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「紫色のコスモスが咲き乱れる畑で」「君の横顔に見惚れて」
「「永遠の愛を誓う」」
「やーぱっり、まもっちかー」
けっけっけと笑う少女、朝露紫音。
この子は。
「2人はどういう関係!?」
慌てたように蕾さんが俺たちに問う。
しおりんが回答。
「うーん、許嫁?」
「間違いではないな」
「間違いじゃないの!?私がいるのに!?」
「え?つぼっちとまもっち付き合ってるの?」
「まだ正式では無いけど」
「どういう事ー……?」
呆れ顔でため息を吐く。
しおりんに蕾さんとの経緯を説明する。
「ふーん、美咲さんから逃げるためか」
合致したようで腕でポンと叩く。
「そういう事。俺は今日初だったけど、毎日あれは耐えられないな」
「私も毎日は迷惑だし」
「あたしは別にいいけどなー。蕾さんの料理美味しいし」
「そう言って貰えるのはありがたいけど……」
チラチラと俺としおりんを交互に見やる。
黒煙色の髪が不安そうに揺れる。
「あ、あの!さっきのって?」
「さっきの?」
「永遠の愛を誓うとか何とか」
不安なのか、声がどんどん小さくなってゆく。
「あー、あれね。合言葉だよ。再会したら口上しようって」
「それだけで許嫁?」
「まぁ、子供の頃のことだしなぁ」
「僕は割と本気だよ?」
「え?マジ?」
「マジ。と言ってももう長くはn……ゴホゴホ!」
「ほーら無理しない。たとえ余命がもう一年切ってても最後まで笑顔でって約束でしょ?」
桜花姉が再び背中をさする。
「え?しおりんまさか……!」
「そ。ギリギリまで足掻いてみせたけど、限界みたい」
しおりんこと朝露紫音は、生まれつき心臓病を持っていた。
俺が小さい頃、遊び回って怪我する度に、この病院のお世話になっていた。
その時出会ったのがこの目の前の女の子だ。
「君はどこが悪いの?」
「捻挫だって」
「ふーん、すぐ治るの?」
「数日すれば」
「ふーん、羨ましいなぁ」
「そういう君は?」
「心臓病。20歳まで生きられないって」
「え……?怖くないの?」
「うーん、怖いというか虚無?」
「きょむ?」
「怖いとか、怖くないとか、感じないこと」
「ふーん。悲しいね」
「悲しい?」
「うん、人生面白いことたくさんあるはずなのに、それを体験せず諦めるなんて」
「じゃあ、君、僕になにか楽しい事教えてよ。生きる希望ってやつ」
「楽しい事?アニメとかゲームとか?」
これが俺たちの出会いだった。
その時は、夏休みだった。
「じゃあ、次の受診来週だから」
#ラブコメ
こげ丸
梨本和広
「うん。その時にアニメの感想聞かせて」
桜乱れる光景。夏なのに、緑の木の葉は見せず、ピンク色の花びらが舞う。
彼女はお母さんに車椅子を押してもらいながら、別れを告げた。
その時から俺は、テキトーな理由をつけて週一でこの病院に通っていた。
「おっす、まもっち」
「よっす、しおりん」
ソファの横に車椅子を固定して二人で話す。
「あそこで必殺技は燃えたねぇ」
「だろだろ!?あのシーンが最高にかっこいいんだよ!」
「そこの男の子ー。病院ではお静かに」
思わず叫ぶと、看護師さんにすぐ注意されたっけ。
しかし、夏休みも長くない。
俺が本土に帰る週。
「最後に見せたい場所がある」
しおりんはそういい、お母さんに車椅子を引いてもらいながら、島の南東へと赴いた。
そこには、紫色のコスモスがたくさん咲いていた。
潮風と桜。そしてコスモス。
