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#あべさく
めかぶぷりん
8,223
29
雪月❄️
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突然襲ってきた渡辺の足を凍らせて動きを止めたが、それでも渡辺は結晶化させた花びらをこちらに飛ばしてきているので、それを更に宮舘の氷が防御している。
🤍「しょっぴー、めっちゃ飛ばすじゃん! こんなのキリないよ!」
❤️「せめて、なんで操られてるのか分かれば、対処できるんだけど……」
🤍「あ。そっか。しょっぴーを倒す必要ないんだ。舘さん、しょっぴーには悪いけど、冠司のことも氷漬けにしといて。動かれると面倒だから」
❤️「あいよ」
軽い返事で宮舘は室内に冷気を充満させ、冠司と啼き椿の両方を氷漬けにする。渡辺が自分で決着をつけたそうだったのでしなかったのだけれど、今はもう、そんなことを言っていられる状況ではない。
🤍「じゃあ、舘さんは時間稼ぎ、よろしくね。僕は分析に入るよ」
言って、ゴーグルをかけるラウール。
❤️「了解。好きなだけ時間、使っていいよ」
🤍「お、頼もしいねー。さっすが舘さん。僕もやる気出ちゃう!」
ペロっと舌を出し、ゴーグルの電源を入れると渡辺の方を見る。相変わらず、無数の花びらを飛ばしてくるけれど、それだけなら宮舘の敵ではない。
🤍「しょっぴー、操られると尚のこと単調になっちゃうんだね。自分で考えて動くの、苦手だからなぁ。でも、おかげでとっても見やすいよ」
渡辺から流れ出るマテリアは、撃ち出される花びらへ供給されている。けれど、それとは別の流れも見えている。渡辺の青いマテリアではなく、皮膚の上から見える血管のような青緑色のマテリア。
それが伸びているのは、冠司の方。よく見ると、冠司の腰から下げられている瓶に繋がっている。
🤍「見つけた。舘さん、冠司の腰の瓶! あれとしょっぴーの腕が繋がってる。多分、採血されたとこだよ!」
❤️「じゃあ、それを壊せば、翔太は元に戻る?」
🤍「可能性は高いね」
❤️「一回、氷を解除することになりそうなんだけど、ラウール、どうにかできそう?」
🤍「マグマの檻の時の、阿部ちゃんの手法を真似しようかなって思ってる。舘さん、目標の場所、正確に把握しておいて」
❤️「ああ、なるほどね。了解した」
すぐにラウールは後ろを向いたので、何かを作り出すのだろうと感じ取った宮舘は、ラウールを護る為に渡辺の攻撃を全て封殺し、言われた通りに冠司の腰についている瓶の場所を憶えることに集中する。
一方のラウールは頭の中で設計図を描き、両手を前に出す。設計図から組み立てるように、ラウールの手から溢れた白い光が大きくなり、ラウールの身長ほどになると白い光は消えた。代わりにそこにあるのは、モデルの撮影スタジオなどにある巨大なストロボだった。ライトは今は点いていない。
🤍「舘さん、いくよ」
❤️「いつでもどうぞ」
冠司を覆っていた氷が消えた瞬間、ラウールがストロボから伸びたスイッチを押すと、パッとライトが点いた。その光は通常の何倍も強く、あっという間に部屋の中が白く染まる。
これが合図だと、宮舘は今の今まで見つめていたそこに向かって氷の礫を飛ばし―――パリンッと瓶が割れる音が響いた。
「そんな、嘘でしょ!?」
冠司の悲鳴のような声が響き、ストロボの光が消えると、冠司の腰に下がっていた瓶は砕け散り、中に入っていた赤い液体が冠司の服を染めている。
そして、渡辺の攻撃が止まった。
💙「あ、俺……」
目が元に戻ったことで、宮舘は渡辺の足の氷を消し去り、もう一度、冠司のことを氷漬けにすると渡辺の方に駆け寄った。
❤️「翔太、大丈夫?」
💙「え? 何が?」
❤️「うん、大丈夫そうだ」
💙「は?」
🤍「しょっぴー、操られてたんだよ」
💙「……え?」
❤️「後でちゃんと伝えるから、とりあえずは目の前のこと」
ピシピシッと、啼き椿を覆っている氷にヒビが入り、砕けていく。
