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永井くんに優しく、激しく抱かれて毎回おかしくなる。このままじゃどうにかなりそう。
復讐の第二幕に、いったいいつ入るのか訊ねても、まだと言われるだけで先に進んでいない。
どういう計画でいるのか、いまいちわからないままでいるのが少し不安だ。
そうこうしているうちに終業時間。今日は第三金曜、ノー残業デー。
永井くんは営業先から直帰するそうで、ご飯を作って待っていてくれるらしい。
ノー残業デーにあやかって、ほんの少しだけ仕事をして退勤する。
最寄り駅のロッカーから荷物を取り出すのにも、ずいぶん慣れた。
永井くんのマンションへの行き方も、すっかり覚え、近道を見つけたほど。エレベーターに乗ると、毎回ドキドキして胸が痛いくらい鳴る。
サブスク契約を結んで約一月。玄関で抱かれたり、バスルームに押し込まれたり、ソファで抱かれたりして部屋のいろんなところでセックスした。
永井くんの性欲は留まるところを知らない。真昼間から抱かれたり、朝まで抱き潰されたりと、初めてのことばかりする。
私の身体は、すっかり彼のことを覚えてしまった。営業先で彼のしなやかな指先を見るだけでお腹がうずいたのは内緒だ。
私、このままで大丈夫かな。卑猥になりつつある、いやもうすでに卑猥に仕立て上げられた自分が少し怖い。
──ピンポーン
部屋の前のインターホンを押すと、パタパタと駆け寄る音がして、ドアが開く。
「おかえり」
穏やかに出迎えてくれた永井くん。そのかわいらしい顔にきゅんとする。今のは反則だ!!
「あ、あ、た、ただいま」
「ご飯まだなんで、ソファでゆっくりしててください」
リビングに入るといい匂いがしている。
「今日はアヒージョにしますね」
「やったー!!」
「パエリアもありますよ」
永井くんは料理上手だ。もともと食べるのが好きらしく、自分で作るうちに上手くなったらしい。
ローテーブルに並んで食べるのが最近のお決まりのパターン。今日はワインを開けて乾杯をした。「花音、来週から第二幕に突入します」
「……んんっ!!」
食べていたものを喉に詰まらせそうになって、あわててワインを流し込む。
「あ、そ、そうなんだ」
「はい。花音が仕事を頑張っているという話をあちこちで聞くようになりました」
なんだか少し嬉しい。仕事で褒められることはあまりなく、自分の行いに自信が持てていなかった。そう思われているのならありがたい。
「それに、ちょっとかわいそうとも言われてますよ」
「かわいそう?」
「風見さんが花音と別れてすぐ、美濃さんと付き合っていることが、社内にも広まっています。第一幕の目標はほぼ達成です」
褒められたのか褒められてないのかわからないけれど、とにかく頑張りは認められているらしい。
「明日は名駅のデパ地下行きましょう」
「え? デパ地下?」
「第二幕スタートです」
なんで第二幕のスタートがデパ地下? そう思って首を傾げる。
「たぶん2時半くらいに行けばいると思うんですけどね」
「誰が?」
「人間スピーカー、山田さんです」
「????」
なんだか訳がわからない。詳しく説明してくれと永井くんを急かした。
「|人間スピーカー《山田さん》は、土曜日の午後、よく名駅のデパ地下に行ってスイーツを買うそうで」
「はぁ」
「そこへ行って、俺らの姿見せてきましょう。あとは自動運転です」
「いや、あの、えっ?」
あまりのことに脳内がはてなだらけになる。私たちの姿見せて自動運転?「明日、いや今からさっそく恋人契約を追加して始めましょう」
「えええっ!? い、いまから?」
先月、永井くんから提案された第二幕は「契約恋愛」だった。
永井くんと、私が付き合うことになったと周りに認知してもらうことが第二幕の目的らしい。
「山田さんが来週中には噂を広めてくれます。周りに関係性を聞かれたら、付き合い始めたと話してください」
「えっと、いや、あの……」
「ランチタイムは必ずリフレッシュルームで一緒に食べましょう」
永井くんは外に出ることも多いけれど、社内にいるときは一緒にランチをし、そうでない時も私はリフレッシュルームで社内の人とコミュニケーションを取るように言われた。
「サブスク契約に『恋人』も追加するってこと?」
「そうです」
「いや、えっとつまり……」
「俺の彼女として振る舞ってください」
外では手を繋ぐ、腕を組む。デートに行く、おそろいのものを持つ、外に食事にでる、などなど。いたってまじめに永井くんはあれこれと項目を上げていく。
はぁとか、えっ? とか、素っ頓狂な返事しか出来ずにいる私を置いてけぼりにして、永井くんはどんどん話を進めていった。
「デパ地下だけじゃなくて、ホワイトデーのプレゼントも見にいきましょう」