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雪が止み、青空が広がる朝。SNS情報によると電車は動いているようで、私は玄関でローファーに足を通す。
「文、無理してない? 辛かったら、お母さんが学校に……」
「とりあえず、今日は学校に行くよ。ありがとう」
久しぶりに玄関先でお母さんと顔を合わせた私の視界はクリアで、外の空気は冷たくて凍りつきそうだっていうのに私は大きく息を吸って吐いた。
冷たくて喉が痛くなる。だけど、息がしやすくなったような気がした。
だけど学校に着けば途端に空気は重くなり、教室のドアを開ければエアコンによる暖かさが混じった熱気に、むせ返りそうになる。
お母さん、お父さんが私を理解して応援してくれているから窒息せずにこの教室の中に入っていき、刺さるような視線を浴びながら席に座ることが出来た。
「昨日さー、麗華とカフェ行ったんだけど、ノリ良いんだよねー」
「えっ、西条さん? あ、そうなんだぁ……」
「そうそう、レイのこと詳しいしぃ!」
「誰かさんといるより、よっぽど良いわ!」
「早く、麗華来ないかなぁ」
元友達三人は別の女子グループの輪に入り、昨日四人で出掛けたことを教室中に聞こえるように話していた。
「やられた」と言いたげな表情をした別の女子グループは他にもあり、友達三人は昨日のお出掛けを逐一話している。
……ここにいる人たちは、自分の都合悪い記憶は忘れる体質なの?
息苦しいのに、私は思わずフゥーと溜息をついていた。
急に友達になって遊びに行ったりして、それを他グループの子に話してマウント取って、聞いた側は悔しがって。
いやいやいや、麗華のことイジメてたよね? ジャージ隠したり、図書委員の仕事ジャマしたり、クラス全員のノートを失くしたと騒ぎにしようとしたりして、麗華の評価を下げる悪質な嫌がらせしてたよね?
それ忘れるって、相当ヤバくない?
友達になりたいなら、まず謝れよ。
そうゆう筋みたいなものを通さずに、なあなあで元に戻るから、ターゲットは次々と変わっていくんだろうな。
……こりゃ、イジメがなくならないわけだ。
窓から見た景色は、灰色の空だった。
朝のチャイムが鳴っても先生は来なくって、私の悪口大会は一向に止まってくれない。
早く先生が来ないかと廊下をチラッと見ると麗華の席も空いていた。
麗華、まだ来てないんだ。
クラスでイジメられるようになってから教室に来るのはギリギリだったけど、真面目な麗華が遅刻なんて一度も……
話す内容が私の悪口から先生が来ないことに変わっていて、時計を見れば五分以上先生は遅れていた。
川越先生は時間に正確で、こうやって朝のショートホームルームに遅れてきたことなんてめったにない。
「ねえ、ヤバくない?」
「私ら別のグループじゃん。カンケーないしっ!」
昨日、私の頭を叩いて笑っていた女子グループは、私を見ては目を逸らしてきて、先程まで感じていた敵意みたいなものがなくなっている。
……あれ? 他の女子もだ。
普段から関わりがなかった、いわゆる三軍と呼ばれる女子たちも私をチラチラと見ては俯き、なんて言うか泣きそうな顔をしているように見えた。
「全員、席につけ」
やっと来た先生の表情は険しく、慌てる様子もなく、むしろいつもよりドアは静かに閉まった。
一分でも遅れると早歩きでゼエゼエ息を切らせて教室に入ってきて、みんなに「遅くなって悪かった」と謝ってくれるのに今日はそれもない。
「あ、麗華、おはよう! 今日、先生遅かったから遅刻扱い免れたねー。ラッキーじゃん」
教室後ろのドアから入ってきたのは麗華で、元友達三人はずっと仲が良かった友達のように駆け寄ってノリ良く話していく。見なくもないのに、私ってホントどうしようもないな。
「……ごめんなさい」
僅かに聞こえたのは麗華の謝るような声で、頭を深く下げたかと思えば、自分の席に座り机に突っ伏してしまった。
えっ、具合でも悪いの?
次は先生の方に顔を向けるけど、先生は麗華の様子に動じることはなく、早く席に着くようにと急かすだけだった。
いつもは穏やかな先生なのに口調は強くて、だけど目はやたら泳いでて、口元に手を当てて息を整えているように見えた。
全員が席に座ると教室内はシンッと静まり返えっていて、隣のクラスから声が聞こえてくるぐらいだった。
普段ならチャカしてくる一軍グループも今日は何も言わなくて、異様な空気だった。
「まずは、みんなに謝らせてほしい。先生、全く気付いてなかった」
教壇に立った先生は、私たちに深々と頭を下げてくる。
え、何? なんか今日、みんなおかしいよ。
だけどみんなは分かっているようで、ホントに空気が読めない自分にイライラしてくる。
こんなんだから、ダメなんだよね? こんな私だから、イジメられ……。
「だから、今話をさせてくれないか? このクラスであった、……イジメについて」
えっ?
どうゆうことかと顔を上げると、「私らは関係ないしっ!」と突っぱねる子、明らかに目を逸らす子、そして声を出して泣く子までいた。
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