「――これで、授業を終わります」
ゴーン、ゴーン、ゴーン…と、聞き慣れた音が学院内に響き渡る。
「先生、有難うございましたっ!」
「えぇ、アリアさん。あなたが私の想いを分かってくれて嬉しいわ。根は優しい子だと思っていたのよ」
私の想い?よく言うものだ。よくも私の母親なんかに金を貰いたいからと私に媚を売って、それが無駄だと分かってからはずっと苛めてきた癖をして。お前の想いなどライラと比べれば塵のようなものだろう。
「はい、先生。ありがとうございます!」
こんな小芝居に騙されるくせに、よくもまあ公爵家の教師などやっている。
「先生、さようなら!!」
にこにこと幼い笑みを浮かべて教師に優しく手を振る。
「さようなら」
気味悪い笑みを残して教師も手を振った。
「あっお母様!!」
「アリア」
まるで待ち伏せしていたかのように教室の前で女が笑顔を見せる。
「お母様、迎えにきてくれたんですかっ?」
言いながら、私は女に向かって走って行く。母親が私に手を繋ぐように促した。
それに従って私は女の手を取る。
「そうよ。大切な愛娘だもの」
「ありがとうございますっ!お母様!!」
私は温かい笑みを浮かべた。にこっと彼女に笑って見せれば女もこちらに向かって笑った。
「さぁ、馬車が待っているわ。行きましょう」
「はい、お母様!」
ガタン、ガタンと馬車に乗って屋敷へと向かう。
馬車が事故を起こせばいいのに、と考えてやはり思い直す。
そんな生温い死に方は復讐にはならないな。と考えた為だ。
それにこの馬車が事故を起こしたら私も死んでしまう。特に後悔もなければ死への恐怖もないが、死んでしまっては他の者たちへの復讐ができない。それでは勿体ない。
ちゃんと全員殺してあげなければ。一人一人、次は自分だろうか、それとも。とそんな恐怖を是非とも味わって欲しいのだ。
「お母様!あのね、あの、今日…先生に褒められたんです!」
「あら、そうなの?じゃあご褒美をあげなきゃね」
「本当ですか!?」
女はにこりと優しい笑みを浮かべる。
その笑みが、私は世界で一番大嫌いだった。
「えぇ、本当よ。貴女に掛け替えの無いものをあげるわ」
掛け替えの無いものはもうとうに失った。
お前のせいでな。
「ありがとうございます!お母様っ!!」
仁愛に満ちた優しい笑みで、女は私に答えた。
「お母様!今日もお母様の部屋に行ってもいいですか?」
「えぇ、もちろんいいわよ」
甘えたの時期なのね、と女は上機嫌に呟く。
勿論だが甘えたいのではない。
女の部屋に何があるのか把握しておきたいだけだ。
屋敷の中全てを把握して、いずれ崩壊させてやろう。
ライラにしたのと同じように、お前たちもそうなるべきだ。
毒で苦しんで喉を掻き切りたいと思うくらいに。
もっともっと苦しんで壊れてくれたら良い。
それだけが私の願いだから。
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