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14 - 第14話 宣戦布告したつもりだったけどできてないかもしれない

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2022年08月18日

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葵が、アコギ1本で歌ってる。路上で。昼くらいはみんな仕事でここ通らないんじゃないかな。稼ぐために、やってるんじゃない。久しぶりに聴いた葵の歌声はまっすぐで心底音楽が楽しくて音楽が好きだって感じだ。

「あ?」

 目を閉じて演奏していた葵が俺に気づいて目を開けた。開けたと同時に出た声はなんかマヌケで少し笑えてきた。

「去れよ、(自主規制)っ」

 文字起こしできないような、汚いスラング。お粗末な頭の割にそんなキレッキレのスラングが出てきたことに葵の脳内スラング辞典を褒め称えた。言葉の内容は、だらしない、みだらな。そういう人を批判するような内容のスラング。まあ、何も、間違っちゃいないだろ。最初はお金のためだったとはいえ、このあいだは求めてこのバイトをやった。とにかくなんにも考えなくていいんだ、じゃあ、すき。こんな最低なヤツを否定するのもわかる。純粋に音楽が大好きな葵のことなら、なおさら。もう関わりたくないって思うだろう。だけどさ、

「…さっきの曲なら。」

「去れっつってんだよ」

「ちょっと早かったかなあ。葵昔っから走る癖あるもんね……じゃ」

 少し、ムカついたんだろう。よろこんでやってないよこんなこと。こういう行為が好き?違うそうじゃない。俺はただ、… そういう弁解が無駄だってこともわかってる。今まで葵の言ってることを正論と疑わなかった。正論だ。だけど俺だって言いたいことくらいあるし、喧嘩売られてるってんなら買ってやる。…そんな気持ちにならなくもない、ただ一瞬の気まぐれ。俺ひとり間違ってる。こんなこと、しちゃいけない、やったことはもう戻らないんだ。俺1人音楽を辞めれば、済む話なんだ。適当に上手そうなベーシストを雇えば、歌はあいつらで何とかなる。俺の代役はいくらだっている。俺が間違ってるってわかってるよ。それでもちょっとだけムカついたのかも。葵は一言多いよ。

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