テラーノベル
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健を追って森を抜けたとき、夜空には雲がかかり、月明かりが消えていた。まるで、彼の心が完全に闇に覆われたように。
「健……どこなの……」
その時、背後から声がした。
『……なんで、追いかけてくんねん』
振り向くと、そこには人間の姿に戻った健が立っていた。
服は泥と血で汚れ、息は荒い。
目は、どこか泣きそうだった。
『俺は……紗羅の傍に居たら、また傷つけてまう。』
「そんなの関係ない!」
思わず声を荒げる。
「健がどんな姿になっても、私は……離れない。」
健は目を伏せ、握りしめた拳を震わせる。
『……アカン。俺は呪われたオオカミや。人間やない。』
「じゃあ、その呪い……私が解く」
紗羅の言葉に、健は驚いたように顔を上げた。
その瞳に、一瞬だけ希望の光が宿る。
しかし……
次の瞬間、遠くから村人たちの怒号とたいまつの光が近づいてきた。
【その男から離れるんだ〜!!】
健は、紗羅の腕を掴み森の奥へと再び走り出した。
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