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「あなたの病気は、一度大学病院へ行き、医者に見てもらった方が良いと考えたため、一度病院に受診をお願いします。」

そんな紙が、何十枚も重なって捨ててあった。

下に書いてあるのは、父の名前。

何度も繰り返し読んだ。

どういうことなのだろう。

そう、固まっていると、母が「あ…」と、小さくつぶやいた。


隠していたわけじゃない。でも、今そのことを話したら、あなたのうつ病まで悪化する。だから言わなかった。そう母は言った。

私は、笑おうとした。

そっか。わかった。って言おうとした。

でも、体が言うことを聞かなかった。


「ふざけないでよ………

そんなの隠されてる方が嫌なんだよ!

これ以上、隠し事しないでよ…!」


私の本音を、ぶちまけてしまった。


走って私は自分の部屋に行き、自分の部屋のドアを閉めた。

まるで、周りの音をシャットダウンするように。


私は、本が好きだった。

周りの音が聞こえないから。

寝ることも、楽器を弾く時も、目を瞑ることも。

だって、そうすれば雑音が入ってこない。

そうすれば、傷付くこともない。


「隠さないでよ」か。

きっと、自分に向けた言葉なんだろうな。

でも、隠さない、なんてできない。


背負いすぎて、潰れてしまいそうな気持ちも、泣きたい気持ちも、叫びたい気持ちも、すずとみさきと、また話したい、笑いたいって気持ちも。

全部、全部、隠しすぎている。


隠さないでよ、私。


そう、心に問いかけた。


ため息をついた。

あんなこと、言うつもりなかったのにな。

そう思いながら、鏡の前で笑ってみた。


「あーあ、やっぱり。」


そう、呟いた。

最近、私は本当の笑顔で笑えない。

もちろん、面白い時とかは笑うのに。

家では、うまく笑えない。

なんでだろう。

今まではちゃんと心の底から嬉しそうな顔、できたのに。


なんで、できなくなっちゃったんだろう。


「笑顔はね、本当に嬉しい時にしかできないの。

作り笑顔は、無理しているのを隠して作った仮面みたいなの。

そんな笑顔はね、薄っぺらくって、虚しいものなんだよ」


そう、言ってくれた夏葉ねえは、いつだって輝いていた。

なのにあの人が死んでしまうなんて、この世界、どうかしてる。

せめて、交通事故なら納得できたのに。

自殺、なんて。


夏葉ねえの言葉はまるで宝物みたいに大切な思い出。


夏葉ねえが今まだ生きていたなら、


私はもっと違った人生だったんだろうか。


そう、心の中で呟いた。


声に出すと、本当になってしまうかもしれないから。


「我慢しないで、辛かったら言ってね」と大人は言う。

違うんだ、と私は思う。

我慢してるんじゃない。

言葉にしたくないんだ。

言葉にしたら、「事実」と言う枠に当てはまってしまうから、言葉にしないんだ。

無価値の私と、大切にされてきた君の嘘だらけの物語

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