放課後、人気のない教室。
机の上には、事件に使われたカッター。
なつはそれをじっと見つめていた。
「……俺、なんでこんなことに……」
小さな声が漏れる。
(誰も信じてくれない。すちでさえ、あんなふうに……)
胸の奥がぎゅっと締めつけられ、涙がにじんだ。
手が震えながら、カッターへと伸びる。
その瞬間——。
「なにやってんだ、バカ!」
ガシッと手首を掴まれた。
顔を上げると、そこにいたのはいるま。
真剣な目で、なつを見つめている。
「……やめろ。そんなことしても、何も変わらねぇだろ。」
「で、でも……俺、もう誰も——」
「俺がいる。」
短く強い声。
その言葉に、なつの心の堤防が崩れた。
涙が溢れて、いるまの胸に飛び込む。
「……信じてくれるの、いるまだけだ……」
「当たり前だろ。俺は絶対、お前を疑わねぇ。」
その瞬間、なつの世界にはいるまだけが光のように見えた。
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