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土曜日。リビングで朝ご飯を食べた優穏(ゆお)。
「ご馳走様でした」
と手を合わせる。するとお手伝いさんが
「お粗末様でした」
と言う。
「本日もとても美味しかったです。ありがとうございました」
と言って、お手伝いさんが食器類を片付けてくれる。和室から洋室のリビングに移動する優穏。
ついていく執事の本心(ほし)。朝食後、しばしの休憩としてテレビを見る。
「皆さんおはようございます!!Your heart catch & lock。こんにちはー&Lock(アンロック)でーす!!」」
朝の情報番組にボーイズグループ「&Lock」が出ていた。
「本心ちゃん知ってる?」
優穏が本心に聞く。
「えぇ。アイドル的人気を誇るダンス&ボーカルグループと呼ばれる9人組のボーイズグループです。
日本を拠点に活動するグループで、日本国内にはもちろんのこと、韓国にも重きを置いているため
日本のみならず、韓国にもファンが大勢いるというグループです」
本心が軽く説明をする。
「詳しいね?」
「いえ、このグループ名が気になって少し調べたことがあって」
「グループ名が気になったの?」
「はい。正直読めないじゃないですか。
「&(アンド)Lock(ロック)」って書いて「&(アン)Lock(ロック)」ですよ?」
「まあ、たしかに」
「最近、オシャレなのかなんなのかわからないですけど
読めないグループ名とかアーティスト名多いじゃないですか。
「BeSicks(ビーシックス)」って書いて「BeSicks(ベーシックス)」とか
「ZZzzz夢の中zzzZZ(ゼットゼットゼットゼットゼット夢の中ゼットゼットゼットゼットゼット)」って書いて
「ZZzzz夢の中zzzZZ(ずっと夢の中)」とか「IMI(アイ エム アイ)」って書いて「IMI(アイ エム ワン)」とか。
この「&Lock」もその類いだったので、正式名称はどちらなのか気になって調べたことがあって。
ちなみにファンの愛称は「Keyholders(キーホルダーズ)」だそうです」
「へぇ〜。本心ちゃんは「Keyholders」なの?」
「まさか。ま、たしかに歌もうまい…のかな?
ダンスは日本のアイドルなんかより、よっぽどキレッキレで、バッチリシンクロしてて素晴らしいです。
日本のアイドルなんて目じゃないですね。正直顔も、日本のアイドルよゆー越えです。
正直今や日本のアイドルの顔面偏差値なんて私の頭脳偏差値レベルですよ。
しかも最近なにかといえば「オーディション」
あんなの、自分の知名度をひけらかしたいだけ、視聴率を取りたいネット番組の制作側の思惑
MyPipeでオーディションの様子を公開してる場合はただの視聴回数集め
視聴回数が回って金が稼げればそれでいいんですよ。
有名人がプロデュースするって場合は「プロデュースした」ってことを謳いたいだけ。
プロデュースしたガールズグループ、ボーイズグループ
アイドルが売れなくても、別に自分の名前が広まればよし。
仮に売れたらラッキーくらいな感じ。自分にマージン入るし
さらに自分の名前が売れるし、自分の目は間違ってなかったって言えるし。
なんならプロデュース“ごっこ”オーディション“ごっこ”をしたいだけ。
もう公然わいせつ罪ですよね。公共の場でオナ」
なにかを言いかけて言い留まる本心。
あっぶねぇ〜…。お嬢様の前でド下ネタぶっ放すところだった…
とキョトンとした優穏の顔を見て思う本心。
「とにかく、公共の場で気持ち良くなってるだけです。
メンバー減って、オーディションごっこして、一般人からメンバー募って
ブサイクでダンスも歌も然程うまくもない一般人入れて
名前も変えて、グループとしての質落としまくってるグループもあるくらいですからね。
それに比べたら、「&Lock」もオーディション出身グループですが、事務所が主催したオーディション番組で
練習生がグループとしてデビューするまで。という内容で、著名人は出てこない。
練習生の汗と涙、成功までを記録したもので、視聴者は“純粋に“練習生を応援している層だけ。
なので「&Lock」としてデビューが決まったら、ファンの喜びもひと塩。他とは大違いですよね。
