<リクエスト>
《助けが求めれないから》※暴力要素少々🈶毒親注意
《ウェン》
「…ただいま」
誰も居ない家に小さく呟いて入っていく。階段を登って2階にある
自室に荷物を置いてから下へと降りていく。ぎし、と年季の入った
階段が悲鳴をあげるがそんなものは気にせず青年は台所へ向かい
冷蔵庫を開く。中には温めて食べてくださいと書かれた料理。
それを青年は無言で取り出し電子レンジへ入れる。その間も
青年は特に何をするでもなく椅子に座り少し伏せた状態で時計を
眺めるのみ。彼の両親は毒親であり、父親は暴力まで振るうような
家庭である。そんな家の中で育った彼はいつしか自身の感情を
殺すことを身につけてしまった。学校は楽しいのだ。みんなといる
時は何も気にしないで自分で居られる。けれど家では許されない。
今まで自分の意見はないかのように扱われてきて今更何かを
変えたいなどと考えたこと彼は1度もない。小さな頃は この状況が
耐えれなかった。痛くて泣きわめけばまた殴られる。そんな状態が
続いたため小学四年生頃から家では人形になれた。もう彼に
逃げる術など残されてはいなかった。彼は親に取り憑かれているが
それ以前に彼自身の優しさに取り憑かれているのだ。彼は
彼自身にとって大切な人が傷つくことが何よりも嫌なのだ。
だからこそ話すことが出来なかった。助けを求めもせず17年もの
時が流れた。今更どうこうできる話では無くなってしまったのだ。
そうやって過ごしていればチャイムがなる。彼の母親だ。
彼の瞳が一気ににごり真っ暗になった。はい、感情のない声で
答えて玄関を開ける。目の前には仕事帰りの母。アレやって
これやって、あれはやったのか、口外はしてないか、良いように
使われ、彼自身のやったことを確認され完全に母親の管理下に在る。
漏らすわけが無いのに律儀に確認してくる。バレたら洒落じゃない
ことも分かっているのに、そんなにバカに見えるのだろうか。
いや、彼のことをちゃんと見ていないからこそ聞くのだろう。
…もう、部屋に行っていいらしい。彼は少し気分が楽になった。
父親が帰ってきた。行きたくない。何もしなければほとんどの
場合は大丈夫なのだ。ほとんどの場合は。酔っていれば話は 別。
遠慮なしに殴られ蹴られる。血まみれになるのなんて当たり前で
ろくに手当もしないからいつもアザになるし、
腫れたところは冷やして抑える。傷は消毒するしかなくて。
学校行く時、痣はファンデーション、傷は絆創膏かガーゼで隠す。
理由なんて簡単につけれるから。猫にやられただの、転んだだの。
「ウェン」呼ばれた。震える肩を強く押さえつけて階段を
下っていく。ふと見えた父はなんだか機嫌が良くすこし安心した。
「おかえりなさい」と、口にして当たり前の会話をする。
父の機嫌を損ねればOUTなので気をつけて喋る。不思議と瞳は
暗くなっていた。どんな父でも一概に大丈夫とは言えず。
毎日溢れ出そうな恐怖を無理やり押さえつけるしかないのだ。
自分の中にある感情に一切目もくれないまま一日を終える。
それでしか、青年が自身を守ることは出来ないのだ。
そろそろ寝ようとして電気をけして布団に潜った。その際に
ふと思い出したことにすこし憂鬱な気分になる。
明後日友達が遊びに来る。その時に、自分が平気で居れるか
分からなくてあの頃の、青ざめるような懐かしい恐怖を感じた。
考えてもどうしようもできないから明日父親に言わなければ
ならない。ちゃんと伝えておきたいのだ。手を挙げるならば
自分だけにしてくれと。友達はやめてくれと。面と向かって。
コメント
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うわぁ〜!ありがとう!私こうゆうの性癖だからほんと嬉しいんだよね!しかも推しの!ガチありがとう!天才!