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「……あんまり褒めない」


尊さんにジロッと睨まれた私は、嬉しくなってニヤァ……と笑ってしまった。


「嫉妬してます?」


「してるよ」


彼はチッと舌打ちしたあと、私の頬をモチモチと弄んだあとに手を放す。


「あー、はいはい」


恵は呆れたように言ったあと、しげしげと涼さんの写真を見た。


「……でも本当に美形ですね。これは二次元だわ」


「でもシュールストレミングいくんだぜ。すげぇだろ」


「臭いイケメンって貴重かもですね」


恵は真顔で頷く。


「まー、あいつも周りからどう思われるか全然気にしてねぇな。こんな顔で不動産会社のボンボンだから、子供の頃から嫌ってほどモテて、今はもうモテとかまったく意識してねぇんだよ。むしろ原っぱで虫を追いかけてるタイプだ」


「虫!」


あまりのギャップに、私は手を打ち鳴らして笑ってしまう。


「いやー、お会いしてみたいです。勿論、尊さんが心配するような意味じゃなくて」


私がそう言うと、尊さんも嬉しそうに微笑んだ。


「変人だけど悪い奴じゃねぇし、慣れたら面白いから、俺としてもぜひ会ってもらいたいよ。数少ない友達だし」


すると恵が突っ込む。


「篠宮さん、聞いてるこっちが寂しくなるから『数少ない友達』なんて言わないでくだささいよ」


「悪い。……いや、海外も含めるともうちょっといるけど」


「海外!」


私は思わず復唱して目を見開く。


「……あ、そっか。例の海外旅行の流れで」


「そうそう、色々習うのにそこそこ長く滞在してるから、顔なじみができるんだよ」


ハッとして恵を見ると、よく分かっていない顔をしていたので、私は慌てて「ごめん」と言って、尊さんがダンスを踊れる事などをサラッと話した。


「ふーん、歌って踊れる部長ですか」


「ちょ……っ、恵! 私、芸人さん思いだした! 係長だけど!」


「「ぶはっっ」」


三人同時に同じ芸人さんを想像して、しばし震えながら笑う。


笑いながら、この三人でたわいのない会話をして笑顔になれる事が、とても嬉しかった。


(良かった)


微笑んだ私は、「リゾットたーべよ」と明るく言ってスプーンを持った。


モリモリ食べていた時、恵が私を見て半眼になり、尊さんに言う。


「朱里、よく食べるでしょう」


いきなり何を仰る。


「そうだな。や、食わねぇより全然いいから、健康的でいいと思うけど」


ちょっと気にしてはいたので、一瞬ピクッとしてしまったけれど、尊さんの返事を聞いて彼がかつて言っていた事を思いだした。


『俺の母親があんまり食えない人だったんだよ。線が細くてか弱いイメージの人だった。……だからかな、お前が美味そうにパクパク食べてる姿を見ると、安心するんだよ。もっと食わせたい』


年末におうちデートしていた時の事で、あの時の尊さんの少し寂しそうな顔は胸に残っている。


だから、わざと茶化すように言った。


「それが何か? 食べ物に感謝しておいしーくいただきますが」


こっくりとした濃厚なチーズのリゾットを食べつつ、そんな事を言うものだから、二人とも横を向いて噴き出した。


ひとしきり笑ってから恵が言う。


「篠宮さん、朱里の手料理食べた事あります?」


尋ねられて、尊さんは軽く瞠目して私を見た。


「……そういえば、一から十まで手作りっていうのはないかもな。合同作品ならあるけど」


「ですね」


尊さんの家に行った時、彼は私一人に料理を作らせたりしない。


そもそも家政婦さんがいるから料理をする機会はあまりないけれど、それでも台所に立つ時があるなら二人で……だ。


『いつか朱里の手料理食ってみてぇな』と言われた事はあるけど、私がソロで料理した事はまだない。


「……なんか問題あった? 私、恵と何回もお泊まりしてご飯作ってるけど、……そんなに不味かった?」


不安になって恵を見たけど、彼女はちょっと言いにくそうに視線を逸らし、溜め息をついてから言う。

部長と私の秘め事

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