しかも顔良し、スタイル良し、歌もうまいしダンスも揃っててキレキレ。なので私も、応援まではしてませんが
自分を可愛いとかカッコいいと勘違いしてる日本のアイドル崩れよりは、比べ物にならないくらい好きです」
相も変わらず毒がキレッキレの本心。そんな本心の毒舌は止まりそうもないので
その間に優穏と優穏の家について軽くご説明をしようかと思います。
優穏の家、神亀善(しきぜん)家は「神付亀(かみつきがめ)」という旅館を経営しています。
「神付亀」は1軒だけでなく、日本各地に展開する「神付亀グループ」というものになっています。
旅館内部の装飾はもちろんのこと、サービスの口コミも最高ランク。
高級志向の、1泊がお高い旅館から、リーズナブルに泊まれる旅館まで取り揃えている。
そんな神亀善の家は、言わずもがな和風の家、かと思いきや、もちろん和室は多いのだが、洋室もある。
優穏が朝ご飯を食べた後、しばしの休憩をしているリビングも
ソファーがあって、ソファーの前にガラスのローテーブルが置いてあって
ローテーブルの下にはラグが敷いてあって、テレビ台があってテレビがあって、とゴリゴリの洋室である。
優穏の部屋も洋室。一般のご家庭のリビングほどの広さがある部屋にはテーブルにベッド、テレビがある。
部屋でも充分休憩できるのだが、優穏は休恵といるのが好きなのだ。
基本的に執事は個人の部屋の中までは同行しない。なのでリビングでくつろいでいれば一緒にいられるのだ。
しばらく休憩してから、午前中はお琴、茶道のお稽古をした。茶道のお稽古を終えるとお昼ご飯。
朝ご飯もお昼ご飯も夜ご飯も、和食であれば和室で、洋食であれば洋室で食べることになっている。
お昼ご飯は洋食だったので、洋室のリビングで食べた。午後も習い事がある。花道である。
優穏には兄と姉がいる。兄、優雅(ゆうが)も、姉、優希(ゆうき)も神付亀旅館で働いている。
なので神亀善家としては跡継ぎは2人もいる状態なので
両親は優穏には自由に歩んでもらいたいとは考えているが
お家柄、神亀善家の者としての教養のため、習い事をさせている。
お琴は日本の音楽、茶道は日本の味覚や礼儀作法、花道は美的センスや美の教養
そして日曜日の午前のピアノは世界の音楽、書道は字の美しさ。
午後の花道の時間までは時間があるので、基本的には自由時間。勉強をしたり、リビングでくつろいだり。
だいたいは休恵と一緒にリビングでテレビを見ている。
見たいバラエティー番組やドラマ、映画などを録画していたものを見たり
サブスクリプションで見れるバラエティー番組やドラマ、映画を見たり。
「…。チャンネル変えていただいてもよろしいでしょうか?」
本心が、なるべく表情を崩さないようにしているが、嫌な表情になりかけながら優穏に言う。
「どうしたの?本心ちゃんの好きじゃないアイドル崩れでも出てた?」
ポワポワした優穏も、本心の毒に多少侵されているようである。
「いえ…。出ている芸人さんが、とんでもなく好きじゃなくて…」
となるべく表情を崩さないようにしているが、苦虫を噛み潰したような表情になりかけながら優穏に言う。
チャンネルを変えようとした優穏だが、テレビよりも好きなのが本心の毒舌なのだ。
なのでチャンネルを変える前に
「なにが好きじゃないの?」
と好きじゃない理由を聞いてみることにした。
「そうですね。端的に言うと調子に乗ってるからですかね」
「調子に乗ってる?」
「そうです。特に辛口と悪口を履き違えているのが見てらんないですね。
私も陰キャなんでよくわかるんですが、なんかこう、陰キャが必死になってる感があって。
イキリ陰キャっていうか」
と言う本心に
本心ちゃんは陰キャラなのだろうか
とぽわーっと思う優穏。
「テレビだったりMyPipeだったりで
陰キャが注目される、脚光を浴びること自体はいいんです。逆にいいことだと思います。
今まで日陰、ま、側から見たら日陰でも、本人からしたら楽しいのかもしれませんが
今まで日陰で、そんな楽しくない人生だった陰キャが、芸人さんやら俳優やら女優
MyPipeで人気になる。ってのは、努力とかが認められた。クラスで注目されなかったけど
クラスなんか目じゃないほどに、大勢の人から注目される。いいことだと思います。
目立つこと、カッコつけること、ま、人によってはカッコつけてるのも見てられない人もいますけど…。
