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翌日の朝。
ラティア達はラパニア国へと向かう為にラパニア国行きの船に乗り込んだ。
船の甲板から晴れ渡る空を見上げると、青白い空の色がラティアの青色の瞳に映り込む。
時折吹く心地良い風によって、靡く自身の金色の髪を左手で押さえながら、ラティアは右隣に立つ己の近衞騎士の一人であるハレクに話しかける。
「ねえ、ハレク、貴方は宝石の病のことをどう思う?」
「そうですね、治し方が解明されていない病という点で、怖いとは思いますが。どの病も治そうとする行動を起こさなかったら悪化すると思われます」
「そうよね」
✾
一方、ラティアの護衛騎士のベルロット、バロンとディークは、船の中の食堂でラパニア国へと着いたら、目的地である女神の宮殿が建つアバール砂漠まで、どういうルートで向かうかを話し合っていた。
「この道で行けば、最短三日でフィリアント国へと辿り着くことが出来きますね。俺は良いと思うのですが、お二方はどう思いますか?」
ディークは食堂の机に広げた地図を指差しながら、正面に座るベルロットとバロンを見る。
そんなバロンとベルロットはディークの問いに首を横に振る。
「私も早く着くことが出来るという点としては、良いとは思いますけど、この道で行くとなると、少し危険が伴うかもしれません」
バロンの言葉に右隣に座っていたベルロットも頷きながら、付け加える為、口を開く。
「ラパニア国からフィリアント国に行くには、国境付近の橋を渡る必要があります。この橋がある付近は治安がとても悪いんですよ」
「そうなんですね。けれど、治安が悪くても、ここを通って行けば早く目的地に着くことが出来ます。俺は、この道で行くべきだと思うのですが」
治安が悪いという二人の心配事を聞いても、ディークは己の意見を突き通そうとする。
ディークの何処か焦りがある声色が目の前にいるベルロットとバロンにも伝わったのか、二人はディークに対して問う。
「何を焦っているのですか? ディーク殿はこの経路で行くべきと仰られましたが、この経路で行くべき理由が何かあるのでしょうか?」
「もし、何かあるのであれば、申して下さい」
「この経路で行くと間に合わないかもしれません」
ディークは静かにベルロットとバロンにそう告げて、理由を話し始める。
「宝石の病を治すことが出来るかもしれない女神の宮殿へ行っても、病を治すことに必要不可欠の不思議な光が降り注ぐ期間は決められているんです。それを逃してしまうと、何か一つ代価を払わない限りは、病を治すことが難しくなるかもしれません」
病を治したいという気持ちで行くという選択をしたラティアに、悲しんで欲しくないという思いがディークの中で強くあった為、多少の危険はあったとしても、確実に間に合う道筋から行きたいとディークは思っていたのである。
「あと、四日、もしくは六日までの間に着かなければ、治すことが出来る確率が低くなります」
宝石の病を治すには、いくつかの条件がある。
一つは女神の宮殿付近で不思議な光が降り注ぐ期間であること。
二つ目は星が隠れていない夜であること。
三つ目は病に侵されている者以外の人間が必ず一人は側にいること。
この三つの条件がクリアされていなければ、病を治すことは出来なくなるかもしれない。
ベルロットとバロンはディークの言い分を聞き終え、ディークが提案した経路で行こうと決めたのであった。