テラーノベル
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ここは動物だけの世界、アニマルワールド。君は十数年前の事件を知っているかい?事件なんてめったに起きない、この平和なアニマルワールドを地獄のような場所に変えた事件。それは一匹の子猫が起こした事件だった。
その子猫の名前はアルス。ショートヘア―の髪の毛とクルクルとしたアホ毛が特徴的なオスの白猫。髪の毛やアホ毛までそっくりな父親のケトの目の黒目は黒いハートの形をしていて、アルスも同じ目を持っていた。母親はツユというショートヘア―でメスの白猫。大きな目と高い背が特徴的だ。ツユと付き合った頃からケトはかなり変わった思いを持っていた。「愛するツユを傷つけるものは皆、僕が殺してあげよう」と。結婚してアルスが生まれて幼稚園児になるまで、ずっとケトはその思いを隠し続けた。「知られたらツユがおびえるかもしれない」とちゃんと思っていたからだ。しかし、アルスが生まれてから数年後、幼稚園児になったアルスはいじめられてしまった。
「クルクル毛とかダセー」
「アホ毛っていうらしいよ~」
「うっわ、アホになるから近づくなよ~」
「ハートの目とかメスかよ~」
その話を聞いたツユは
「アルス、大丈夫。この毛と目は、あなたの個性なのよ。ダサくない。素敵よ」
とアルスを慰めつつ、悲しんでいた。幼稚園児ならよくあることなのだろうが、容姿でダサいとかいじめられたりするのはアルスにとってもツユにとっても許せないことだった。悲しそうにうつむくツユを見てケトは驚きながら
「大丈夫?アルスがいじめられたことが悲しいの?」
と尋ねるとツユは顔をあげて
「そうなの。アルスの容姿をどうこう言われたのが許せなくて・・・」
と答えた。ケトは一瞬、怒りに満ちた目になったがすぐにいつも通りの優しい目つきになって
「ならぁ、その子たち殺さなきゃぁ」
と言った。その時はツユが止めた。もとからそういう言動があったことや未遂だったこともあるという証言もあったのでケトは警察に捕まった。ツユはアルスを女手一つで育てることになった。のだが・・・その数日後にスマホに連絡が入った。アルスを幼稚園に送って数時間後だった。幼稚園からの連絡ではなく、警察からの避難連絡。
「ただいま、園児の一匹が暴走し、刃物による殺人が起きています。ヴェーグル幼稚園の近くにいる方は早急に避難してください。
負傷者 園児5匹 五匹とも重症です。 死亡者 園児3匹
ヴェーグル幼稚園で立てこもっている模様。早急に避難してください」
ツユは意味が分からなかった。ヴェーグル幼稚園はアルスが通っている幼稚園。そこで殺人?園児が起こす?アルスは無事なのだろうか。なんて物騒な。その場で固まっていると職場のテレビで速報が流れた。
「速報です。ヴェーグル幼稚園内で起こった園児による殺人事件ですが、新しい情報が入ってきました。暴走し、殺人を起こしている園児の名前は・・・アルスです」
ツユは信じられなかった。息子のアルスが殺人?なんで?同じ名前のアルスっていう子が起こしたんじゃ・・・でも同じ名前の子はいない。じゃあ本当にアルスが・・・?