自分のことを可愛いという“体”でいるのも全然いいんです。
ただ、それと“調子に乗る”とはまったくの別物ですから。決して、調子に乗ってはいけないんです。
これは芸人さん、俳優さん、女優さん、アーティスト、モデルさん、アイドル
タレントさん、声優さん、アナウンサーさん、メダリスト、スポーツ選手
日本だけじゃなく、海外セレブ、ハリウ○ド俳優、女優、MyPiper、ボクサー、プロレスラー
小説家、マンガ家、怪談師、ホスト、キャバ嬢、会社員、サラリーマン
著名人だけじゃなくて一般人にも言えることなんです。
調子乗ってるイキリ陰キャなんて見てられます?あ、決して勘違いしないでほしいんですが
私は陰キャが嫌いなわけじゃないですからね?私も陰キャ側の人間なので。陰キャには親近感を覚えるんですが
テレビとかMyPipeとかで調子に乗ってる陰キャを見ると、嫌悪感を覚えるんですよ。
そしてこれは決して陰キャだけじゃなくて、陽キャにも言えることなんです。
いくら陽キャだろうが、たとえばクラスで1番目立つ、カースト上位の女子であろうが
“調子に乗ったこと”を言ったら、さすがに周りから距離置かれますよね?それです。
なので、この世のほぼ全員に言えるのが”調子に乗ったら終わり“ということですね。
それがどこであろうが、です。学校だろうが職場だろうが。テレビでも”調子に乗ったら嫌われる“んです。
いくら有名な俳優さん、女優さんだろうが、世間から嫌われます。
どれだけヒットする曲を放つアーティストだろうが調子に乗ったら嫌われるんです。
この世で調子に乗っていい場所は、自分だけの空間、ホストクラブ、キャバクラくらいですかね」
「そこは調子乗ってもいいんだね」
「そうですね。自分だけの空間なら誰にも見られていないので嫌われることもないですし
ホストクラブやキャバクラは、調子に乗った発言、行動をしても
それを許容し、なんなら持ち上げてくれる場ですから。
ま、裏で嫌われてるかもしれませんけど、あくまでもお客さんなので。
ま、でも、大金を落としてくれる太客しか許されないかもしれないですけどね。
とにかく、自分だけの空間、ホストクラブ、キャバクラ以外の場所では
調子に乗ったら嫌われる。ということです」
「そうなんだ。私も気をつけないと」
「優穏お嬢様は大丈夫です。まず調子に乗ることがないと思うので」
と根拠のないことを言う本心。そんな毒舌が聞けたところでチャンネルを変えた。
「Ohh〜…坊ちゃん!」
レオンがお昼ご飯を食べ終えた守にテンション高く呼びかける。
「お坊ちゃんの「お」を英語感嘆の声にするのやめて」
「カンタン?Easy??」
「そっちじゃない。Admirationのほう」
「Oh!!そっちですね!」
「で?なに?」
「ドライブにでも行きませんか?」
「ドライブ?」
「午前中勉強してたでしょ?」
「してたけど」
「そんな勉強勉強じゃつまんないでしょー」
「いや、僕高校生だよ?」
「知ってますよ?」
「勉強しなきゃでしょ。しかも高校入ったばっかだし」
「…」
「ん?」という表情で守を見るレオン。
「ど、どうしたの?」
「え、いや、坊ちゃんが今年から高校生なのは知ってますけど」
「うん。高校生だから勉強」
と守が言うと、また「ん?」という表情で守を見るレオン。
「な、なにさ」
「自分が高校生のときは、点で勉強しませんでしたけどね」
と言うレオン。
「いや…。そんなことを誇りのように言われても…」
「いや!“高校生こそ”遊ぶべきでしょ!」
「…そ、そうなの?」
「そうですよ!坊ちゃんはただでさえ地味なんですし」
グサッっとレオンのストレートな言葉が心に突き刺さる守。
「青春を謳歌しないと」
「青春を謳歌」
「ですです。好きな子、それこそ、神亀善(しきぜん)さんのこと気になってるんでしょぉ〜?坊ちゃぁ〜ん」
「いや、ま「あの神付亀グループの子」ってので気になっているけど、別に好きとかじゃ」
と守が言うと守の肩にグッっと腕を回すレオン。
「そこんとこ、ね?」
と親指で外を指す。渋々といった表情をする守だが、レオンとのドライブは嫌いじゃない。
なんなら好きである。しかし1つだけあまり好きになれない点が1つある。
「坊ちゃん〜。Ride oo〜n」
車が派手だという点。ツィボレーというメーカーのカアロ コンブーチバルという車種。