🤍「あちゃー。椿って冬の花だもんね。氷じゃダメだったかー」
異能力者である冠司のことを無力化しても、啼き椿の動きは止まらない。つまり、啼き椿には自我のようなものがあるということ。
その啼き椿から、無数の管が出現して蠢いている。
🤍「あれってさー、刺さったら血、抜かれるよね」
❤️「だろうね」
🤍「うわ、めっちゃやだ!」
💙「凍らせてダメなら、どうすりゃいい?」
🤍「うーん。あの椿、後ろ側から枝が伸びてるみたいなんだよ。でも、マテリアの流れを辿ったら命の霊薬に木の根っこも入ってた。だから、後ろの木から切り離そうか」
❤️「自分で生み出した命の霊薬を循環させてる?」
🤍「多分だけど。ま、できることをやってみようよ!」
啼き椿が首をもたげているのが見えた。そして、ピタリと止まった管は、次の瞬間には勢いよくこちらに向かって来る。
❤️「させない」
腕を振るって氷の壁を出現させ、突き刺さった管が動きを止める。
渡辺の周囲に出現した無数の花びらは結晶となり、そして、一つに集まっていく。いつもなら花びらが折り重なって花を形成するが、今回はそうではない。融合する度に大きくなっていき、やがて、渡辺の腕と同じくらいの長さになる。
🤍「しょっぴー、横からスパッといっちゃおう!」
宮舘の氷の壁を管が突破する。それでも冷気で管と啼き椿を覆うと、動きが鈍くなった。
💙「これで終わり、だ!」
投げるような動作をすると、巨大な結晶の花びらが、ドーム状の壁に沿うように飛んでいき、その勢いのまま、啼き椿を支えていた枝がスパッと切れた。
斬り落とされた啼き椿の花は、命の霊薬がある泉に落ち、辺りに水が飛び散った。
数秒、様子を見るけれど動きはない。
💙「やった……のか?」
🤍「ちょっと待ってね」
ゴーグルをかけ直したラウール。
🤍「うん、大丈夫そう。マテリアの流れが完全に止まってるから、啼き椿が動く事はないよ」
❤️「じゃあ、これで?」
🤍「戦闘は終了だね。あとは、命の霊薬を調べるだけだ」
その言葉を聞いて、渡辺がその場に座り込んだ。
❤️「お疲れ、翔太」
💙「いや、舘もラウールもサンキュ。俺一人じゃ無理だった」
❤️「途中、操られてたしね」
💙「あ、その話。ちゃんと聞かせろよ」
❤️「分かってるよ」
そう言うと、宮舘は耳のイヤーカフに触れる。
❤️「こちら宮舘。冠司側は制圧完了。翔太が操られたけど、無事だったよ。ラウールが今、命の霊薬を調べてる」
💚『舘様! 翔太、大丈夫だったんだね。こっちはふっかと照が戦ってる。大丈夫だったら、先にめめ達の方の救援に行ってほしい! 佐久間も操られてる。それに、操られてるの三人だけじゃない。調査は後回しにして、急いで!』
❤️「分かった」
グループ通話だったので渡辺とラウールも内容を聞いており、顔を見合わせて頷いた。そのタイミングで宮舘のスマホに地図とマークが表示される。
阿部からで、その場所に目黒たちがいることは明白で、三人はすぐに部屋から出て行った。
目黒は、動けずにいた。
足に、腕に、体に、何人もの人々がまとわりついて離れない。その人々の目は赤く輝いており、部屋中に垂れ下がっている瓶のどれもが輝いている。
唯一動かせる首を回して向井を見ても、同じように押さえつけられている。
🖤「ちょ、これ……」
重力を使ってまとわりついている人たちを浮かせると、別の者達が向井の体にしがみつく。それを繰り返したところでしがみつく人間が増えるだけだ。
それは目黒とて同じ。蔓で引きはがしても、すぐに別の人間がくっついてくる。それだけではない。全ての人を一気に剥がそうとすると、教団員の女性の異能によって向きを変えさせられ、それは目黒と向井を襲い、痛みだけが返ってきた。
異能は使えるのに、成す術がない。
佐久間は教祖の隣に立って、無機質な目でこちらを見ているだけ。
「フハハハハッ。どうだ、素晴らしかろう。これが血盟傀儡。忠実なる下僕たちだ」
🖤「……このために、命の霊薬を?」
「違うな。血の循環に必要なのだよ。そして、汚れた血をこうして再利用してやっているだけのこと。ありがたいと思わんかね?」
