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抱きしめられたまま、どれくらい時間が経っただろう。
サーティーンの腕の中で、
彼の心臓の音が大きく響いている。
……いつもより、少し速い。
「……相棒」
サーティーンが、耳元で小さく呼んだ。
声が少し震えている気がした。
「帰る手段……明日には確実に使えるようになるって、零夜が言ってたな。」
その言葉が、現実を突きつける。
嬉しくて、怖くて、胸が締めつけられる。
私は彼の胸に顔を押しつけたまま、
小さく頷いた。
「……うん。」
でも、
今はまだ、この腕の中から離れたくない。
「……このまま抱きしめてるのもいいけどよ、 このままここに居たら夜になっちまう。」
名残惜しそうに抱きしめていた腕がほどかれ、 優しく頭を撫でられる。
「今日はもう家でゆっくり休もうぜ。」
そう言って私を見つめるサーティーンの目は、 とても優しい目をしていた。
翌朝。
昨日のこともあって、早くに目が覚めてしまった。
『帰る手段……明日には確実に使えるようになるって、零夜が言ってたな。』
昨日のサーティーンの言葉を思い出す。
……それはサーティーンとの別れを意味する。
『俺は、相棒が好きだ。
離れたくない。
ずっと側にいてくれ……大事なんだ。』
私の精一杯の言葉に、今まで見えなかった本音で返してくれたサーティーン。
……私は…彼と、共に、ここで――
その瞬間、アラームが鳴り響く。
……っ! バグ発生の合図だ。
「相棒!!」
ソファーで寝ていたサーティーンが飛び起きて、こちらに駆け寄ってくる。
「…バグ、発生だ。」
……サーティーンの顔を見ると、焦ったような、苦しいような表情だった。
「……相棒、昨日の言葉に …
… 変わりはないか?」
さっきとは違う、真剣な眼差しで聞いてきた。
昨日の言葉……
「……変わらないよ。
私は、あなたと一緒にこの世界にいたい。」
私も真っ直ぐサーティーンの瞳を見つめた。
「……ッハ! んじゃまぁ、大事な大事な相棒のお願い、叶えに行くかぁ!」
そう言って、私を抱えると勢いよく外に飛び出した。
外に着地した瞬間、バグがこちらに向かって攻撃してくる。
「相棒に触るんじゃねぇ!」
即座に銃で打ち抜く。
「….俺から離れるなよ、相棒。
離れたら俺ちゃん泣いちゃうぜ?」
ニッと笑うと頭を撫でる。
空を見上げると、 空から裂け目を作るようにバグが出ている。
これは、…空間移動タイプだ。
裂け目が目の前でゆっくり広がっていく。
「このバグ…
…空間を繋げるタイプなんだな。」
サーティーンが裂け目を睨みながら呟く。
「つまり、こことあっちの世界を一瞬だけ繋げちまう穴だ。
……俺の能力なら、この裂け目を塞ぐことも、固定することもできる。」
彼の赤い瞳が、私の方を向いた。
「……相棒を、こっちに留めておく。」
今まで見た中で、一番真剣で、一番優しい目だった。
「裂け目を完全に塞ぐんじゃなくて、
俺の力で固定する。
お前があっちに戻れないように…
…いや、戻らなくていいように。」
サーティーンは私の手を強く握った。
「……俺はもう、二度と画面の向こうからただ見ることしかできない日々には戻らねぇ。
だから……ここに残れ。俺の相棒として。」
そう言って私を力強く抱きしめた。
「……サーティーンの相棒はずっと私だけ。
大好き……ずっと一緒にいてね。」
私も彼の大きな背中に手をまわし、ぎゅっと抱きしめた。
「…っと、大事な相棒のために最後の大仕事してくるわ。… やれるよな、相棒?」
耳元でサーティーンが囁く。
「…もちろん!…… スキル発動!」
力強く私は叫ぶ。
「…いい子で待ってろよ!
すぐに終わっからよぉ!」
サーティーンは鎌を構え、空間の裂け目に飛んでいく。
「これで、終いだぁ!!」
そう言って大きく振り上げた鎌を裂け目に切りつけた。
空間が固定され、サーティーンが私の前に戻ってくる。
「もう、絶対離さねぇからな。
…あ〜っクソ………愛してるんだ。
ずっと側に、俺だけの、
…相棒でいてくれ… 」
そういうと私を優しく抱きしめた。
私も彼の大きな背中に手をまわし、ぎゅっと胸に顔を押し付ける。
「……私の目、
今はもう死んだ魚の目じゃない。
サーティーンと一緒にいたから、
生きた目になったんだ……。」
サーティーンは少し照れくさそうに笑って、
私の額に軽くキスを落とした。
「……明日も朝飯作ってやるからな。
文句言うなよ、相棒。」
あなたと共に永遠にここで…
**生きた魚の目をした相棒**fin
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