テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「恵を宜しくお願いします」
母が頭を下げ、他の家族も同様にする。
「私から『結婚前に一年は同棲を』と言ったけれど、三日月家の皆さんとお食事できる機会があったら、ぜひ教えてね」
「はい」
「さ! 今日は海キャンプだし、今度こそ水着になって行ってらっしゃい! 真剣な話は、しかるべき場所で、きっちりとした服を着てしましょ」
「それもそうですね。行こうか、恵ちゃん」
「え、あぁ、はい」
急に話を振られた私は立ちあがる。
「孝志さんと恭祐さんも行きましょう」
「っていうか、涼さんのほうが年上なんですし、呼び捨てにしてくださいよ。ソワソワしちゃいます」
恭兄がそう言うと、涼さんはエア壁ドンをした。
「……恭祐」
「トゥンク……」
「はいはい、私先に行ってますからね」
私はビールをグッと呷ると、「お腹いっぱいだ~」と言いつつテントに向かって歩く。
テントに着くと中に入り、ファスナーを閉めてから水着を出す。
(涼さんの前で下着姿にはなったけど、水着は初めてだな……)
例によって服や下着もだし、水着も沢山涼さんに買い与えられた。
その中から、言い方は悪いけど一番マシなのを選んだ。
大体のビキニは露出が多くて、朱里みたいなナイスバディなら似合いそうだけど、私が着たら、雰囲気とちぐはぐになりそうで怖い。
露出するのが恐いからといって、ミニスカートみたいなフリフリのも抵抗がある。
なるべくシュッとした、スポーティーなのを……と思い、選んだのがボトムが黒のボーイレッグで、トップがボタニカル柄のホルターネックになっている奴だ。
胸元にフリルがあるけれど、それぐらいなら許容範囲で、むしろ胸のサイズを誤魔化せるのでありがたい。
着替えた後は、泳げない訳じゃないけれど、海でガチ泳ぎするつもりはないので、浮き輪を膨らまさないとならない。
海水で顔を濡らしたくないので、浮き輪に乗ってプカプカして遊ぶつもりだ。
「よし」
着替え終わって鏡で確認したいけれど、テントなので仕方がない。
ファスナーを開けると、目の前に涼さんのお尻があって「うわっ!」と声が漏れた。
「あ、終わった? しっかり見張ってたよ」
「ど、どど、どうも……」
彼は私が浮き輪を持っているのを見て、「ちょっと待って」とテントの中に入った。
そして掌サイズの何かを出す。
「これ、電動式の空気入れ。便利だよ」
どうやらケーブルで充電するタイプらしい。
涼さんはノズルを浮き輪の空気入れにセットすると、底にあるボタンを押す。
空気入れの上部から空気を吸う仕組みらしく、みるみる浮き輪が膨らんでいく。
「凄いですね。こういうのもチェック怠ったら駄目ですね」
アウトドア用品の新作には目を光らせているつもりだけど、思いの外知らない商品はあるものだ。
「それにしても……」
涼さんは一歩離れて私をしげしげと見てくる。
「いいねぇー……」
「しみじみと言わないでくださいよ。エッチ」
「恵ちゃんにもっと『エッチ』って言われたい。滾る」
「滾らんでええ」
「いやー、でも恵ちゃん可愛い。スタイルいいよね。こう……、引き締まった脚がスラッとしてて、脚舐めたい」
「最後にサラッと恐い事言わないでください」
「将来、プールつきの一軒家に引っ越そうかな……」
「そんなアメリカナイズな家、求めてませんって。着替えてきたらどうですか?」
「はーい」
涼さんのいい返事を聞き、私は手に持っていたラッシュガードを着る。
なるべく露出の少ない水着を選んだとはいえ、ビーチまでは少し歩かないとならないし、水着のままとはいかない。
「お待たせ~!」
思ったより早く着替えた涼さんは、ラッシュガードと短パンを穿いた私を見て、分かりやすく落ち込んだ。
「せっかくの水着が……」
「露出したまま歩きたくないので」
私は掌を彼に突きつけ、きっぱりと言う。