「…何で呼び出した。」
グルが吉木に聞くと、吉木はニコニコと笑った。
「いやぁ〜君たちと面と向かって話したかったんだ。」
「グルも暇だろう?」
防止を深く被り、チラリとクルルの方を見た。
警戒したのか、クルルがポケットの拳銃を握ると
吉木は「失敬…」と引き下がる。
「まぁ、良いだろう。」
吉木の様子を見たグルが答えた。
「ただし、目立たない飲食店でな。」
「…是非。いいとも。」
「ほら、坊っちゃんも来なよ。」
サーフィーたちのことを差して言うと
クスクス笑いながら死角に入った。
しばらく城からして影になる暗いところを通ると
小さな飲食店に入った。人は一人、店員が居るだけだ。
「それで、杉山事件の犯人はお前だな?」
グルが突拍子もなく言うと、クルルが続ける。
「情報を集めて推理したんだぞ。お前以外考えられない。」
「それに、見るからに怪しい。色白でもないし髪色も黒。
なのに、なんで目の色だけ青色なんだ?」
これに吉木は焦っていなかった。むしろ冷静で、
クルルの目を真っ直ぐに見ながら答えてみせた。
「あぁ。僕は事件の犯人だよ。ちなみに逃げたいから
外人のフリをするため目は手術したんだ。」
「手術はグルがしてくれた。」
「?」
クルルとサーフィーが同時にグルの方を振り向くと
特にグルは平然とした顔で言う。
「俺がやったな。
目を怪我していたから片目上げただけだ。」
「上げた?」
「…俺も英人だ。目をやったまでだ。
もう片方は日本人から移植した。
その後にカラーコンタクトを入れたものだから
コイツもそうだと思うぞ。」
グルはそう言った後に、コンタクトを取り
外人特有の青い瞳を見せた。
「…へぇ。コンタクトしてたんだ。
両目移植してたのかと思ったよ。」
「僕は仕事あるからあと少しで行くけど
ちゃんとした本題に入ろうか。」
「数年前に、僕の彼女が捕まったんだよ。
アイツ、連続殺人犯だし薬でラリってたんだけど
良いやつだったんだ。」
「とても悲しかったのと杉山に対して怒りが湧いた。
当時、イギリスに居るグルに相談したんだけれども
罪は法で裁かれるから仕方ないと言われた。
僕も今考えるとそうだと思うよ。」
「だけど…馬鹿だなぁ。身内みーんな殺しちまったよ。
証拠隠滅して無理矢理だが目を怪我した。
そしてグルから目を貰って外人のふりをしたんだ。」
「英語が得意だからね。」
意外にあっさりと認めた吉木に対して
サーフィーは最も警戒をした。
「そんな認める?隠れないの?」
「隠れないさ。」
「ふーん。じゃ、逮捕していい?」
「…」
「僕の仕事はお前らを殺すことだからなぁ。
真実を伝えたなら…もう用はないよ。
捕まる気もないし捕まえられないからね。」
そう言うと、胸元から銃を出した。
既に弾は入れられていて素早く構えると
初めにサーフィーにバンッと銃声を鳴らす。
だが、そんなサーフィーも体術は得意だ。
危機一髪で避けてみせたが、吉木はまた弾を詰めて
バンバンと八方に撃つ。素早くクルルが構えて銃を撃ったが
避けられてしまった。
「ネズミのように動きやがって……」
イライラと怒りが湧いてきたクルルは
とんでもないことをした。
普通なら最終手段であるが、アルコールの強い酒を
吉木に掛けてライターで火をつけた。
「待ってクルル…!」
サーフィーが止めようとしたが
吉木は燃えている。黒い影が踊り狂うように
動き回って、やがて火が消えた。
「吉木が…居ない?」
そこには皮の服のみが残されていて
あとは消えていた。「何処にいるか分からない」と
グルは警戒の声を上げて四方八方全て見た。
けど、この飲食店は死角が多くて
探さなければ分からない。探し回ってるところを
クルルが襲われた。ウイスキーを掛けられて
同じように火をつけられたのだ。その後に、これで
終わるかと思えばガソリンを上から投げ入れた。
(…あのままだと死んでた…。
死角が多くて助かったなぁ。)
胸を撫で下ろしているクルルは、ジュースなどの飲料がある
棚の中でそっと息を殺していた。グルの猛烈な戦いが
棚の中でも聞こえる。銃声の音と共に消化器で火を消す音。
この状況にクルルは頭を悩ませた。
(あっさりと認めたが…これは接戦だな。
日本の警察官は敵わねぇってことか。)
(…ん?何か音がする。机の下か。)
クルルが顔を出して机の下を見ると
残り五分の時限爆弾があった。戦っている
グルやサーフィーは気づいていない。
いや、気がついていたとしても手がつけられないのだ。
クルルはヤバいと察して棚から飛び出すと
爆弾を急いで手に持ち、出口の扉まで走った。
だが、そこは鍵が閉まっていて
店員も銃を持ちクルルの腰に当てる。
(同犯かよ。)
マズイと思い冷や汗を流したが
これでも素人の店員だ。クルルは銃を取り
店員の頭を撃った。赤潮のような血を頭から吹かすと
倒れて息を引き取ってしまった。
だが、そんなことより爆弾だ。残りは四分二十八秒。
手が汗で濡れて滑りそうになるが
こういうときは、窓ガラスを割って捨てるべきだ。
(動線を切るのは危険だと考えた。)
クルルは窓を狙って撃つと爆弾を捨てて
グルとサーフィーに叫ぶ。
「爆弾は捨てました!
おそらく、範囲が広ければ此処ごと吹き飛びます。」
「反対側の窓から逃げましょう。」
そういったときの回答は忘れもしない。
グルの絶望的な一言だった。
「ありがとう。けど、もう手遅れだ。」
「…後、四分か。サーフィー連れて逃げろ。
爆弾は五つあるんだ。一つは―――」
その言葉を聞くと、サーフィーもクルルも
絶望の表情を浮かべると同時に、こう答えた。
「そうですか。なら俺は一つ爆弾を抱えます。
自爆しましょう。グルさんが死ぬのは嫌ですし。」
「…俺も、そろそろ天へ参ろうかな。」
そう言うと、サーフィーは頭に銃口を当てた。
グルは黙って逃げろと言おうとしたが
時間から推測して、もう駄目だと考えると
爆発する数秒前にこう言った。
「来世、悪党の中での正義になろう。」
グルの目には涙が浮かんでいたが
吉木は最後まで笑いながら、
予定より早い爆破のスイッチを押した。
バンという爆発音と共に四人は霞となった。
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