テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

君にだけ、氷の微笑

一覧ページ

「君にだけ、氷の微笑」のメインビジュアル

君にだけ、氷の微笑

55 - 第27章:追跡の果てに2

♥

25

2025年09月30日

シェアするシェアする
報告する

加藤の追跡を断念して自宅に帰り、自室に引きこもった。机の上に並んだノートとペン、そしてスマホ。窓の外はすっかり夜になっている。時計の針は十一時を回っていたが、眠気は一切ない。

加藤と喋っていた身に覚えのない男の横顔が、何度も浮かんでは消える。


(あれは……どこかで見たのだろうか?)


目をつぶって、記憶の引き出しをひとつずつ開ける。文化祭の人混み、部活動の合同会議、駅前のバス停――断片はどれも繋がらず、焦燥だけが否応なしに募っていく。


俺はノートの左端に「条件」を書き出した。


・背が高い(加藤と同じか、少し上)

・白いシャツ、癖のない立ち姿

・左手人差し指に細いリング(光の反射で見えた)

・加藤と自然に会話 → 初対面ではない

・奏の名前を口にしていた


右側には「候補」を列挙する。まず、生徒会関係者。だが条件に合う者はいない。次に、奏や加藤と関わりのあった他学年。数人該当したが、リングの条件で外れる。


(やはり……有朋学園の外になるか)


そう仮定を立てながら、スマホでSNSを開く。加藤のフォロー欄を遡り、顔写真や集合写真を一枚ずつ丁寧に確認していく。表情や服装は違っても、立ち姿や手の癖までは隠せない。


五十件ほど流したところで、心臓が一瞬跳ねた。海辺で撮られた集合写真。中央に立つ背の高い人物――その左手人差し指に、あの細いリングが嵌められている。


(……いた!)


名前はハンドルネームだけ。タグには「K」とある。ノートに大きく「K」と記し、赤丸で囲んだ。今日見た輪郭と、写真の姿がピッタリ重なる。もう疑う余地はない。


(こいつが――“裏”だ)


それでも、声に出すのを躊躇った。今ここで奏に知らせるべきか。だが、根拠はまだ薄い。間違いなく危険を伴うせいで、奏を巻き込みたくはない。


その逡巡が、胸の奥に重く沈んでいった。


窓の外で、犬の鳴き声が遠くに響いた。それを合図のように、ノートを閉じる。


(明日からの動きは、この“K”を中心に回る。……必ず、奏の周りから引きはがす)


部屋の明かりを落とした瞬間、机の上のスマホが点滅した。通知のアイコンは、すぐに消える。


(誰かに……見られているのか?)


咄嗟に思いついただけで、胸の奥に冷たいざわめきが広がった。暗闇の中で、赤丸で囲まれた“K”だけが、不気味に光って見えた。

loading

この作品はいかがでしたか?

25

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