テラーノベル
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「……おいコマ、これを見ろ。うちの神社の境内で『Karasuma_Free_Wi-Fi』なんて謎のオープンネットワークが勝手に飛んどるぞ」ある日の昼下がり、社務所でノートPCを開いていた蓮が、怪訝そうに画面を覗き込んだ。
「ほう、参拝客向けに神社のサービスか? なかなか気が利くではないか」
「バカ言え、そんなもん設置した覚えはねぇよ。接続テストしてみたら、完全に通信内容を丸パクリしてパスワードや個人情報を引っこ抜くための『偽装アクセスポイント』じゃねぇか!」
画面の奥を凝視すると、境内を覆うように、無数の「怪しげな無線のアンテナ」を生やしたトカゲのような怪異が這い回っていた。それは、セキュリティの甘い無料Wi-Fiに群がる人々の通信データを盗み見ようとするサイバー犯罪者の悪意が生んだ怪異――『盗聴の電波獣(フリー・スニファー)』だ。
怪異の背中からは、パスワードやクレジットカード情報を模した光の粒が、ドロドロと吸い上げられていた。
『高速接続無料』『パスワード不要』『すべての通信をキャッチ』
「(「無料(タダ)」の言葉に釣られて接続したバカどもの個人情報を抜き取りやがって……。人の財布を漁るならともかく、俺の知らないところで勝手にビジネス(情報売買)をする泥棒は許せねぇな)」
蓮は冷徹な目で電卓を取り出し、カチカチと叩き始めた。
その時、境内でスマホをいじっていた観光客の若い女性――マミが、青ざめた顔で社務所に駆け込んできた。
「あの、すみません……! さっき神社のフリーWi-Fiに繋いだら、スマホに変な警告が出て、ネットバンキングのパスワードが勝手に入力されて……口座のお金が引き落とされそうになってるんです……っ!」
マミが泣きそうな顔でスマホを差し出すと、彼女のスマホにも『フリー・スニファー』の無線コードがベッタリと巻き付いていた。
「なるほど。タダの電波に群がった結果、全財産を引っこ抜かれかけたってわけだ。世の中にタダほど高いものはないって、親の顔より見た教訓だろ」
蓮は冷たく言い放つと、マミの前にピシッと電卓を突き出した。
「お姉さん。お祓い代は、口座のセキュリティ保護とサイバー追跡の費用込みで20万円。その代わり、お前の個人情報を狙ってるその『悪質なタダ電波』を、根元から焼き払ってやるよ」
「お願いします……! 全部払いますから、助けてください……っ!」
マミが懇願すると、盗聴の電波獣がギギギと不気味なノイズを上げ、強力な電磁波の鞭を振り回して蓮たちに襲いかかってきた。
「コマ、電波の隙につけ込んで他人のデータを漁るコウモリ野郎を、回線ごと強制遮断(ブロック)するぞ! 神力をよこせ!」
「おうともさ! 拙者たちの神聖な境内の電波を汚す不届き者め、丸焼きにしておしまい!」
コマが純白の神力を爆発させ、蓮のタッチペンに一気に注ぎ込む。ペン先からは、不正なアクセスポイントを逆探知して電磁パルスで焼き切る「セキュリティ・シールド」の青い稲妻が激しくスパークした。
蓮は飛来する電磁波の鞭を華麗に躱し、境内のどこかに設置されていた不正なWi-Fiルーター(電波の発生源・コア)を鋭く見据えた。
「無料の甘い汁を吸えると思ったか? ――お前の回線、ここで圏外(サービス終了)だ」
蓮がタッチペンを、怪異のコアに向かって鋭く突き刺す。
「――不正アクセス遮断・偽装Wi-Fi一斉粉砕(シグナル・クローズ)!!」
ズガァァァン!!!
社務所に凄まじい電子的衝撃音が響き渡り、電波獣の怪異は「接続が切断されました」というエラー音を最後に、シュレッダーにかけられた「ただのノイズの紙屑」となって消滅した。
同時に、社務所のパソコンから境内の怪しいWi-Fi電波は綺麗さっぱり消え去り、マミのスマホの不正な通信も完全に遮断された。さらに、蓮の裏工作(?)によって、そのルーターを仕掛けていた不正アクセス犯の位置情報が警察に通報され、数日後に逮捕されたという。
「あ……警告が消えて、いつも通りの電波に戻ってる……! ありがとうございます、神主さん!」
マミはホッとした表情で20万円をお祓い代として支払い、笑顔で帰っていった。
夜。社務所で蓮はホクホク顔でお札を数えていた。
「いやー、無料Wi-Fiの罠を駆除して20万。やっぱりネットワークの安全を守る仕事は実入りがいいな」
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「蓮……お前、言葉の端々に『タダより高いものはない』という教訓が染み付いとるな。まぁ、マミの口座も無事で何よりじゃった」
コマが、綺麗に片付いたパソコン画面を見ながら満足そうに尻尾を振る。
「当然だ。世の中、汗水流さずに手に入るものなんて詐欺か罠しかねぇんだよ。……さぁ、明日からは『神社境内・安全な公式Wi-Fi』の接続案内と、不正電波対策のステッカーを貼るぞ!」
拝金主義のクズ神主。彼の冷徹なタッチペンの前では、どんなに巧妙な盗聴電波も、一瞬で圏外に追いやられるただのバグデータに過ぎないのだった。
コメント
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第25話読み終えたわ!「タダより高いものはない」を地で行く話で笑った。神社の境内に偽装Wi-Fiの怪異って現代的すぎるし、蓮の20万円請求も相変わらずのクズ神主っぷりで安心したわ(笑)。電波獣を「シグナル・クローズ」でぶった切るところのスッキリ感がたまらない。マミの口座も無事で何より!