混乱しながら職場から出た。ヴェーグル幼稚園の近くのビルまで行き、状況を見た。本当にアルスが包丁を振り回し、脅している。返り血まみれで、にやにやと笑いながら。
すると向こうの方からものすごい早さで走っている車があった。危ないなと思っているとこのままいけば幼稚園に突っ込むことに気付いた。やばい、そう思った瞬間。ちょうどアルスが包丁を振り回しているところに曲がり切れなかった車が突っ込み、アルスは轢かれた。
病院にて。この事件のことがあり、アルスは少年院に行くことになった。急いでツユが病院に向かうと医者がいた。ツユは焦りながら尋ねる。
「あ、アルスは大丈夫なんですか?!」
医者は首を横に振り、
「残念ながら・・・。包丁を振り回してるときに車がぶつかってきたので包丁が自分に刺さってしまい、その刺さった場所がかなり深くて・・・この病院についてすぐに亡くなられました」
ツユは膝から崩れ落ちた。医者は少しうつむきながら
「息子さんは・・・ここに運ばれてくるときに小さな声でこれを伝えといてくれと言われまして。 僕の母さんへの愛がこの世を超えたとき、死を超え、蘇る。 僕があのいじめっ子たちを殺したのは僕がイライラしたからと母さんを悲しませたから。 だそうです」
ツユはその言葉がずっと心に残った。
これが例の事件。そのあとのツユの話はこれからだ。
僕はレア・ルべリアン!白猫のオスだよ!僕にはたくさんの兄弟がいるんだ。僕の妹で長女のユリ、長い髪をおろしてて、ぶち猫なんだよね!目の黒目はハート形しててかわいいんだ!次女のティアラは三女のテスラと双子で~左右で目が違うんだ!見分けるの、結構難しいんだよね。四女は幼稚園児のベガ!最近、勝手にピアスを耳に開けてお母さんに怒られてた。なんでピアス開けたのって聞いたら「この姿でも愛してくれるかどうか彼を試すため」だってさ。末っ子で妹のメメ!まだ赤ちゃんで、すっごく目が大きくてかわいいんだよ!お父さんはコメで、お母さんはツユ!お母さん、再婚らしいんだ。なんか、前のお父さんと子供で、もめ事があったんだって。
さて!家族紹介はこれで以上!実は僕には好きな猫がいてぇ・・・。
アエン・ペウィっていう三毛猫の子なんだけどね~めっちゃかわいいの!名前の響きも可愛いし~目も宝石みたいにキラキラしてるし。前、告白したんだけど考え中だってさ。
クラスメイトにね、すっごくウザい子がいるの。メリー・イフォナって子なんだけどお嬢様らしくって、めっちゃ見下してくるの。あ、噂をすれば・・・。
「ごきげんよう。庶民の皆、私にあえてうれしいわよね。そりゃそうだわ。庶民の皆さまと身分の格が違いすぎる、お嬢様である私と同じクラスですもの!」
この子がメリー。こんな風に見下してくるんだ。オレンジ色の前髪と黄色い毛が特徴的なメス猫なんだ。
「ねぇ~そうやって馬鹿にするように言うのやめてくれない?」
今日もまたクラスの誰かがメリーに言う。メリーは小ばかにしたような笑顔で
「おっほっほ。まぁ~お嬢様の私にはそのような庶民の感情など全く分からないのですわ~」
と決まり文句を言う。
今日は一年間だけの使い魔的なものをもらう。3属性組の方が一年間のパートナーになるかもしれないという。3属性組とは、草担当、水担当、炎担当の3属性を操る動物3匹組のこと。事件があったとき、警察でも手に負えないことがあったりしたら駆けつけて助けてくれるのだ。
先生がたくさんの箱をもってきた。その箱の中から一つ選び、その中にいる使い魔やパートナーが一年間貸してもらえるのだ。
僕は真ん中の箱を選び、席に着いてすぐに開けた。
「んあぁ、起床か?」
眠そうな声と共に出てきたのがしっぽの先が黒い、小さな翼が生えた小さな蛇。
「おー、お前か。正直、俺が使い魔にされるのは嫌だが、お前ならなんだが刺激をくれそうだな。俺はレド。お前は?」
と言うと僕は笑顔で
「僕はレア・ルべリアン!よろしくね!」
と答えた。レドは少し戸惑った顔をしながら
「お、お前・・・レドという名を聞いたことがないのか・・・?」
