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妖精の住む森〜南〜
どうやら北と東は魔法を使えるようになったみたいだ。魔法が使えなくても魔力の塊のような私達妖精族はその僅かな変化くらいは分かるみたいだ。さて、問題は私の相手と思わしき奴だが…。
「なるほど…。術者を止めに来る奴がいるとは思っていたがまさか子供が来るとはな。」
このスカした男中々やるな…。魔法が使えるなら大したことは無いけど魔法が使えないという状況下ではまぁ私は向かい風でしかない。
身体的な点で言えば子供と大人という感じで腕や足のリーチが全くと言っていいほど無いわけだ。私が腕を伸ばしてそこに剣の丈も合わせたところで大人に勝てる道理はない。筋力的な点も同じで私に利点はない。だが、背が小さいということはメリットでもある。
自分で言うのもアレだが私は小バエみたいなものだ。小さくて早い、その上こうしてまとわりついてくるしつこいやつと言えばその厄介さは伝わるだろう。背丈のなさを上手く活用すること、そして今私がいる場所は『森』だ。それも里周辺の森となるとここは私たちのテリトリーという事になる。背丈のなさと森というアドバンテージを如何に上手く利用して相手を倒すかがこの戦闘の肝になるだろう。
「恐らく無理だろうけどその隣の人間に詠唱するのやめてもらって回れ右して帰ってくれたりしない?」
「残念ながらそれは叶わぬ願いだな。俺はアンタらを捕まえる事で多額の報酬を得れるんだ。表の仕事が出来ねぇ俺なんかは収入が終わっててなぁ?なんで、こういう一攫千金的なのがないと生活出来ねぇんだわ。」
「クズの下に就くのもまたクズか。」
「お褒めの言葉有難く頂戴するよ。」
「それじゃあ私とアンタはやり合わないといけないって言うことだけど?」
「まぁ、そうなるが別に怖くはないぜ?魔法が使えない妖精族なんぞ恐れる要素が何も無いからな?」
「外に出た別の種族、エルフ達からその手の情報を手に入れたのか?」
「うちの雇い主が詳しかったようでそっちからあれこれ聞いたよ。」
「そう…。」
「とはいえアンタは聞いてた妖精族とは違ってちゃんとやりあえそうな見た目してんな?」
「そりゃ私あの里の半グレみたいなもんだからね?里の掟なんてクソ喰らえって事でこの辺の森に来たりしてるくらいだから。」
「掟によって妖精族は外との関わりを断っていたと聞いていたがまさか他にもルールがあってそれを破く輩がいるとはねぇ?」
「良くも悪くも私らは一般的なレールなら外れたドロップアウト組よ?」
「同じ括りにしないでもらいたいがまぁドロップアウトというところは否定出来ねぇな。」
「そんじゃあ殺る?」
「俺の勝ちは揺るがないがやってやるよ?」
「まずはその余裕の感じを崩して敵として私を見てもらおうかな!」
低い姿勢から一気に距離を詰めてきたか…。子供だからという理由だけでなくちゃんと独学ではあるが鍛えているのが分かる。地面スレスレで駆け抜けることができるとは人体の構造は俺らと変わらねぇはずなんだがな。
「もらったぁ!」
「その低姿勢からの切り上げがお前の十八番か?」
(くっ!?難無く躱してきやがったこいつ…。)
「使う剣は手入れがされているとはいえ拾い物の安物か?」
「あいにくうちの里は武器を使わない馬鹿しかいなくてね?拾い物で何とかしてる訳だが、それでもコイツで事足りてるんだよな今日まで、なんならこの先もそうかもな?」
「使う刃物はなるべくいいものにしておいた方がいいぜ?物持ちがいいのもあるが差がある武器同士がぶつかると品質の低いものは折れてしまうからな?」
#主人公最強
「じゃああんた殺してその武器貰おうかな?」
「十八番の一撃を避けられておいてまだ強気とはその辺は子供か…。」
「私の十八番はコレじゃないんだけどねぇ?」
「なら見せてもらおうか!」
エメルの攻撃を剣で受止め簡単に弾き距離を取らせる。
(あの余裕の表情は確かに私を敵として見てない。ならどうやってそれを崩すべきなんだって言うところではあるけど…。)
「来ないならコチラから…なんて言いたいところだがあいにく俺が変に動いてしまうと後ろのおっさん隙ついて殺るでしょ?」
「……ご明察通り。私ら妖精族は魔法が取り柄だからね?魔法を使えないようでは下劣なゴブリンと何ら変わらない戦闘能力しかないよ。いや、なんなら攻撃手段もないから人間の幼子と変わらんよ。」
「なら無駄に動いてリスクを犯す必要は無い。俺はあんたの攻撃を受けていればそれでいい。目的はあんたらの里を襲撃し幾人か攫ってしまえばそれでいいんだからね。」
「ホント戦いにくい奴ねあんた。」
「そりゃどーも。守りたいもんがあるなら死ぬ気でかかってこいよ嬢ちゃん。」
「なら意地でも奥のおっさん殺るから。森っていうのを最大限活かしてぶっ潰す!」
瞬間木々の中に姿を消し音のみを立てて彼の周囲を移りゆく。
