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妖精の住む森〜北〜
諜報員として動いてるけど多分北側でしっかり動けるのは私くらい…。一応アリサちゃんやミクナちゃんも里を守るために頑張ってくれてるけどあの二人は優しいから多分アンチ魔法を使う人を倒すことが出来ないと思う。そうなるとやっぱり私が担わないといけない。でも、私だって里の中では武器が使えるだけで外から来た人はきっとそのプロばかり。魔法を絡ませないと私は正直お姉ちゃんより弱い。でも……でもそれでもやっぱり私は里を守りたい、大妖精様の負担を減らしたい!だからやる、絶対に倒してみせる!
「ふぁ〜あ…。あの小太りのおっさんから金貰ったから仕事ついてるけど妖精族いたぶるのは嫌なんだよなぁ。でも今月ピンチだし仕事選んでられないんだよねぇ……。だからさ大人しく下がってくれない?」
「私の存在にもう……気づいたの?」
「私森とかでお仕事するレンジャーっていう職の人でね。気配とかには敏感なのよ。」
「そう、ですか……。」
「あなたのその姿にお耳…エルフ?いや、噂に聞いた妖精族って奴ね。まさかこんな可愛い子供が出てくるなんてやってられないわァ…。」
この人ならお話出来る?でも、里を襲ってる人たちの仲間だから安易には信じられない……。
「い、一応聞くんですけど…。」
「ん〜?」
「あなたは悪い人です…か?」
「んー……半分あたりで半分ハズレ。」
「え……」
「外の世界は生きるためにお金が必要なんだよね?お家とかご飯とかのために。それで私は今お金が無くて生きるのが困難なのよ。だからこの森を襲撃するって言うのに参加してるの。そういう点では悪い人よ。でも、お金があるならこんな悪いことしないで世のため人のために森の秩序を守るお仕事をしてるの。そっちが本職だからそこだけを切り取って話すならいい子だね。」
「けど今は森を、里を襲う悪い人…。」
「そういうこと。けど、私は直接あれに参加してる訳じゃなくて後ろで頑張って詠唱してる人の護衛なのよ。だから貴女が何もしなければ私も完全に悪い人にはならなくて済むの。分かる?」
「…でもお金の為にこの内容を知ってなおここに来てるならそれはもう悪い人じゃないの?」
「………あー、確かに?じゃあもう悪い人だから良い人ぶるのはやめるかぁ。もーしわけないけどお金の為にやられてくれる?名前の知らない妖精族のお子ちゃま?」
瞬間弓を取りだし連続で矢を放つ。それを即座に剣で切り落しカウンターと言わんばかりにラルドも弓を放つ。しかし火球を飛ばされ矢は焼かれて消えてしまった。
「今のは魔法じゃないの!?それともそっちにだけは効果がないとか…」
「アンチ魔法は等しく効果あるよ。でもこれの効果は『魔法』に対してで『魔道具』は対象外なんだよね。だから魔道具経由した魔法はカテゴリー的には『魔道具』だから使えるってわけ。」
「そんな抜け穴があったんですね…。」
「とはいえ魔道具自体まだ高い部類だからこんな簡単に使うもんじゃないんだけど、貴女妖精族のくせに武器もちゃんと使えて強いみたいだし、私も出し惜しみしてたらやられそうだからね。」
「それでも魔法が使えるみたいなものだからあなたに分がありすぎる。」
「これくらいしないと妖精族は怖いからね。なんせ外にいるエルフちゃんとかの祖先みたいなもんだからね。」
「妖精族は極端に言えば魔力の塊みたいなもの…。だから魔法使わせたらその火力は恐ろしいものと言われてる。逆に言えば魔法が使えないならスライムと同格なんて言われてるんでしょ?大妖精様からそうやって聞いたもん。」
「まぁ、そこまで悪くは言わないけどでもそういう危険性を秘めてるからこのくらいの準備をさせてもらっても恨まないでちょうだい。」
この状況どうやってひっくり返すか…。理想を言えば隙を見て後ろの人を倒してしまうこと。それが出来れば私も魔法を使えるようになる、でもそれをさせてくれるほどこの人は甘くない。多分強さはルナベルさんよりは弱いけどお姉ちゃんよりはこの条件だと強い、そんな感じ。かく言う私はそのお姉ちゃんに魔法無しで勝てたことは無い。そんな状況だから隙を見て魔法を唱えてる人を倒すなんてことは出来ない。
かといって真っ向からこの人と戦っても魔道具を持ってる分あちらの方が有利で私は不利でしかない。魔法が使えれば何とかなるけどどうしたら…。
「一生懸命思考を巡らせてるけど勝てないよ?魔法を使えない妖精族ではね。」
「くっ…。」
とりあえず矢を連射して相手の様子を見よう。あわよくばあの人が持ってるランタンを壊せれば何とかなるかもしれない。あれが魔道具と言われるものだろうからそれが無くなればまだ勝てる希望はある。魔道具ありきだと確実に私はやられる。本命はあのランタンであわよくば後ろの人を倒せればそれでって感じで連射していけば……。