と言った。僕は首をかしげて
「レド、レド・・・。あぁ、レド・ギルドっていう大きな蛇の王がいたね」
と思い出して言うとレドはどや顔で
「そう、そのレド・ギルドこそが俺なのさ。今は使い魔になれってことで本当の能力は強めの封印魔術で封印されてる」
と言った。
休み時間、みんな使い魔やパートナーの話ばかりだ。
「アエンちゃんはどんなのだったの?」
僕が尋ねるとアエンちゃんはにっこり笑って
「100悪の王のラオン・ベルティナだった!」
と答えた。100悪の王、ラオン・ベルティナとは100個もの重犯罪を犯した悪の王で、オスのライオンに悪魔の角と翼が生えた姿をしている。実物を見せてもらうと眼鏡と首輪をつけており、悪魔の角と翼はなかった。ラオンは苦笑いしながら
「いやぁ、なんか今までにない未来の殺気を感じて近づいたら見つかり、捕まっちゃって。僕の能力を封印するのには結構大変らしくて、強力封印魔術で作られた首輪と眼鏡かけなきゃいけなくて外せないんだよ」
と言った。メリーは・・・と聞く手間なんていらなかったようだ。パートナーをクラス中に自慢し、見せている。
「私は猫としての格も上ですの。だからパートナーも守護害悪意のフルゥ・オメルですのよ!」
守護害悪意とは、本来の力が封印されていれば守護神のようだが封印されていなければ害有り、悪意有りの最恐の存在のことだ。
フルゥはオスの狼で、本来の力があるときは悪魔の角と翼がある。
フルゥは左胸についているバッジをじっと見つめている。このバッジが本来の力を封印しているらしい。
クラスメイトで、メリーからギャラをもらうことで従っているメイドのルビー・クリスタルは3属性組の草担当、メスのリスで髪はショート、花を飾りにつけているフォリスがパートナーになったらしい。
ユリは3属性組の炎担当、オスの熊で左耳に黒い模様があり、前髪のあるフィア。テスラは3属性組の水担当、メスの亀で左に水のアクセサリーを付け、左足に黒い模様があるミスズ。
ティアラは「ギルティ・ダークナイト」と名乗る中二病感のある両手に包帯、腹に包帯、眼帯をしているショート髪の猫だった。
コナツ・ユツバルは垂れ耳の犬で、ボブに近い髪型をしている。コナツが箱を手に取って開けようとした瞬間、両耳としっぽの先に黒い模様がある白猫のメスでクラスメイトのライが大声で
「開けちゃだめ!」
と叫んだが、時すでに遅し。コナツは箱を開けていた。中から出てきたのは・・・なんと死んだはずのアルス。しっぽに包帯を巻き、体中にばんそうこうを貼っている。
先生たちは混乱し、パートナー箱内容を確認している。先生は焦りながら
「の、載ってない・・・みんな!逃げて!」
と叫んだ。フォリスとミスズ、フィアは前に出た。
「さぁ、僕たち私たちが相手をするから逃げて」
と言って構えた。アルスはにやにやしながら
「あー、まさか君たちがいるとはぁ・・・でも、もう幼稚園児の頃の僕じゃないから。魔術だろうが何だろうが関係ない。このナイフ一本でもう一度地獄をよみがえらせてやる」
と言った瞬間、襲い掛かってきた。それをフォリスが魔術で木を生やし、防ぐ。フィアは手から炎を生成し、アルスに向かって炎の玉を投げた。フィアがすまし顔で
「ナイフをも溶かす温度にした。その炎をまともに食らえば、やけどでは済まないだろうな」
と言った。アルスは一瞬焦った顔をしたがすぐににやにやした。そして一つの歌を歌いだした。
「いつか~もわからな~い~♪あの日~の地獄を~♪よみがえらせる愛の力~♪誰かのために歌おうよ~♪」
僕は脳内に響くもう一つの歌を聞いていた。アルスが歌っている曲とは違うし、だれもそんな歌を歌っていないのに。
「愛する~動物のためならば~♪その子を傷つける~動物なんて~♪殺し~てもいいのさ~♪だから~邪魔者は殺そうよ~♪」
僕の心に響いた。そうか、愛するアエンをいじめたり、傷つけるものは殺してもいいのか。気づけば僕は笑顔になっていた。