全体が黄色く、ボンネットに黒のラインが2本入っている。
ポルシ○やフ○ラーリ、ラン○ボルギーニ、G○-Rや○ードスターなどと違ってThe スポーツカーでもないし
ベ○ツやベ○トレー、レ○サス、B○Wなどと違って、The 高級車でもない。
ただ実際には値段も高いし、スピードも出る。しかもThe スポーツカーやThe 高級車はテレビや
カーディーラーのショーウィンドウで見たことがあると思うが
レオンの車は見たことがあるとしても海外映画や、ごく稀に国内でも見れるくらいの車である。
なのでThe スポーツカーやThe 高級車よりも珍しく、目立つ。
そのため、ただ街中を走っているだけなのに、人々から注目を浴びる。しかもそれを運転しているのがレオン。
白髪で毛先がピンク色という、ド派手な髪をしたアメリカと日本のハーフのイケメン。
なおさら注目の的となる。しかもレオンもレオンで、目が合ったら手を振ったりするため
イケメンに手を振られた女子は
「え、なに?知り合いなの?どこで知り合った!あんなイケメンと!」
「違う違う!知り合いじゃないって」
などとなる。高速道路に入ってスピードを上げる。
「で?どうなんですか?恋は」
レオンは2人きりになると、執事というよりはお兄ちゃん的な感じになる。
「だからしてないって」
「マジで?」
「マジでって。まだ入学して1ヶ月くらいだよ?」
「まあぁ〜…。たしかに?」
「でしょ?」
「でもね、恋は早めにしておくことがおすすめですよ」
「なんで?」
「ま、坊ちゃんには、なるべく傷つかない恋をしてほしいんですけどー。
でも、たとえば高校3年生のときに恋をしました。告白しました。
残念ながらフラれました。さあ!次!ってなったときには、受験、卒業。
そして卒業した後「あぁ〜。もっと青春すればよかった」って後悔するんですよ」
「…」
人生の先輩であるレオンの言葉が沁みる守。
「ま、もちろんそれもBlast the pastとして、大人になったとき
飲みながら語ったりすることもあるんですけどね?
ま、もちろん青春は恋だけじゃないですから。友人と遊びまくるってのも青春です。
ただ、恋は早めにしておいたほうが、フラれたとき、ま、傷つく時間も含めたとしても
1年生のときに恋して告白しておけば、1年に1回告白しても、なんと3回もチャンスがあるんですよ」
「チャンスがあるって」
「ま、もちろん1回目で恋が実るのを祈ってますけどね?…あ、坊ちゃんの初恋は幼稚園の先生だったか」
と笑うレオン。
「ちょ!なんで知ってんの!」
「お父様から聞きましたぁ〜」
と前屈みで、ハンドを胸に抱くようにして楽しそうにするレオン。
「父さん…」
「ま、冗談はさておき。よくTime is money〜」
とレオンは左手をハンドルから離し、左手の人差し指の腹と親指の腹を擦り合わせるジェスチャーをする。
※ハンドルはなるべく両手で持ちましょう。
「って言うじゃないですか」
「うん。そんな嫌な言い方じゃなくてね」
と言う守に笑うレオン。
「でもそれは大人の、ビジネスでの世界での話です。
学生の時間はお金では決して買えないものなので、学生にとってはTime is the time。時間は時間です。
恋をするにしてもしないにしても、恋する時間、友人と遊ぶ時間、学祭の時間。
すべてがかけがえのない、1秒1秒が貴重な時期ですので、ぜひ楽しんでくださいね」
とレオンが笑って言った瞬間、トンネルから抜けて海が見えた。
雲がまばらにあるが、綺麗な青空から差し込む太陽の光が、波立つ海の水面に反射し
キラキラと輝いていた。レオンの言葉が胸に沁みていた守。
「おぉ〜!綺麗っすねぇ〜!」
「レオンくん」
とレオンを見た。するとレオンはいつの間にかサングラスをかけていた。
「なんすか?」
「ありがとう」と言おうとしたが、レオンのチャラさに一瞬「ありがとう」の気持ちが引っ込む。
しかしやはり言おうとしたところで、急に風が強くなる。
「Fooooo〜!最高ぉ〜!オープンカードライブ日和ですねぇ〜!」
と叫ぶレオン。屋根を開けたのだ。
「さ…寒いんだけど…」
「え!?なんすか!?海ですよ海!Fooooo〜!友達や彼女とこーゆーとこ行って青春をEnjoyしましょう!」
「足がないよ。足が」
「Let’s summer enjoy!! 浮き輪を投げろCowboy!!