🖤「思わないね」
「……そうか。崇高なる理念が理解できないとは、なんと嘆かわしい。信心のない奴の血など価値もない。やれ」
更に大勢の人間が押し寄せてくる。
このままだと―――すぅっと、誰かが息を吸う音が聞こえた。
🤍「伏せてー!!!!!」
耳をつんざくような大音量が響き渡り、その大きさに思わず顔を歪める。目黒は自分の足にしがみついている人だけを蔓で引きはがしてしゃがみ、向井も同じように重力を使って足の自由を得ると、しゃがみこんだ。
直後、頭上からたくさんの瓶が割れる音が聞こえた。
すると、目黒と向井を抑えつけていた人達から力が抜け、舞い散る花びらの中で、その場で次々に人が倒れていく。
「な、なんだと!?」
🤍「舘さん、あの教祖、凍らせちゃお!」
入口のドアのところにいる、拡声器を持ったラウールがそう言うと、近くにいた宮舘から冷気が溢れ出す。分が悪いと思ったのか、教祖が慌てて逃げ出すように駆けだした。
あっと思ったものの、瞬時に出現した佐久間がかかと落としを繰り出したため、教祖は顔面から床に倒れ込み、そのまま動かなくなった。
🩷「よっ、と」
軽く床に降り立った佐久間。
🤍「佐久間くん」
🩷「おう、ラウールじゃん。他のみんなもいるし。あれ、別々の任務じゃなかったっけ?」
🖤「……佐久間くん、憶えてないの?」
🩷「ん? 何を?」
🤍「え、じゃあ、何で教祖のこと止めたの?」
🩷「なんとなく! 逃げたから、とりあえず倒せばいいかなーって……あれ、ダメだった?」
💙「うわ。そんな理由でかかと落としされるとか、無理無理」
🧡「さっくんは、頭より先に足やもんな」
🖤「まあ、おかげで助かったんだけど。それにしても、舘さんたち、よくこっち来れたね」
❤️「それは後で説明するよ」
そこまで言って、宮舘がイヤーカフに触れる。
❤️「阿部。教祖の方も終わったよ」
💚『良かった。照も止まったし、こっちも無事だよ。警察、呼んでおくね』
🤍「お願いね! 僕たちも、命の霊薬の調査が終わったら戻るよー」
💚『うん。みんな、お疲れ様』
通信が途切れると目黒が教祖を蔓で拘束し、渡辺と宮舘とラウールは先ほどの部屋へと戻った。
そして、ラウールが命の霊薬をもう一度、調べ始める。
🤍「あー。なるほどねー」
💙「ん? なんか分かった?」
🤍「うん。これ、やっぱりただの生理食塩水だ。啼き椿の異能と、別の異能が混ざってる」
❤️「じゃあ、やっぱりでたらめ?」
🤍「いや。この啼き椿の異能が、生理食塩水を命の霊薬に引き上げてたっぽい」
💙「……っていうと?」
🤍「つまり。血を浄化して命の霊薬にするって、あの啼き椿がやってたんだよ。ただし、万能薬ではないね。椿ってさ、油に保湿とか抗酸化作用とかがあるんだけど、それの延長線上の能力が付加されてたみたい」
💙「……で?」
🤍「肌が良くなったとか、ケガが治ったとか、若返ったとか、そういうのに作用しやすいってこと。だから、効果が全くなかったわけじゃないんだよ」
💙「じゃあ、あの目が見えるようになったってのは?」
🤍「んー、そこは僕もちょっと。阿部ちゃん、わかる?」
今まで通信をしていたので、聞いていたであろう阿部に話を振る。
💚『椿油が由来ってなると、こうじゃないかってのはあるよ。目って、乾くと視力が低下することがあるんだよ。ピントが合いにくくなるって感じかな。それを、椿油の成分で保湿して、見えるようになった』
❤️「じゃあ、諦めてたって、目が悪くなったこと?」
💚『恐らく』
💙「全然、命の霊薬じゃねえじゃねえか!」
🤍「だから、効果はあるから全くの偽物ってわけじゃないの。とにかく、調査は終わりかな。あとは警察が調べてくれるでしょ」
💚『そうだね。ここから先は任せていいと思うよ。ラウたちも戻って来て』
その後、到着した警察に教祖は連行され、信者たちは病院に搬送されていった。
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