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どうしてワインなんかが勧められてるのかが、まるで理解できなかった。
半ば無理やりとも言える状況で、この部屋まで連れて来られたのに、それがワインを飲むためだけだったなんて、彼の今までの言動を考えても、到底納得ができるわけもなかった。
それとも、何か他の意味合いでもあるんだろうか……。
……もしかしたら、また、このワインの中に薬でも入れてあって……。
そんな風に思ったら、簡単に口を付けることもままならなかった。
目の前のこの男が、何事もなくただ私とワインを飲もうと思うなど……あるはずがないようにも感じられた。
政宗医師は、私のはす向かいに座り、悠然とワインを口にしながら、
時折り、「もっと、いかがですか?」と、こちらのグラスにワインを注ぐ以外は、何も仕掛けるようなことはなかった。
その様子に、逆に不審感ばかりがいたずらに増すようで、
「……どういうつもりなんですか?」
何杯目かのワインをごくっと飲み込んで、アルコールの力の後押しで、そう意を決して問いかけてみた。
「……何が、ですか?」
政宗医師が相変わらずはぐらかすようにも微笑い、掛けているメガネを指の先でツイと押し上げる。
「こんなことのために、私を部屋まで連れてきたんじゃないでしょう?」
その落ち着き払った素振りに嫌悪感を覚えつつ、さらに問い詰めると、
「こんなこと……?」
と、今度はわざとらしく首を傾げて見せた。