頭に当たって怒るあの子に夢中〜I love You〜This is The summer time〜」
陽気に歌うレオンを見て
レオンくんはモテたんだろうなぁ〜
と思う守。
一方の優穏。午後の夕方前の花道のお稽古が終わり夕食の時間。
優穏の家は、説明した通り、旅館を経営している。父も母も兄も姉も。
旅館の業務に携わるということは、とても大変なことである。
なので今は、めちゃくちゃ広い神亀善家に、優穏1人だけが住んでいる。
正確にいえば、旅館の業務を手伝うためのスキルを身につけるため、新人だったり、教育係になるためになど
様々な理由で、家の手伝いとして住み込みで働いている旅館の従業員やお手伝いさんもいる。
しかし、父、母、兄、姉は旅館の業務に忙しく、実家に帰ってくることはほぼない。
世が夏休みならなおさら。旅館としては書き入れ時。
帰ってくるときといえば、優穏の中学入学式とか卒業式、高校の入学式など。
そういった式典やお祝い事のときは家に帰ってくる。そして家でパーティーを行う。
中学までは父と母が交代で、土日には父か母がいたのだが
高校生に上がったということもあって、土日にも父、母は帰ってくることはなくなった。
優穏自身、ぽわーっとした性格もあってか、あまり寂しいと感じることはなかった。
それは姉のような存在の本心が側にいてくれるから、というのも大きな要因だろう。
なので一緒に夜ご飯を食べたいところではあるものの
執事という立場上、一緒に夜ご飯を食べることはなく、1人で夜ご飯を食べた優穏。
しばしの休憩。リビングのソファーに座る。
「本心ちゃん」
「はい」
「オブくん元気?」
オブくんとは、一人暮らしをしている本心の唯一の同居人のハリネズミである。
「元気ですよ」
「ひさしぶりに見にいきたいなぁ〜」
「もちろん。大歓迎です。ま、部屋は散らかってますが」
「私が行くってなっても片付ける気はないのね」
と笑う優穏。
「まあ。家族みたいなお嬢様が来るのに、わざわざ片付けませんよ」
と言う本心に、少し嬉しくなる優穏。
「ま、カビも生えてないですし。たぶん。埃も少ないと思うので、別に死にはしませんから大丈夫です」
「すごいハードルが低いね」
「ま、潔癖症の人が入ったら逝くかもしれませんけどね。
けど潔癖症って割とその人ルールなんで。人が握ったおにぎり食べれないって人も
たとえば脇おにぎりをコンビニで売ってるようにパッケージングして
その人に渡せば「あぁ。いい塩気だね」とか言って食べるんですよ。
なのでハウスダストアレルギーとかじゃない限り、見えない埃に気づく潔癖症の人もいないので
ハウスダストアレルギーじゃない限りは死にません。大丈夫ですたぶん」
「なるほど」
納得した優穏だったが
脇おにぎりってなんだろう
と素朴な疑問が頭に残っていた。
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