あの悲劇から3年。私は12才になった。
あの日から、私はまるで別人になったように猫を被るようになった。
お母様への態度も柔らかく、優しく、居心地よく、お母様のお気に入りになれるように。
メイドたちにもお淑やかに、笑顔で、優等生になったみたいに。
全てはお前たちに復讐するため。
そう思えば、どんなことをするのも辛くなかった。
お母様のお気に入りになれたのか、私は朝食の席と夕食の席に出ることができるようになった。
その時もお母様に媚を売った。
授業も毎回出るようになって、先生からも沢山褒められるようになった。
私は、優しくて可愛くて、お淑やかで柔らかい、『理想の女の子』になってあげた。
屋敷中のみんなが喜んだ。
私も嬉しかった。もちろん、表面上では。
私の心の深奥には、いつもいつも憎しみがあった。
ライラのことを考えないことはなかった。
私の唯一の大切な友達のために、全てを壊してやろうと思った。
ライラの死に関わった者は一人残らず、消し去ってやろうと思った。
その為にだったら、どんなことでもしてやろうと決意した。
「おはよう、アリア。今日も元気ね」
「おはようございますお母様っ!」
たったった、と軽やかな足音を立てて私は女に飛びついた。
「えへへ…お母様、元気ですかっ?」
無邪気な柔らかい笑みを浮かべて、私は女に聞く。
「えぇ、元気よ。だけれど、女の子なのだから人に飛びついてはいけないわ」
「はーい、お母様!」
黒髪を腰まで伸ばして豪奢な装飾をつけた女に、私は愛想良く返事をする。
まるでライラになったようだった。
「いい子ね、アリア。どうしたらこんな愛想良い子が生まれてくれるのかしら?」
簡単だ。ライラはどうするか考えればいい。
ライラだったら、ここで笑うんだろう、とか、ここで悲しそうな顔をするんだろう、とか。
そんなことを考える度に、ライラの命を奪った奴らへの憎しみが増して行く。
「うーんとね、お母様の子供だから!!」
「あら、そうなの?じゃあこれからもずっといい子でいるのよ」
にこっと私は笑う。えぇ、ずっとずっと、貴女が死ぬまで。その最期の瞬間まで、ずっといい子でいてあげる。いい子のふりをしてあげる。可愛い、可愛い、愛娘のふりをね。
「私そっくりになって頂戴ね」
「はーいっ!」
どうかどうか、貴女が極上の苦しみを味わって死にますように。
ライラの何十倍、何百倍と苦しんでくれますように。
ライラと同じ場所に行けませんように。
「さぁ、そろそろ朝食にしましょうね」
まるで幼子のように柔らかく、優しく、そして温かく。
母親が欲しがった娘のように、私は笑った。
「はーい!お母様っ!!」
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