テラーノベル
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門が開く。
その言葉だけで。
誰も動けなくなった。
旅僧は札を見つめる。
見間違いではない。
確かに書かれている。
『真名を守れ』
『思い出せば』
『門が開く』
静寂。
風すら吹かない。
渡守が目を閉じる。
苦しそうに。
何かを諦めたように。
そして。
小さく呟いた。
「やっぱり」
旅僧が振り返る。
「知っていたのですか」
渡守は頷く。
鐘撞きも。
墓守も。
お師さんも。
皆。
黙っている。
それが答えだった。
旅僧の声が震える。
「何故」
静寂。
「何故、言わなかったのです」
答えたのは。
墓守だった。
「言えなかった」
風が吹く。
「言えば」
空を見る。
巨大な瞳を。
「思い出そうとするからだ」
旅僧は言葉を失う。
知れば探す。
探せば近付く。
近付けば。
門が開く。
その時。
佐衛門が聞いた。
「門とは何だ」
静寂。
全員が黙る。
長い沈黙。
やがて。
鐘撞きが苦笑した。
「俺達も全部は知らん」
風が吹く。
「だが」
空を見る。
「昔」
掠れた声。
「開きかけた」
旅僧の背筋が凍る。
開きかけた。
それだけで。
以前にも何かがあったのだと分かる。
その時。
忘れられた岸の少女が俯く。
震えている。
泣きそうに。
苦しそうに。
『ごめん』
静かな声。
『本当に』
佐衛門は少女を見る。
ずっと。
真っ直ぐに。
そして。
初めて聞いた。
「お前は誰だ」
静寂。
少女の肩が震える。
旅僧も息を止める。
聞いてはいけない。
そんな気がした。
だが。
もう遅かった。
少女は顔を上げる。
涙を拭う。
そして。
微笑んだ。
懐かしそうに。
泣きそうに。
愛おしそうに。
『私は』
風が吹く。
その瞬間。
世界が軋んだ。
巨大な瞳が。
完全に開く。
川が悲鳴を上げる。
忘れられた岸の人影たちが跪く。
渡守が叫ぶ。
「名乗るな!」
轟音。
少女の声が掻き消される。
だが。
遅かった。
ほんの一瞬。
その唇が動く。
名前を告げる。
旅僧には聞こえない。
お師さんにも。
鐘撞きにも。
墓守にも。
誰にも。
だが。
佐衛門だけは聞いた。
確かに。
はっきりと。
その名前を。
そして。
世界が砕けた。
轟音。
川が消える。
舟が消える。
岸が消える。
全てが白く染まる。
旅僧は悲鳴を上げた。
何も見えない。
何も聞こえない。
ただ。
誰かの泣き声だけが響く。
遠く。
遠く。
雪の中で。
『嫌だ』
静寂。
『行かないで』
その声を。
佐衛門は知っていた。
ずっと前から。
忘れていただけで。
知っていた。
雪が降る。
白い世界。
一人の少女が泣いている。
必死に。
何かへ手を伸ばしている。
そして。
その先には。
もう一人の少女。
黒髪。
優しい目。
笑っている。
泣きながら。
『大丈夫』
静かな声。
『また会える』
雪が降る。
白い。
どこまでも白い世界。
そして。
その少女が。
最後に呼んだ。
『菫』
静寂。
佐衛門の胸の奥で。
何かが砕けた。
その瞬間。
雪の中に落ちていた刀が見えた。
小さな手が。
それを拾う。
誰かの手だった。
見覚えがある。
だが。
まだ顔が見えない。
そこで。
記憶が途切れた。
白い世界だけが残った。
そして。
遠く。
空の向こうで。
何かが。
笑った気がした。
MOMO🩲
ひな
104
けだま15号🍓🐾໊
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夕鳴
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コメント
1件
うわああああああ第25話やばすぎる😭💦!!!! 「真名を守れ」「門が開く」の重みが一気に来た…! 佐衛門だけが聞いたあの名前、まさかの「菫」だったんか…って胸がギュッてなったよ。 雪の中で泣いてた二人の少女、全部つながる伏線がエモすぎて涙出そ…。 誰かと誰かの“鍵”が今まさに開こうとしてる感じ、続きが気になって夜しか寝れん!!!⋆♡ Loneさんの世界観、毎回心臓ごと持ってかれるから反則レベルよ…次話マジで待ってます📖🌸✨