アルスの周りに盾ができて、その炎を無効化していた。アルスは笑顔でナイフを構えると
「さて、これでも3属性組の1匹も殺せなかったら逃げるよ。最後にこの歌を届けよう」
と言うとすごいスピードでミスズに襲い掛かった。
「愛しの弟、レアよ♪理解せよ、意味を♪共感できるだろう♪さぁ、天地の歌を歌おう~♪」
ミスズは水を生成し、盾のような形にした。過冷却させて固めようとした瞬間、アルスの速さでアルスの横に風が吹き、水を吹き飛ばしてしまった。
「何度やってもいいのさ♪これは罪じゃないよ♪心から愛して守れ~♪」
アルスはミスズをナイフで切り付けた。ミスズは急いで水を生成し、翼の形にする。空へ逃げるつもりらしい。
「空へ行っても、あの子はいない~♪あの子のため、そのために力使おう~♪」
アルスはクルクルと回り始めた。どんどん早くなっていく。
「踊れ、踊れ♪ショーのように♪あの子を笑顔に~♪」
ついには大きな竜巻になった。アルスはミスズに狙いを定めて竜巻を放つ。全力で飛んで逃げても、もう遅い。あの大きな竜巻からは逃げられず、ミスズの翼は小さな水となり、飛んで行った。そして強力な竜巻の風によって地面にたたきつけられた。が、寸前でフォリスが竜巻の風に抗いながら少しだけ草を生成したおかげで生きていた。
「真っ赤に染まる~♪君のルビーのようなそれは♪体に秘めて~♪ほかの邪魔者は関係なしに美しくない赤をまき散らせっ♪」
ミスズはなんとか立った。アルスはにやにやしながら最後の一撃をどうしようかと考えた。そのとき、フルゥはため息をついて
「はぁ、もう緊急事態だからいいよね?このバッジ、外すから」
そういって左胸につけてある封印のバッジを外し、本来の力を解放した。
さっきまでの姿の2倍ほどの大きさがあり、悪魔の角と大きな悪魔の翼が生えており、さっきの真ん丸キラキラした目とは違う、猫の目になっていた。爪をとがらせ、牙をむく。アルスをふわふわの大きなしっぽで地面にたたきつけた。もちろん、ふわふわだからノーダメージだ。アルスはナイフをがむしゃらに振ってしっぽを切り付けた。が、大半が毛なので効果なし。しっぽを少し上げて小さな隙間を作るとそこから一気に両手を勢いよく入れた。すると右手の爪のほうで何かに当たった感覚がした。アルスに刺さったのだ。そしてしっぽのほうと右手に生暖かい血の感触がした。アルスの強い思いによって貫通まではいかなかったが、かなり深く刺さっていた。なんとかフルゥの爪から逃れ、アルスは腕をいれた小さな隙間から逃げた。アルスは爪が刺さった腹部を押さえた。そこから血が流れている。
「やっぱ・・・フルゥは格がちげぇな。あの、車に轢かれて自分に包丁が刺さったときと全く同じ場所に爪が刺さった。痛みは段違いだがな。思い出させてやがって」
そういうと力を振り絞って高くジャンプしてフルゥの目まで来ると、黒目に向かってナイフを構え、刺した。アルスは腹部を押さえ、汗をかきながらにやにやして言った。
「これはお前を瀕死まで追いやったやつの方法と同じだ。ここが弱点だってな。お前を殺してやるよ」
瞬間、力が封印されているときの姿にフルゥは戻った。目から血が流れている。フルゥは刺された左目をギルティからもらった眼帯で覆った。そして座り込み、
「さすがは地獄に変えた悪の猫だ。俺の・・・弱点を知ってるだなんて」
と言った。ギルティが前に出て、笑顔で
「はっはっは、破壊の目を持つ我、ギルティが倒してやろう!」
と言った後に少し照れ笑いをして
「ごめん~、そんなノリじゃないよね。中二病のふりしてただけなんだよね。本当の名前はリフティ・ラティル。今回は真面目にやるよ」
そういうと眼帯に手をかけ、
「中二病姿じゃない僕のことは口外禁止。いいね?」
と言って眼帯を外し、包帯を外し、服も普通の動きやすい服に着替えた。するとそこには中二病のイタいオス猫ではなく、かっこいいオス猫がいた。
「それじゃ、遠慮なく」
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