みなさんこんばんはtakuです。
いいねありがとうございました。
前回の続きからです。
第7話へ行ってらっしゃい〜
夕日の色が滲んで、視界がぼやける。
ただ前だけを見て走った。靴音が廊下に響くたび、胸の奥が締めつけられる。
(ごめん、ごめん……どうして、
こうなるんだ)
角を曲がったところで、足が止まった。
息が荒い。心臓が喉から飛び出しそうだ。
壁にもたれて、目を閉じる。
涙がこぼれそうになるたび、
歯を食いしばった。
「……俺、どうしたいんだよ……」
二人が嫌いなわけじゃない。
むしろ、
好きだから。
大切だから。
だからこそ、優しさに触れると逃げたくなる。
触れたら壊れる気がする。
踏み込めば戻れない気がする。
怖いのは、二人の気持ちじゃなくて——
二人に揺れている“自分”だ。
そのとき、足音が近づいてくる気配がした。
(……追ってきた? どっち……?)
息を殺して耳を澄ませる。
足音は速くもなく、遅くもなく。
慎重に距離を詰めてくるようなテンポ。
「……出久」
小さく、息を飲んだ。
轟くんだ。
振り向けない。
さっきの言葉を思い出して、身体が強張る。
それでも、轟くんはすぐ後ろで足を止めた。
近すぎない距離。
遠すぎもしない、迷うような間合い。
「追いかけるつもりはなかった。……でも、放っておくこともできなかった」
低い声。
責めていない。
ただ、苦しそうに揺れている声だった。
胸が痛む。
「さっきの言葉……“怖い”って。俺たちが、か?」
デクは唇を噛み、答えられずにいた。
沈黙が落ちる。
でも轟くんは、それを切り裂くように続けた。
「もし俺か爆豪が、お前を追い詰めているなら……言ってほしい」
優しい言葉。
それがまた、刺さる。
「……違うよ……二人は悪くない」
ようやく、声をふり絞る。
「僕が……勝手に、期待したり、不安になったり……揺れて……だから」
震えた吐息が漏れる。
「二人に優しくされるたび、何かが崩れそうで……怖いんだ」
言葉にした瞬間、ああ、本当に逃げたかったのは自分からだ、と気付く。
轟くんはゆっくり息を吸った。
「出久」
呼ばれた名に顔を上げる。
「それは……お前が誰かを大切にしたいと思ってる証拠だ」
「……でも——」
「逃げてもいい。苦しいなら、距離を置いてもいい。だが——」
轟くんの目が、夕日の光を反射して真っ直ぐ射すように見えた。
「一人で背負わなくていい。俺たちを信じろとは言わない。……ただ、お前が苦しいなら、俺はその理由に関わりたい」
胸が揺れる。
そのとき——
別の足音が、廊下を乱暴に踏み鳴らしながら響いてきた。
「デク!!」
かっちゃんだ。
顔を上げた瞬間、全身が固まる。
轟くんがわずかに視線を横へ向ける。
かっちゃんが勢いよく駆け寄り、
デクの前で止まった。
息が荒く、目は怒っているのに——奥に別の色があった。
不安。
焦り。
そして、痛み。
「……言えよ」
絞り出すような声。
「“怖い”って……俺らが……お前に、何した」
デクは言葉に詰まる。
かっちゃんは歯を食いしばり、拳を震わせた。
「俺は……っ」
初めて見る表情だった。
泣きそうでも、怒ってるわけでもなく——
どうしていいか分からず迷っている顔。
「逃げられるの……嫌だ」
小さな声が漏れた。
胸の奥に、ぐっと何かが詰まった。
三人の間に、夕日が差し込み、影が重なる。
もう、均衡は崩れた。
でも——
崩れたからこそ見えるものがある。
「……僕、どうしたらいいんだ……」
絞り出した一言に、轟くんとかっちゃんが同時に顔を上げる。
その目に宿った感情は——
決して、デクを手放すつもりのない色だった。
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