普通ではありえない光景。
「ここに1人の鬼が眠ってるっていう伝説があるんだ。鬼の1人は桜が好き。けど、ここに眠る鬼はこのコスモスの光景を見て、ここでこの花々が咲き続けることを夢見たんだって。それが現実になったんだ。と言っても所詮伝説だから事実は分からないけど」
けっけっけと笑う彼女。
俺はその子の横顔に見惚れて、涙が出ていた。
「どうしたの?」
「いや、もう会えないかもしれないと思うと」
涙が頬を伝い、声調は乱れる。
「じゃあ、もしまた会えた合言葉伝えよう」
「合言葉?」
ゴシゴシと服の袖で、涙を拭う。
「紫色のコスモスが咲き乱れる畑で」
「…………」
「まもっちの番。なんでもいいから思いついたこと口に出して」
「……君の横顔に見惚れて」
キョトンと顔をガン見された。
「じゃあ、最後はお互いに」
「「永遠の愛を誓う」」
俺たちは声を揃えた。
それを見ていたしおりんのお母さんは、大粒の涙を堪えきれず、嗚咽をこぼし口元を押さえていた。
「まもっちに最後会えたし、合言葉も覚えてくれてたし、もう思い残すことは無いよ」
意識は現在いまへ戻される。
けっけっけ。
そう語る彼女の笑い声は強がっていたのか、諦めていたのか、どこか寂しげだった。
「手術はもうしないの?」
「あと1回チャンスはあるって」
「じゃあ……」
藁にもすがる思いだった。
「いや、いいよ。今まで上手くいかなかったし。入院代、手術代合わせて相当な金額支払ってもらってるから、これ以上両親に無理はさせられない」
「俺は君に生きて欲しい」
「え?」
ぐっと握りこぶしを作ってしまう。
「俺、冬休み終わってから高校卒業まで、この島にいるんだ。だから、しおりんと学校通いたいし、桜花姉と蕾さん。4人で笑い合いたい」
「て言ったって、成功率はほぼ0だし」
困ったような返答。
「ほぼでしょ?」
「そうだよ」
「俺さ、スパ〇ボとかポ〇モンとかファ〇エムとか確率絡むゲームしかやってないから、0か100以外信じられないんだよね」
「何その説得……」
栗色の前髪を流しながら桜花姉は呆れていた。
「うんうん、そうだよ」
蕾さんは、頷いていた。
「僕も……僕もそうだよ!本当はもっと生きたい!まもっちとイチャイチャしたい!この島の伝説を解き明かしたい!」
しおりんが涙を流して大声で叫ぶ。病室に木霊する。
それは彼女の本音であり、願いだった。
島の伝説。
ピクっと桜花姉のまゆが動いた。
「紫音ちゃんもおとぎ話信じてるんだ」
「だって、信長の埋蔵金がこの島にあるかもなんだよ!確かめたくない!?」
「それねぇ、確かに夢はあるけど……」
しおりんの夢に蕾さんは呆れていた。
「でもさ、理由はどうあれ、生きたい理由があるなら、最後まで足掻いてみてもいいんじゃない?」
桜花姉の後押し。
「俺からもお願い。チャンスがまだあるなら、それにすがって欲しい。諦めるのはその後だ」
俺は腰を90度曲げる。
けっけっけ。
泣きながら、軽快に笑う。
「そこまで言うなら、6%に掛けてみよう!」
「ガチャの2倍の確率!成功というSSR引けるチャンスだ!」
「どういうたとえ……?」
桜花姉からしたら、ちんぷんかんぷんだった。
それから数日、12月29日。
しおりんの手術が成功したと報せがあった。俺のスマホの着信はしおりんのお母さんからだった。彼女は泣いて喜び、俺に何度もお礼も言ってくれた。
クリスマス?一応蕾さんたちと過ごしていた。
しかし、みんな気が気じゃなくてソワソワしてそれどころではなかった。
