし、フィーサは鞘の中に戻ってくれ! 今から洞窟の中に進む」
「かしこまりましたなの!」
「シーニャ、アックから離れないのだ。役に立つのだ! ウニャ!!」
レア確定覚醒だけでなく魔石自体も覚醒。レアガチャをするのにスキルが関係していることも何となく分かってきた。
まだまだ色々起きそうだけど、とにかく町に向かわないと。