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#溺愛
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その日、スラムの広場には、隙間もないほどの人だかりができていた。かつてシェリーを「聖女」と崇めていた民衆だ。だが、その瞳に宿るのは敬意ではなく、殺意。 中央の処刑台には、髪を振り乱し、汚れきった服で引き立てられたシェリーがいた。
「離しなさいよ! 私は聖女なのよ、神に選ばれた救世主なのよぉっ!」
「……全部公爵に命令されただけ! 私は騙されていた被害者なのよぉ!!」
見苦しく叫ぶ彼女に、民衆から「偽物め!」「人殺し!」と怒号が飛び、石が投げつけられる。
「よくも、わざと病を振りまいてくれたな!」
「あの子を返せ! 生贄にするなんて、悪魔の所業だ!!」
薪が積み上げられた中央に縛り付けられ、ついに火が放たれたそのとき、シェリーの顔が、人間とは思えぬほど醜悪に歪んだ。
「……あは、あはははは! こうなったら、あんたたち全員道連れよぉ!!」
叫びとともに、シェリーの額や首筋の皮膚が割れた。その隙間から溢れ出したのは、どす黒い瘴気と、獲物を求めて蠢くおぞましい手足。
「ひ、ひぃっ! 化け物だ!」
「助けてくれ!」
民衆が恐怖に顔を引きつらせ、逃げ惑おうとしたそのとき──。
「――あなたの思い通りにはさせないわ」
私はカイル殿下を伴い、広場の中央へと進み出た。天に向かって手を掲げると、眩いばかりの緑色の光が溢れ出し、広場全体を包み込む。
「ギィエエッ!!」
耳を突き破らんばかりの断末魔の悲鳴。瘴気の実体は光に灼かれ霧散した。
黒魔法の代償で、シェリーの肉体はすでに呪いに蝕まれていたのだろう。その身はあっという間に黒い灰へと変わり、崩れ落ちていった。
空からは、雪のように柔らかな光の粒子が、人々に寄り添うように降り注ぐ。
「……ソフィア様。本物の聖女様だ……!」
「ソフィア様万歳!!」
「私たちの聖女様!!」
歓声の中、カイル殿下が私の肩を抱き、誇らしげに微笑んだ。