「なるほどぉ?あえて音も出すことでこちらの油断を誘うつもりだな?人との戦闘に慣れてそうな妖精族とはかなり珍しい。アイツに渡さず俺が使役して役立ってもらいたいものだ。 」
「そんなのお断りだよ!」
死角からの矢による一撃を放つがノールックで避けられてしまう。
「しかし悲しいな…。殺意が漏れすぎてる。それでは俺を殺すことは不可能だ。」
(魔法無しでノールック避けをされるのはちょっと強すぎる…。が、それでも私がここでこいつを倒さないと南側で魔法が使えない…。)
「……。あのおっさんはまだ来ないのか?それとも別方角から?おいお前!あの胡散臭いデブはどこにいる?」
「…私にも分かりません。しかし私らの役目はこの方角の死守です。余計な事は考えない方が…」
「あんま誇れないが俺はこの手の黒い仕事は歴がある。だからこそ断言出来る。当初の作戦通りにことが進まないということは捨て駒として扱われる時だ。つまり俺とお前は最悪捨てられる訳だがどうする?雇い主を信じてここで命を絶やすか俺の経験から来る勘を信用するか?」
「わ、私は…………。」
「魔法使いの命は貰った!」
再び背後から現れ今度はアンチ魔法を唱える術者に狙いを定めて矢を射る。
だが、コレも飛んできた矢を素手で捕まえてカバーする。
「ちっ……化け物かよお前。」
「時間の問題だぞ?俺もこんなバカげたことに命を懸けたくねぇからお前捨てて逃げるぞ。それが嫌なら早く結論出しな?」
死を悟った彼はフードから見える僅かな素顔、その額から冷や汗が流れ出し男を見て命乞いをしてるそんな目で彼を見つめる。
「そんな目で見られても男、しかもおっさんじゃ嬉しくもなんともねぇよ。が、元の作戦とは違ったので俺らは捨てられるわけだ。なんで、とっととトンズラするぞ。アンチ魔法を解いて隠密魔法を唱えてお前は消えな。 」
その指示に従い彼はアンチ魔法を解きすぐに姿を消しこの場から消えていく。
「今のやり取りを見てたなら分かるだろ?俺はもう戦闘の意思はねぇよ。だから隠れるのやめて少し話そうじゃねぇか。」
「なら武器も捨てろ。」
「後で返してくれよな?」
そういい構えていた剣を鞘にしまい森から姿を現したエメルに投げ渡す。
「急に仕事を放棄するなんて何があった?」
「正直もう俺は報酬も貰えそうにないから全部話してやるがまず目的は妖精族の確保これは明言してるし行動がそうだろ?」
「それは知ってる。私が気になるのは先程の会話だ。」
「俺の雇い主はこの森の南からあいつの護衛とともにやってきて進軍する予定ハズだったのだが姿をこうも現さないのは不思議でねぇ?で、アンチ魔法を解いたことで魔力感知が使える訳だが西以外は全てもうアンチ魔法が解かれてる。この時点で既に敗色濃厚なのと約束が違うわけだ。」
「作戦がどうこう言ってたがそれは?」
「四方をアンチ魔法によって魔法を封じ、あのデブが戦闘用に調教した獣人を駆使して妖精の里を制圧。その後雇われた人間達が妖精族を確保しずらかるって言うのが流れだったんだが…。」
「その全てが今狂ったと?」
「そういう事だ。三方向ともお釈迦になって残る西も時間の問題で落とされる。そうなると妖精族確保なんて出来ないからな。で、こっちの作戦で時間が来たら南側から俺の方に来るらしいんだがその姿が見えないので急遽アイツの中で作戦を変えてきたんだろうな。だからその時点で俺や他のやつに価値が無くなったわけ、俺はそれを察してあいつも逃がしたし俺もトンズラしようと思ってるわけだ。」
「素直に武器渡してくれたけど私が返すとは思う?」
「あぁ。なんせ俺は加担したが妖精族を切り伏せることもしてないしアンチ魔法も解いてやった。更に情報も吐いたしこれ以上ないほど貢献してるだろ?」
「それが真実であるとを私は思えないのだけど?」
「冷静に考えてくれよ?魔法が得意な妖精族相手に先にアンチ魔法切ってその使い手を逃がしたんだぞ?対抗手段が無くなった今ここで騙してなんになるんだよ。」
「人は嘘つきだからどうだろうね?」
「とにかく俺はもう今回の件からは手を引く。あんまおっかないことには深く関わりたくないからね。んじゃ武器返してや?」
「……はい。」
言われた通り彼に投げ渡す。
「サンキューな嬢ちゃん。それじゃあ一つ有益な情報を君にあげよう。」
「なに?」
「俺の雇い主についてだが、急遽作戦を変えて奴がとこにいるか今分からないような状況だが可能性として西の森、もしくは既に解放されてる北と東このどれかやつはいる。それとそいつの護衛もいるかもな。
可能性の高さとしては東だろう。お仲間さんがそちらにいるなら急いだ方がいい。奴隷商人であるとともにアイツはクソな調教師だ。手懐けた獣人の奴隷数人もいるかもしれないからな。
もし、獣人が東にいたら護衛として雇った奴は既に里内に入ったかもしれないことも追加で教えてやるよ。んじゃせいぜい頑張れよ。」
言いたいことを一方的に言い彼は森を後にした。
「面倒なことを……。とにかく全体に連絡入れないとか。」