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『海に行くんですか?』
海が見えたから、そのままの質問。
「んー、まぁ。」
『そうですか…』
「どーしたよ」
海は、あんまり好きじゃない。
だって、潮風で髪がベチャベチャになるし、なにより嫌な思い出があるから。
せっかくセットしたのに、崩れるのは嫌。
『ううん、楽しみです』
「ならよかった 笑」
ほんとは「行きたくない」って言えたらいいんだけど、言ったら迷惑だから。
そんくらいは、雰囲気だよ。
・
「ついたー」
先生は、海がよく見える花屋さんに車を停めた。
ここから、歩いていくんだろうか。
『⋯歩き、ですか?』
「ううん。ここだよ」
『ここって…花屋さん、?』
「うん。花、買ってかないとな」
どうしてお花なんて。
まぁ、車の中で聞こっか
『ユウゼンギク ですか?』
「そう。若者に負けぬ元気、老いても元気で」
『花言葉…?』
「うん。俺と同代の人だから」
聞きたくなってしまう。
その花は、誰に向けての花なの。
『誰へ、ですか。』
「まだ知らなくていーよ。これからわかる」
知りたいから聞いたのに。
意地悪
今日は、買えないけど
もし買うなら先生に何の花を買おう。
そんなことを考えるのも 彼女 である私にとっては嬉しいばかりだった。
・
車
「深澤 覚えてるでしょ? 」
『前、来てくれた先生ですよね。覚えてます』
「そいつが、旅館やってるのは知ってる?」
『知ってます。家の事情…とかで。』
深澤辰哉 先生。
この前、渡辺先生の家へ行った時に会った人。
大人にはいろんな事情があるって教えてくれた
「今からそいつの旅館行くから」
『えっ…!?』
『今から旅館に行くんですか !?』
「うん 笑」
先生は、嬉し、楽しそうに笑う。
『ってことは…お泊まり、ですか。』
「まぁ、そーゆー事だね。」
なんで、そんな普通にしてられるの。
初めてのデートで
初めてのお泊まり。
コメント
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元カレとの初デートを思い出しました 私の場合旅館じゃなくて温泉だったけど、今思えば初デートにしては随分大人な所に行ったなって思ってます 相手が結構年上だったからってのもあるのかもしれません ほんと、しょっぴーと同じくらいの年齢だったな なんだか感傷的な気分になってしまったけれど、今では良い思い出です
えぇ!?お泊まりは最高すぎじゃない!?😵💫💖