「距離を開ければって考えてるところ悪いけど私のメインはムチよ!」
「くっ!?」
的確に私の持つ弓を狙ってくる…。これじゃあ狙いが定まらないだけじゃなくて一歩間違えたら奪われて攻撃手段が無くなっちゃう…。
あとはエメルお姉ちゃんほどでは無いけど使える短剣があるけど相手は外の世界でこういうことを生業としてる人達。いわゆるプロっていう人たちだから子供が軽くかじった短剣術なんてあの人から見たらただのチャンバラに過ぎない…。
ほかの手札はないか…ほかの手札は………。
「もう手札はないかな?私としては子供をいたぶるのも趣味じゃないしそんな畜生になりたくないの。だから、申し訳ないけどここで大人しくしてくれる?そうしてくれたら私も何もしない。それは誓ってあげるから…。」
「……。貴女にその気がないのは分かります。でも、私たちにも譲れない戦いがあるんです。今私が降伏したら森のみんなは、大妖精様は…お姉ちゃんは人に捕まり苦しむことになるんです。
なにより…あなたがお金の為に他者をどうにかしてしまうという事が私は許せない。」
「人間の世界は生きる為には時には汚くならないといけないのよ。」
「…貴女が私と同じ立場に立った時に同じ言葉を言われたらどう思いますか?家族を売れと言われてその言葉通りに従う方がどのくらいの数いると思いますか?大多数は絶対に抗います。それが勝てないかもしれない戦いだとしても守りたいものがあるから子供も大人も本気になるんです。
あなたが本当に優しい人ならこんなことから手を引くべきです…。私はあなたがそういうことができる人とは思ってない。だから…。」
「…ごめんね。どんなに言っても私はこの仕事を放棄しないよ。人の世界の生きる辛さはあなたも分からないと思うから。 」
「……わかりました。じゃあもう私もあなたに情を湧かせません。あなたを『敵』として認識し森から出ていってもらう、もしくは死んでもらいます!」
そう言い切ると突然指笛を始めその音は森中に木霊する。少しの間のあの森がざわめき出す。一斉に鳥が羽ばたき空を駆けて、陸に住む動物達が走り出しその足音が彼女の元を目指していることが分かった。
「こ、これは……。」
「私にとって里のみんなは家族だし、森のみんなはお友達だから…だから!」
「動物を呼んでもアタマであるあなたを倒せば烏合の衆と何ら変わりない!」
ムチを瞬時に扱いラルド目掛けて放つが森から抜けてきた1匹のオオカミが身を呈して彼女を守り隙が生まれたその刹那を逃すことなくラルドは矢を引き絞り手に持つと魔道具目掛けて放つ。攻撃に転じていた彼女はその魔道具を守ることが出来ず貫かれ機能を停止する。これにより二人は再度魔法が使えないというイーブンな状態に戻るがラルドの猛攻はここで終わらない。
呼び出した動物たちの中で鳥たちを操りアンチ魔法を唱える術者を襲わせその詠唱をキャンセルさせる。結果としてこれは上手く行き僅か数秒ではあるが詠唱を辞めたその瞬間ラルドは風魔法を操りアンチ魔法を唱える術者を吹き飛ばし大木にぶつけ気を失わせることに成功する。
これにより両者ともに魔法が使えるようになるが妖精族は存在そのものが魔力の塊のようなものなので魔力量も桁違い、それに限らず生活のほとんどを魔法に頼ってきたため精度も他の種族の追随を許さないほどに長けている。つまるところ相手方は『詰み』という事になる。
「まさか…魔法でも何でもなくてただの獣使いがこの戦いの決め手になるなんてね……。」
「敵として見ると言いましたが私は無駄な殺生はしたくないんです。負けを認めてくれますか?」
「私だって死にたくないもの…。ここで足掻いても何も出来ないから大人しく従うわ。」
「ありがとうございますお姉さん。それじゃあ里でじっとしててもらいます。ことが終わったらルナベルさんよりギルドの方に受け渡す事になりますので…。」
「ルナベル、か……。元血気騎士団に居た人物が後ろに居るなら何しても無駄だったかな。なんにせよ悪事に加担したという事実は残るから私の人生もこれまでね。」
「貴女はきっとやり直せますよ。だってここまで戦ってきて命を取ろうとはしなかった。私を守るために身を呈したオオカミさんも命に別状はないくらいの怪我で済みましたしなりより……。」
その言葉を言いかけると先程彼女に攻撃されたオオカミがゆっくりと彼女に向かい歩き出し力なく座る彼女の元に行きその手をペロッと舐める。
「っ………!」
「本当に心が綺麗だからこそこの森の動物達も貴女を警戒してないんです。」
「うっ……うぅ………私は…わたしは………っ!!」