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見覚えのある足が、水面からはえている。
「また自殺か?懲りないな、お前も」
こいつが川を流れている時点で自殺に違いないだろう。
いつも仕事をサボって隙あらば川に入る。
困った男だ、
「太宰」
一応風邪をひくと悪いので、僕の家にあげ、お風呂に入らせてから乾かし、濡れた服は洗濯して、一時的に僕の服を貸した。
この服、社長に貰ったはいいものの、でかい。
だが、太宰にサイズが合って良かった。
お菓子を買って貰うことにした。
さすがの太宰もそこら辺の感謝や罪悪感位は感じるのだろう。
太宰治
こいつは何を考えてるのか、腹のさぐれないような男だ。
以前ポートマフィアに入っていたそうだが、それを感じさせないくらい、優しい。
そんな太宰が、僕は
『ただいま帰りました。これ、お菓子です。』
「ご苦労〜」
『ラムネも買ってきました!』
今日の太宰は妙に気が利く。
今日、というよりか、最近ずっとそうな気がする。
「今日はなかなか気が利くじゃないか。」
『……乱歩さんは、自殺したいとは思わないんですか?』
突然投げかけられた質問に僕は一瞬反応が遅れた。
だが、太宰がいる限り死にたくは、無いよな。
「僕はお前のような自殺志願者じゃないんだ。社長もいるし、楽しいうちは自殺しようとは思わない。」
恥ずかしくて、また思ってることと違う言葉を吐く。
そんな僕が嫌いだ。
『そうですか、』
こんな話をしているが、本当にこいつは死にたいのだろうか。
そんなことが気になって話が頭に入らなくなってきた。
だが、これだけは言っておきたい。
言わないと、いけない。
「生き急ぐな。」
こんな言葉は、太宰には効かないだろうか。
太宰は、この言葉を大切にしてくれるだろうか。
『……分かりました!』
その笑顔、その言葉をきいて、僕は少し気が楽になった。
僕は太宰が、好きだ。