「……。」
「………。」
嬉しいニュースを聞いたはずなのに、
なぜ帰りの道中、こんなにも空気が重いのか。
お互い、無言である。
「……サーティーンのおかげで、向こうに帰る手段が分かって良かったよ。」
無言でいるのも気まずくて、まずは帰る手段が分かったこと、 それがサーティーンの力で帰れるということに、精一杯のお礼を述べる。
「……おぅ。」
……なんというそっけない返事だ。
いつものノンデリで明るいサーティーンじゃない。
彼を見上げてみれば、心ここに在らずというか、何か考え事をしているようだ。
「……何か、考え事?」
いつもと違いすぎて、そのまま思ったことを口に出してしまった。
「いや、なんでもねぇ……
それより、よかったじゃねぇか。無事あっちに帰れるぞ!」
すっといつもの表情に戻り、子供のように二カッと笑った。
……サーティーンはやっぱり喜んでるみたいだ。
……みたいだ、なんて。
まるで、喜んで欲しくないみたいな……。
帰れることを自分のことのように喜んでくれている彼に対して、そんなことを思ってしまう自分が、なんだか嫌になる。
『帰りたくないな』
『サーティーンと一緒にいたい』
『サーティーンは本当はどう思ってるの』
ぐるぐると頭の中に言葉が巡る。
私と同じ気持ちなのかな。
……もし違ったら…
… 立ち直れそうにない……。
でも、サーティーンとも、もうすぐお別れなんだよね……
私は隣で笑う彼の顔を見つめ、決心した。
「……ねぇ……サーティーン。」
泣いても笑っても、大好きなサーティーンに、せめて気持ちだけでも伝えたい……。
「どうしたァ、相棒。
急にしおらしくなっちゃって!
俺っちと離れ離れになるから寂しくなっちまったか? な~んて!」
サーティーンは口元に手を当てて、
ニヤニヤ笑っている。
「……そうだよ。寂しいよ。」
「……。」
駄目だ、目に幕が張って視界が霞む。
……瞬きしたらこぼれ落ちそうだ。
それでも、サーティーンをしっかりと見つめた。
……サーティーンの表情は、今まで見たことのないような、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「……俺だって……相棒と、ずっと一緒にいたいに決まってるだろ……!」
溜めたように、ゆっくりと呟いた。
「……本当に?」
びっくりして目を見開く。
「……こんな嘘つかねぇよ。
俺はずっと画面の向こうで相棒を見てた。
……相棒が辛くなっていくのを、 俺はただ画面の向こうで見ることしか出来なかった……。」
苦しそうで、悲しそうで、
サーティーンの方が今にも泣きそうで……
「そんな時、奇跡的に相棒がこっちに来た。
……こっちに来た相棒は、死んだ魚のような目をしてたけどな。」
サーティーンの顔は、いつになく真剣に私を見つめている。
……死んだような目。
確かに嫌なこと続きで、仕事も多くて、
そんな中コンパスの世界に来れて、
大好きなサーティーンに会えた。
デリカシーに欠けるし、お調子者で、
私にも失礼なサーティーン。
でも帰れない私を慰めて、手段も探して、
慣れない世界でずっと側にいてくれた。
本当はとても優しいサーティーン。
「私はこの世界に来て、サーティーンに会えてとても嬉しかった。」
真っ直ぐサーティーンの瞳を見つめる。
「……サーティーンが大好き。
離れたくない、ずっと一緒にいたい。
……あなたと一緒にこの世界にいたいの。」
「……っ!」
サーティーンは息を詰まらせて、
私を強く見つめた。
「俺は、相棒が好きだ。
離れたくない。
ずっと側にいてくれ……大事なんだ。」
ーー強く、サーティーンは私を抱きしめた。






