あかねside
ケンゴくんに話せることは全部話した。朝から頭を使った私たちは、少し休憩するために軽く糖分を補給している。お互いに自分から積極的に話すタイプじゃないから、必然的にお互いに無言になる。気まづくないから気にしないけど。
考えなきゃいけない事は沢山ある。アクアくんの父親であるカミキヒカルのこと。姫川さんが持っている手紙のこと。アクアくんの精神状態のこと。
───私たちのこと。
分かってはいる。アクアくんについて争っている場合じゃないって、分かってる。でも、怖いの。アクアくんがいなくなって、周りが全部真っ黒にみえて、仕事も投げ出してでもアクアくんを捜しに行きたかった。そんか私の様子にメムが最初に気づいてくれて、ノブくんとケンゴくんに心配をかけちゃって、ゆきと沢山ケンカした。今思うと、あの時の私はかなり荒れていた。今ガチの自殺未遂よりも迷惑かけたし、ゆきと大喧嘩もしちゃったから、幻滅されるかと思った。けど、「大丈夫」だと何度も言うゆきに抱きしめられて、どこまでも優しくて、暖かい人たちだと改めて感じた。
そろそろ私たちにも進展がないと、またあの人がアクアくんに何かしてくるかもしれない。そうなる前になんとかしないと。
?)───あの、すみません
聞き馴染みのない声が耳に入り顔を上げると、アクアくんを連想させるような、綺麗な金髪が目に入った。
あかね)えっ、と……?
?)いきなり話しかけてしまってすみません。席が埋まってしまったので、相席させていただきたくて……
ケンゴ)俺は大丈夫ですよ。あかねは?
あかね)…あ、私も大丈夫です
考え事に集中していたせいで、2人の会話が入らなかった。慌てて返答した私に、金髪の人はにこやかに笑っただけで、失礼だとは思われていない事に安堵する。
ミキ)僕、ミキって言います。気軽にそう呼んでもらえると嬉しいです
ケンゴくんの隣に座ったミキさんは、少し気まづそうにそう言った。フレンチトーストをモソモソと頬張るのが少し可愛らしくて、つい微笑んでしまう。
あかね)あっ、すみません!急に笑ってしまって
ミキ)いえ、全然大丈夫ですよ
そう言い、食事を進めるミキさん。私とケンゴくんが芸能人だと気づかれないと良いけど……
ミキ)あの、間違っていたら申し訳ないんですけど……
ミキ)──黒川あかねさんと、森本ケンゴさん……ですよね?
あかね)っ!
気づかれた?でも、確証は……あるなぁ。
あかね)はい。そうです
そう私が肯定すると、ミキさんはパッと笑顔になった。糸目だから、表情ほ変化が分かりにくいと思ったけど、この人は表情が柔らかいから案外感情の変化が分かりやすい。私が肯定したためなのか、ケンゴくんも頷く。
ミキ)ほ、本物……!
ミキ)あの、サイン貰っても良いですか……?
恥ずかしそうに言うミキさんは、鞄を漁り始める。中から出てきたのは、色紙とCD。
ケンゴ)あ、それ……
ミキ)はい。森本さんのバンドのCDです
ケンゴ)ありがとうございます
ケンゴくんは渡されたCDと油性ペンにスラスラとサインを描いていった。同じように私も描いていく。
私たちは知らなかった。ゆき達が慌てながら私たちを捜していることに。
アクアside
ゆき)あかねがいない!!!!!
ノブ)ケンゴもいない!!!!!
MEM)どうすれば良いのー!?
アクア)…お前ら仲良すぎだろ。それに、闇雲に捜す前に電話かけろ
呆れたように言うと、3人は「それだ!!!」と声を揃えて言い、ゆきはあかね、ノブはケンゴに電話をかけ始める。ちなみに俺のスマホはミヤコさんの手にある。何故だ。
話によると、どうやら近くに店にいるらしく、俺たちは家を出てそこへ向かった。
──あれ、あの人
俺はある人物から目が離せなかった。知らない筈なのに、どうして……
?)──楽しそうだね
アクア)っ!!!!!
すれ違う寸前、耳元に囁かれる。全身が水をぶっかけられたかのように冷えていくのを感じる。あれは、あの声は……
『カミキヒカル』
ノブ)アっくん?
不思議そうに顔を覗き込んでするノブに、俺は取り繕うことしか出来なかった。
アクア)……なんでもない
俺は気づかなかった。メムがじっとこっちを見ていることに。
続く
コメント
5件
これからの展開が怖すぎて寝れないです😭
身体中の穴という穴から血が吹き出してしまいましたわ〜
これは目の保養ですね...