桜花姉は島田さんから洞窟の案内を頼まれたが、断っていた。
年末なのに、雪ではなく桜が舞う。
俺たちは急いで病院へ向かった。
「しおりん!」
「しおちゃん!」
「紫音ちゃん!」
ガチャっと病室のドア勢いよくを開ける。
彼女の伸びきった髪は胸の辺りまで、カットされていた。
けっけっけ。
にかっという笑み。
長い桃色の髪をかき分けて、満足気に笑みを浮かべる。
「SSRどころかUR引いたぜ」
Vサインを作り、喜びを表現していた。
「「「本当におめでとう!」」」
けっけっけ。
「お礼を言うのはこっち。みんなが元気づけてくれたからだよ。でもさ」
笑みは一瞬。真顔になった。
「夢を見たんだ」
「夢?」
「麻酔かかってるのに?」
「変じゃない?」
俺、桜花姉、蕾さんの順番で問いかける。
「うん、普通はありえない。麻酔かけられた側は一瞬で闇に落ちて一瞬で戻ってくる。だけど、今回は違った」
「というと?」
「真っ暗闇の空間で、蒼白色の長い髪で、黒いドレスを纏った人がいたんだ」
「ふむふむ」
相槌をうつ。
「その人は、僕に「生きたいですか?」とだけ聞いてきたんだ。僕は、まもっちや皆と一緒にいたい。そう答えたら、ふっと意識が覚醒した。そしたら、驚いた表情の主治医の先生と、泣きながらお礼を何度も言っていた母ちゃんの姿があった」
ポカン……。
「もしかして神様?」
ポツっと俺は呟く
「そんなわけないよー」
冗談めいて反論する蕾さん。
「神様?まさか本当に……?」
桜花姉はボソッとなにかブツブツ唱えていたが、よく聞き取れなかった。
「とりあえず、受験には間に合うかな」
「受験?」
はて?何故に?
「僕は17歳。年齢は立派な高校生だよ。受験しなきゃ、学校通えないでしょ?」
ああー、そっか。
合点いった。
ひとつ疑問が。
「今から勉強して間に合う?」
「けっけっけ。ご心配なく」
コンコン。
タイミングよくノックが響く。
「よっすー、邪魔するぞー」
美咲先生が姿を現した。
さすがに外なのか上半身は肌着ではなく、「ヒナコ」のイラストがプリントされたTシャツ。黒のボトムスだ。
薄紅色の髪は、両サイドから下ろされていた。
「お姉ちゃんどうしたの?」
「どうしたも何も、あたいはそこの浮気相手の家庭教師だ」
「けっけっけ。浮気相手か。いいねぇ」
軽快に笑う病み上がりの少女。
「「良くない!」」
蕾さんとハモる。
「良いも悪いも事実だろう?あたいの可愛い妹と付き合っていながら、朝露さんにプロポーズしてるんだから」
「ぐっ……!でもあれは子供の頃の……!」
「え?あの言葉は偽りだったの……?」
ウルウルとわざとらしく目で訴えてくるしおりん。
「希導」
「なんです?」
「返答次第では、お前はこの世から抹消される」
まじだ。
この人まじだ。
やると言ったらやる凄みがあるッ!
プルルルルルル!
タイミングよく俺のスマホから着信が。
渡りに船だ!
画面を確認すると、母からだった。
「あ、守?」
「どうした?母さん」
「今日仕事納めだから31にはそっち行くね」
ブツッ……。ツーツーツー。
要件だけ言って切りやがった。
「誰から?」
桜花姉の質問。
「母さんから。31にこっち来るって」
「「お義母さんから!?」」
ハモる蕾さんとしおりん。
うん。字が気になるがツッコミはよそう。
「ふっ、大晦日か。親戚になるんだ。挨拶せねばな」
美咲先生も乗る。
黒煙色の髪の少女と、桃色の髪の少女。
そして、薄紅色の髪の女性が、それぞれ楽しみにしていた。
何が起こるの?怖い。